物置小屋

１人向け・other

史上最大の約束を(少し複雑な話です)

…こんばんは。さっき電話したとき泣いてたから、どうしたのか気になってきちゃった。
もしよかったら、これからふたりで出掛けない？家に誰もいないなら、理不尽に叱られることもないでしょ？
君さえよければ一緒に行こう。


今夜はかなり冷えるね。これ飲んで。あとは…はい。その上着を着ていればきっと寒くないから。
こうやって久しぶりに会えてよかった。最近声を聞いてるだけだったから、どうしているのかずっと気になってはいたんだ。
だけど、遅かったね。…本当にごめん。
ふたりで話そう。…それで気が変わらなかったら、君がやりたいようにやっていいから。
分かるよ。思いつめたような声で泣いてて、もう疲れ果てていて…生きているのが嫌になったんだなってことくらいは。
家にいたときに何かあったのが原因だろうってこともね。
君は毎日頑張ってるよ。どんな酷い言葉を言われたのか知らないけど、君が毎日沢山考えて動いていることは知ってる。
だから…もし君が今夜消えたいと願うなら、俺も一緒にいくよ。
独りじゃ寂しいだろうし…君を護れなかった責任をとるという意味でも。
実際問題、君をあの家から必ず出すって言ってから随分時間がかかっちゃったし…。
電話で言いそびれたけど、やっと資金が用意できたんだ。
病弱でもいい。泣き虫でもいい。君が俺を嫌いになるそのときまで、ずっと一緒にいてほしいんだ。
しばらくは今俺が住んでるマンションに来てもらうことになるけど、時期を見て引っ越しも考えてる。
この世界は残酷だけど、俺は君に隣で笑っていてほしいんだ。
だから…君さえよければこの手をとって。
君の心が完全に壊れてしまう前に、一緒に暮らそう。
それでもやっぱり消えたい気持ちがなくならなくて、その気持ちが育ったそのときは…俺も一緒についていくよ。
どこまでだってついていくから、覚悟しててね。
…今から家を出る？分かった、それじゃあ荷物を取りに行こう。
ふたり一緒ならきっと大丈夫。
ただ、具合がいいときだけでいいから家事をお願いしてもいい？…ありがとう。ごめん、まさかいいって言ってもらえると思ってなかったから、今も緊張してるんだ。
俺は君のことを理不尽に責めたりしない。
ただ、俺以外に好きな人ができたらいつでも言ってね。君を縛りつけたいわけじゃないから。
嫌いになる日なんてこない、か…そんなふうに言ってくれるのはきっと後にも先にも君だけだよ。
バイクじゃなくてトラックで来ればよかった…え、そうなの？
持っていくものがそれだけならなんとか運べると思う。…しっかり掴まっててね。


まさか本当に荷物がそれだけだとは思わなかった。
この部屋を好きに使って。あと、足りないものがあったら言ってね。
…いいよ、おいで。君の涙が止まるまで、今夜はこうして抱きしめてるから。
…いつまでだって、世界中の誰より愛してる。
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彼女がこの世界を捨てるとき、自分も世界を捨てる…それだけの覚悟なんて、そう簡単に決まるものではないと思います。