物置小屋

１人向け・イベント系

ファイヤーフラワー(花火×視える人)

...あの、こんばんは。
そんなに驚かなくてもいいのに...。
どうして、か...話しかけるのに理由が必要なんですか？
なんて、失礼しました。
声をかけた理由は...強いて言うなら、いつもならこの時間帯は人がいないはずなのに、今夜は珍しく誰かいるなって思ったから...かな。
たったそれだけです。
俺はただ潮風にあたりたくてここに来ているんです。
ほとんど毎晩そうしているので、余計に気になってしまって...。何かお困り事ですか？
俺で手伝えることなら手を貸します。
よく知らない相手...そうかもしれません。
でも俺は、ただ力になりたいんです。
誰かが困っていたら助けたいと思うのは、おかしいことですか？
...成程。話は分かりました。
あなたが見たいもの、多分明日には用意できると思います。
だから、また明日同じくらいの時間帯にここに来ますね。
それじゃあ、おやすみなさい。


こ、こんばんは...。すみません、意外とこの時間帯って混んでいるなんて全然知らなくて...ギリギリ間に合いましたか？それならよかった。
それじゃあ、あなたが見たいと話していたものをここでやろうと思います。
あまり大きなものは無理だし、打ち上げたりはできないけど...丁度俺もやりたかったので。
...本当に綺麗ですよね。これじゃなかったですか？
それじゃあ、他の種類も試してみましょうか。

全部違ったんですね...。これが最後なんですけど、もしこれも違ったらまた別のものを探してきますね。
...どうかしましたか？もしかして、これで合って...見つかってよかった。
まさか線香花火だったなんて、完全に予想外でした。
でも、俺もこの花火が1番好きです。
どんなものよりも儚い分綺麗さが増してるというか...よかった、やっと笑ってくれた。
あなたの心残りは、これで全部ですか？
...もう死んでしまっていることくらい、見抜いていました。
それでも俺は、あなたと一緒に何かしてみたかったんです。
そうすれば、あなたが少しでも幸せになれるんじゃないかって...すみません、俺の自己満足だと思います。
あなたは花火を触れなかった。
それに、腕の怪我が酷い。あとは...最近この海であった事件の記事を読みました。
病気の発作で倒れて孤独死した女性がいたって...手には花火を持っていたって。
だから、あなたなんじゃないかなって...すみません。
どうしてお礼なんて言うんですか？俺は当たり前のことしかやってないのに...。
でも、あなたの力になれたなら嬉しいです。
もういっちゃうんですね。...少し寂しいです。
それじゃあ、もしまた機会があれば花火をやりましょう。
...あなたみたいに心が綺麗な人となら、もう1度話したい。

よかった、ちゃんと旅立てたみたいだ。
...どうして生きている人間より、ずっと透きとおった綺麗な心を持っているんだろう。
もしも生きているときならそうだったなら、どうしてこんなふうになってしまったんだろう...。
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花火がしたかった彼女の為に、彼はただ花火を用意しました。
もう少し温かい物語も綴りたいです。