物置小屋

１人向け・慰め系

黄昏時、秘密の逢瀬(秘密のお見舞い)

こんばんは。病室、すごく片づいてるね。何かあった？
というよりも、君の病室はいつも綺麗だね。君の心みたいだね。
どうして泣いてるの？寂しい、か...そうだよね。
今まで全然気づいてなかったけど、僕以外にお見舞いに来た人を見たことがない。
これって偶然？それとも...ごめん、酷な質問だった。
え？...そっか、ご家族は妹さんの方を見ているんだね。
やっぱり寂しい？そうだよね、僕だけじゃ何もできてない訳だし...。
そうだ、花を飾ってもいいかな？失礼します...。笑ってくれてよかった。
君は本当に色々なことを頑張ってきたね。
その傷痕、実は今も痛むでしょ？...こうすれば、少しだけ和らげることができるよ。
心の傷までは治せないけど、君の為にできることならどんなことだってやりたい。
本当は君が会いたい人を連れてきたり、病気を治せればよかったんだけど...本当にごめん。
また君は僕のことを心配してくれるの？
...今この辺りがすごく温かくなった。僕にとって、君の言葉は魔法みたいだ。
ここで過ごした時間に後悔はない？それなら、まだよかったのかもしれない。
あの、その...実はもう時間がないんだ。
だから、君のことを迎えにきた。
僕に向かって差別用語を投げ掛けなかったのは君だけだったよ。
こうして毎日話せるのがすごく楽しかった。
あとはなんだっけ、君が見たいって話してた...そう、紅葉。
ごめん、本物は持ってないからお饅頭を手に入れてきたんだ。
だから、最後に一緒に食べよう。
君が見せてくれた桜も向日葵も綺麗だった。
すごく楽しみだったけど、残念ながらそこまで持たせられなかったんだ。...ごめん。
死ぬの、怖くないの？そうだったね、君が死んでも側にいるって約束した。
それはちゃんと守るよ。...せめて僕が死神じゃなくて天使だったら、君の寿命をのばせたのかな。
本当にごめん。独りじゃないからいいなんて、君は本当に優しいね。
一先ずこれ、一緒に食べようか。
もう少しだけなら時間があるし、最後に食べるものがこれでいいのかは分からないけど...君が笑ってくれるならそれでいい。

美味しかったね。僕にはあんまり感情ってないんだけど、こんなふうに一緒に過ごせて本当によかった。
こういうのを幸せっていうのかな。
もうやりたいことはない？...分かった、それじゃあいこうか。
これからも君と一緒にいる、独りにしないって約束は君が嫌にならない限りずっと守るよ。
...君のこと、絶対に独りになんてしないから。
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毎日お見舞いに来てくれていたのが死神で、ずっと一緒にいてくれる...そんな優しい世界に憧れます。