物置小屋

黒蝶

文字の大きさ
上 下
1,297 / 1,817
1人向け・イベント系

大切なことだから(ホワイトデー)

しおりを挟む
ただいま。
もう着替え終わってたんだね。
海に行きたいって言ってたでしょ?だから、ちゃんと色々用意しておいたよ。
今日は少し暖かいし、その格好なら寒くないと思う。
それじゃあ行こうか。


こんなふうにゆっくり出掛けるのは久しぶりだね。
最近は俺が仕事で帰れなくて、全然一緒にいられなくてごめん。
昨日も遅くまで起きて待っててくれたんでしょ?
テーブルの上に用意してくれてた夕食を見てすぐに分かったよ。
それに...先に寝ててって連絡しても、君は大抵起きていてくれるから。
でも、無理して起きなくていいからね。
それで体を壊してしまったら意味がないし...心配なんだ。
俺のことを気にかけてくれるのは嬉しいけど、自分のことを大切にしてほしい。
クイズ?突然だね。今日が何の日か...ごめん、全然分からない。
どうしたの、この箱?そっか、ホワイトデー...!
本当にすっかり忘れてた。ありがとう、すごく嬉しい。
開けてみてもいい?...このチョコレート、全部手作りなの?
1日1粒ずつ大事に食べるね。それから...ハンカチまで用意してくれたんだ。
すごく嬉しいな。
え、花火?夏の終わりに残ってた線香花火か...まだ使えるのかな?
本当だ、大丈夫そうだね。その為に海にきたかったの?
理由がないといけない訳じゃないけど、なんだか思い詰めたような顔をしていたから...。
聞きたいこと?ああ、その写真は去年のホワイトデーの写真だね。
去年はここで、誰も来ないからってふたりでピクニックをしたんだ。
君が用意してくれたお弁当がすごく美味しくて、時間も忘れてはしゃぎまわった。
去年も君は律儀にお返しをくれたよ。
...もしかして、今身につけてるブレスレットも覚えがないんじゃない?
それは、俺がバレンタインに渡したものなんだ。
君が迷子にならないように、お守り代わりにって渡して...あ、消えちゃったね。
これ以上遅くなるとまずいし、そろそろ帰ろうか。
どうかしたの?...そんなに不安そうな顔をしないで。
忘れてたってことは、それだけ君が大切に想ってくれていた証だから...俺はちょっと嬉しいよ。
それに、何度君が忘れてしまっても俺が全部覚えてる。
だから君は、安心して忘れていいんだよ。
俺が君の大切な想い出を護るから、君が覚えている辛いことや何気ない出来事は俺に教えて。
君をちゃんと隣で支える為に、全部知っておきたいから。


...疲れて寝ちゃったみたいだな。
なんだか毎年似たようなやりとりをしているような気がする。
今夜のこともきっと明日には忘れてしまうんだろうけど...日記帳にちゃんと残してくれるといいな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今回は切なめ系にしました。
実際、買った覚えがない物がバレンタインにもらったものだった...ということがありました。
昔から、楽しいことは本当に消えてしまうのが早いみたいです。
それでも、今よりはましだったのかもしれません。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【フリー台本】一人向け(ヤンデレもあるよ)

しゃどやま
恋愛
一人で読み上げることを想定した台本集です。五分以下のものが大半になっております。シチュエーションボイス/シチュボとして、声劇や朗読にお使いください。 別名義しゃってんで投稿していた声劇アプリ(ボイコネ!)が終了したので、お気に入りの台本や未発表台本を投稿させていただきます。どこかに「作・しゃどやま」と記載の上、個人・商用、収益化、ご自由にお使いください。朗読、声劇、動画などにご利用して頂いた場合は感想などからURLを教えていただければ嬉しいのでこっそり見に行きます。※転載(本文をコピーして貼ること)はご遠慮ください。

恥ずかしすぎる教室おねしょ

カルラ アンジェリ
大衆娯楽
女子中学生の松本彩花(まつもと あやか)は授業中に居眠りしておねしょしてしまう そのことに混乱した彼女とフォローする友人のストーリー

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

私の執事の言うことにゃ

菅井群青
恋愛
「車を出してちょうだい」 「……」 愛のない政略結婚相手の婚約者の情事現場に遭遇したお嬢様と、それを見守る幼馴染の青年執事の話 短いです カクヨムにも投稿

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若
大衆娯楽
人気の地域紹介ブログ「コニーのおすすめ」にて紹介された浜薔薇の耳掃除、それをきっかけに新しい常連客は確かに増えた。 しかしこの先どうしようかと思う蘆根(ろこん)と、なるようにしかならねえよという職人気質のタモツ、その二人を中心にした耳かき、ひげ剃り、マッサージの話。

子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。

さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。 忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。 「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」 気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、 「信じられない!離縁よ!離縁!」 深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。 結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

処理中です...