物置小屋

黒蝶

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終焉の彼岸花(閲覧注意)

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今夜は新月か...。でも、その分星が輝いて見えるね。
どうしたの?もし喉が渇いたなら、一旦バイク止めるけど...。
それとも、もう疲れちゃった?
いいよ、それじゃあここで終わりにしよう。
最高の場所が見つかったら、この旅は終わり...そういうルールだったでしょ?
どうして謝るの?前にも言ったけど、俺は巻きこまれたわけじゃないから。
ここから見える景色は綺麗だし、君を独りにしてしまうくらいなら俺は喜んでどこまでも一緒に堕ちる。
俺には君しかいなかったから、君が決めた選択ならついていくよ。
俺と出会う前のことはよく知らないけど、俺が知っている君は頑張り屋さんで...優しくて、誰よりも人のことをよく見ているすごい人だった。
でも、この世界って理不尽だらけだもんね。
誰かのせいにするつもりはないけど、俺たちはたまたまこの世界に合わなかったんだ。
たまたま愛がない家庭で育って、たまたま病気を患ってて...それを理由に周囲から人間として扱われなかった。
でも、そんななかで君だけは俺をひとりの人として扱ってくれた。
そのことに、本当に感謝してる。
君がどれだけの苦痛に耐えてきたのかなんて想像することしかできないけど、今日まで本当にお疲れ様でした。
...最期の旅、少しは楽しめた?それならよかった。
俺もこうやってふたりでいられてよかったよ。
この崖から飛んだら確実だよね。
これからふたりきりの世界にいくわけだけど...怖くない?
そんなふうに言われると照れちゃうな。
だけど俺も、君とふたりならずっと幸せになれる気がする。
生まれ変わったらじゃなくて、このままふたりきりの世界にいけるんだよ。
...俺は君を傷つけない。君が優しくしてくれたように、君に優しさをかえしていきたいんだ。
他の誰にも見つけられない、永遠にふたりきりの世界...。この先にそういうものがあるって、俺は信じたい。
残念ながらこの世界に俺たちの居場所はなかったけど、今から別の場所で作っていける。
そう思うと、ちょっとだけわくわくしない?
ふたりだけの世界に行ったら、まずはご飯を食べよう。
それから一緒に話をして、読書をしたり星を見たり...。花を育てるのもいいかもしれないね。
...ごめん。実はあんまり調子がよくないんだ。
そろそろいくけど、用意はいい?
もう誰からも無視されないし縛られない、傷つけられることもない自由な世界へ旅に出よう。
辿り着いたら、また一緒に笑って過ごそうね。
それじゃあ、また後で。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
彼岸花の花言葉のひとつ、『全てへの諦め』をイメージして綴ってみました。
単純に彼岸花が好きなのでやってみましたが、やはり明るくするのは無理でした...。
本当は『情熱』というものもあるのですが、なかなか上手く入れられず...申し訳ありません。
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