物置小屋

黒蝶

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1人向け・看病系

俺の願いはそれだけです(シリーズものです)

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ただいま。...お嬢様、まだ起きていらしたのですか。
ごめん、やっぱり癖になるとなかなか抜けないみたい。
どうかしたの?また眠れない?
それじゃあ今夜は、桜の話でもしようか。
本の話じゃなくて...ただの思い出話。
ほら、紅茶が入りましたよ。それから、こちらのスイーツもどうぞ。
...ごめん、また敬語が抜けなかった。
ねえ、君は桜にどんな思い出がある?え、俺のが先?君のに比べたらちっぽけなものかもしれないよ?
そうだな...君が枝を折って持ってきてくれたことかな。
そうそう、あの頃はまだ奥様がご健在だったからふたりで怒られたね。
それでふたりで庭掃除して...懐かしい。
泣けてきちゃった?やっぱり奥さまのことを思い出すのは辛い?
...そうだよね。涙ふくから動かないで。
子ども扱いなんかしてないよ。これは恋人扱い。
照れてるところも可愛い。
それにしても...いきなり桜の思い出なんて言っても、なかなかいいものが浮かばないものだね。
やっぱり不思議がられちゃうよね。
ただ、俺の祖父が死んだのもこんな桜吹雪が見える日だったなって思ったんだ。
懐かしいなって思ったら、ちょっと話したくなっちゃった。
今は花見に行くのは無理だけど、このくらいならできるよ。
...小さい頃、よく作ってたんだ。
あの頃はぐちゃぐちゃになって上手くできなかったけど、今は君を笑顔にするくらいの出来になっててよかった。
作り方を間違えたかと思ったんだけど、今日の相談者さんには子どもがいたから作ってみたら思い出した。
...相談内容は守秘義務があるから話せません。
ただ、俺たちと似たような感じかもしれない。複雑な家庭環境に、色々こじれてしまった事情...。
桜をただ見るだけの余裕もないみたいだった。
俺は君のことを逃がせてよかったって思ってるけど、君は楽しい?
最近よくうなされているみたいだから、もしかして負担がかかっているんじゃないかってちょっと不安だったんだ。
...そっか。ごめん。俺じゃあ君をお嬢様にはきっとできない。
でも、あの家の辛いことを考える時間が少しでも減らせるように色々考えてみることはできる。
それに、高価なものなんかなくても俺にとってのお姫様は君だけだから。
...いつもありがとう。本当に助かってるよ。
こうして一緒にいられるだけで幸せなんだ。
だから、これから先も君が笑っていられる世界を護ってみせる。
俺が側にいる世界...君は本当に優しいね。
それじゃあ、これからもずっと隣にいさせて。
俺にとっての幸せは、君の側にいることだから。
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久しぶりに元・執事シリーズを綴ってみました。
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