物置小屋

１人向け・イベント系

月夜に想う(お月見・視える人)

あの、こんばんは。今夜は月がとても綺麗ですね。
あなたもここで月を見ているんですか？
俺もそんなところです。...ここから見る月が、1番印象に残っていますから。
あなたも、誰か大切な人を思い出すんですか？
待ち合わせ？それなら俺がここにいると邪魔かな...。
え、いいんですか？ありがとうございます。
あの、もしよければこれ食べてください。
ただの白玉団子なんですけど、お月見っぽくていいかなって思ったんです。
今夜も独りだと思っていたから、こうして誰かと話ができるのはすごく嬉しいです。
俺の話、ですか？そんなに面白いものはないと思うんですけど...。
この時期になると思い出す人がいて、その人と月を眺めていたのがここなんです。
ほら、あんまり面白い話じゃなかったでしょ？
すみません。俺、あんまり楽しいことを話せなくて...。
白玉、食べられましたか？よかった...。
ところで、あなたは誰と待ち合わせているんですか？
答えられませんよね、あなたは俗に言うストーカーだったんだから。
証拠はありません。でも、証人はいます。
あなたはここで人を殺しました。
ここで本当に待ち合わせをしていた人を、です。
相手が現れないのは、そもそも約束していたのは今日じゃないからというのと...本当に待ち合わせをしているのがあなたではないからです。
その血が滴るナイフで誰にどんなことをしたか、覚えていないんですか？
...無理ですよ。あなたの攻撃は俺には当たらない。
あなたの腕時計は10時過ぎで止まったままです。
それはあなたが反撃されて倒れた時間で...今は病院で意識不明の重体です。
あなたはまだ生きています。大切に思ってくれる相手のことを少しでも考えるなら、ちゃんと思い出してください。
そして、できれば罪を償ってください。
あなたの愛は一方的で、それは決して恋ではありません。
最後に忠告しておきます。...もう彼らには近づかない方がいい。

...すみません、ちゃんとあなたの要望どおりにできたか分かりません。
ただ、これでもうあなたの恋人には手出しできないはずです。
命懸けで護りたいと思うほど、相手の方を本気で愛しているんですね。
俺はあなたを尊敬します。
息も絶え絶えで、あれだけ刺されていれば苦しかったはずなのに...それでもあなたは、最後の力を振り絞って彼に被害が及ばないようにした。
俺でよければ月見くらいなら一緒にできるので...。
多分、あなたも団子は食べられます。みたらし団子、作っておいたんです。
昔から力が強いのか、俺が作ったものなら死者でも飲食可能みたいで...。
怖くなんかありません。生きてる人間の方がよっぽど残酷で、恐ろしいことこのうえありませんから。
僅かな時間になってしまうかもしれませんが、一緒に月見を楽しみましょう。
ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ
一方的な愛で人を壊した側は想いの力に負け生き霊になり、彼女は愛する彼に手が及ばないよう最期の力で護り死者になりました。
...上手く綴れたでしょうか？