物置小屋

１人向け・イベント系

また来年、この場所で。(記憶障害の恋人)

やっぱりこのくらい時間になると、全然人がいないね。
あれ、今降ってきたのって…まさかもう紅葉が見られる季節になるとは思わなかった…。
君はどう？最近はあんまり外に出てなかったし、気分転換になればいいなって思ったんだけど…。
喜んでもらえたならよかった。なんだか塞ぎこみがちだからちょっと心配だったんだ。
なにか不安なことでもあるの？…そんなこと、俺は気にしないよ。
言ったでしょ、君がどれだけ忘れてしまったとしても君と過ごした時間がなくなるわけじゃないって。
日記に沢山のことを書いているのを知ってるからかな、自分でもびっくりするくらい不安にならないんだ。
君の分まで俺が覚えていればいいわけだし…そうだ、今から写真を撮っておいてもいい？
紅葉を持ってる君が可愛いから、かな。
そんなに照れなくてもいいのに…まあ、そういうところも可愛いから好きなんだけどね。
あれ、もしかしてまた照れてる？本当に可愛いね。
そうだ、1枚好きな葉を選んで。それを持って帰って栞にしよう。
俺が君の分を選ぶから、君は俺の分を探してくれる？ありがとう。楽しみにしてるね。

どう？暗かったけど、見つけられた？
すごい、顔みたいな形になってる…こういう面白いのもあるんだね。
俺が選んだのは、これ。ちょっとだけハートみたいな形になってるから、可愛いかなって思ったんだ。
きっと君に似合うだろうなって…どうしたの、急に俯いて？
また顔を赤くして…今すぐ抱きしめたくなっちゃうよ。
今夜はちょっと冷えるね。温かい飲み物を用意するから、少しだけ待ってて。

お待たせ。…ごめん、近くの自販機でこれしか買えなかった。
こういうの、苦手じゃない？それならいいけど…どうだった？楽しかった？
君の笑顔が見られてよかった。俺はそれだけで充分だから…。
写真を現像したらすぐ言うね。それから、次の約束をしておこう。
さっきも言ったでしょ？君が忘れてしまっても、俺がちゃんと覚えてる。
来年もこの季節になったら、またこんなふうに少しだけ外に出て紅葉を見にこよう。
それで新しい栞を作って、毎年交換して…そうしていれば、きっと心のどこかには残るよ。
それじゃあ、約束ね。冷えてきたし、そろそろ帰ろうか。


すっかり冷えちゃったし、先にお風呂入っておいで。
俺より君の方が風邪を引きやすいでしょ？大丈夫だよ、ちゃんとここで待ってるから。
ゆっくり入ってきてね。

…残酷なこと、するよね。
去年も同じ約束をしてたけど、やっぱり彼女は覚えてないみたいだった。
本当に神様は残酷だ。あんなにいい子なのに、どうして彼女が苦しむんだろう。
…どうか、今日のことが少しでも長く彼女の心に残りますように。
ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ
また明日さえ難しいことがある私は、こういったものに憧れたりします。