物置小屋

１人向け・看病系

闇夜の覚悟(裏稼業side-Aです)

ただいま。...やっぱり起きてた。
取り敢えず諸々貼りかえるから、腕出して。
どうしたの、そんなにじっと見つめて？...よく分かったね。
ちょっと転んで怪我をしたんだ。
別に大したものじゃないし、まずは君の手当てから...ちょっと、いきなり服を捲らないで。
...ごめん。まさか涙目で見られるとは思ってなかった。
分かった、それじゃあ先にお願いします。
人に手当てされるのが嫌な訳じゃないけど、あんまりなれてないんだ。
君と似たような環境にいたからって言えば、分かりやすい？
治療とか通院とか、そういうことをしたことがなかった。
ましてや、病院に行ったことさえなかったんだ。
傷って結構疼いたりするよね。...君みたいに、傷痕が残りそうになる場合も多い。
俺にもそういうものがあるから、あんまり人に知られたくない気持ちは分かる。
...ありがとう。話しているときが紛れて、消毒液の痛み程度なら感じなくなるんだ。
君はいつも黙って堪えてるから、本当にすごいなって思う。
俺ならきっと、悲鳴をあげずにはいられない。
傷、だいぶ治ってきてるみたいだね。
今夜もご飯を作ってくれたの？毎回ありがたいけど、負担に思っているならいつだってやめていいんだよ。
君はもう、君自身の意思で生きていけるんだから。
俺は...考えたこと、なかった。
ただ、今こうして君と生活をしているのは俺の意思。
そういう意味では、好き勝手に生きられるようになったのかもしれない。
それに、俺にはずっとその子がいたから。
古いけど、今でも大切な友だちなんだ。...君はぬいぐるみを友だちだって話しても笑わないんだね。
相変わらず優しい...いや、なんでもない。
もしかして食べずに待っててくれたの？遅くなるから先にって言ったのに...ありがとう。
それじゃあ、いただきます。

片づけは俺がしておくから、君はもう休んだ方がいい。
それに、いつも作ってもらっているんだからこれくらい流行らせてほしい。
...おやすみ。もし眠れなかったら声をかけて。

部屋に入ったものの、今夜も眠れそうにないな。
...よかった。なんとかばれなかった。
まさか逆上した依頼人の知り合いに刺されました、なんて言えないし...それに、まだ俺の仕事の話はしていないんだから、このままの生活を護りたい。
こんな仕事をしているなんて、話せるわけがない。
...他のメンバーに今夜の報告だけはしておこう。
あの子を悪いものから護りきってみせる。...たとえ、どんなことになったとしても。
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実は転んだものではない怪我に、未だに秘密にしなければならない裏稼業について...。
それが彼の優しさなのではと、勝手にそう思っています。