物置小屋

１人向け・看病系

『働き者』(クラシオンシリーズです)

ここにお客様が来ない日があるのはいいと思うけど…そんな日なんてなかなかないらしい。
こんばんは、いらっしゃいませ。こちらへどうぞ。

お客様、本日はとても冷えますのでこちらのダージリンをお召しあがりください。
…あの、大丈夫ですか？顔色があまりよくないように見えるのですが…。
部屋をお貸ししますので、そちらでお休みください。
俺はあなたが嫌がることは何もしませんから、無理をしないで横になった方がいいと思います。
そのままゆっくりお休みくださいませ。

…目が覚めましたか？あなたは薬を常用していらっしゃるんですね。
そんなに謝らなくても大丈夫ですよ。
生きていれば、誰しも具合が悪くなることもあるんです。
あの…ゆっくりで構いませんので、何か事情がおありでしたら俺でよければ話してみていただけませんか？
あまり眠れていないようでしたので、カモミールティーもお持ちしました。
もしよろしければお召し上がりください。
俺はただ、俺にできることをしているだけです。
特別なことは何もしていないのですが…そうですか、症状が出ると周囲から迷惑そうな目で見られてしまうのは辛いですね。
だからあなたは、誰にも頼らず傷ついた心を隠し続けてきた…というところでしょうか。
単純な推理です。あなたが握りしめているものは恐らく大切なもので、それがあると安心できるのではないかと考えたんです。
病弱な体になりたくてなる人なんていません。
あなたは自分に自信がないようですが、今日を必死で頑張ったのはすごいことだと思います。
本当は休みたいはずなのに、自分がやらなければと動いているように思います。
俺はあなたのことを詳しく知っているわけではありませんが、どこかの国では靴がすり減っているのは働いている証拠だといいます。
…俺もそう思うんです。
あなたは綺麗好きで、掃除の仕事をしていらっしゃるのではありませんか？
床磨きのワックスに、鞄から見え隠れしている大量の掃除道具…あなたが頑張っている証です。
誰もあなたの頑張りを知らなくても、この数時間でそれだけは分かりました。
泣くのを我慢しなくてもいいんです。
この場所でだけは自分に素直になってください。
ここには俺しかいませんから。


…おはようございます。昨夜は少しでも眠れましたか？それなら良かったです。
もし辛い夜があればいつでもいらしてください。ありがとうございました。
…よかった、夜より元気そうだ。体調を崩したときに責めるような視線を向けられるのは辛いことは理解できる。
…俺も少しは、あなたに近づけたでしょうか。
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久しぶりにクラシオンシリーズで綴ってみました。