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1人向け・other
恩返し返し(童話モチーフです)
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あれ、こんな遅い時間に誰だろう?...すぐ開けます。
こんばんは。どうかされましたか?随分酷い怪我をしているようですが、どこかから逃げてきたのですか?
...分かりました、匿いましょう。ただし、あなたのお世話をさせてください。
このまま放っておくことなんてできません。
話し方?...敬語じゃない方がいいってこと?
敬語の方が不安にならないかなって思ったんだけど...分かった、それなら極力敬語は避ける。
距離を感じるっていう君の意見もなんとなく理解できるから。
こっちに来てくれる?...ああ、やっぱり酷い怪我だね。
特に腕や足がボロボロになってる。
誰かに攻撃されたの?...なんて、踏みこみすぎだよね。
答えたくなければいいんだ。俺だって聞かれたくないことはあるし、誰だって秘密はあるものでしょ?
...さっきから思っていたけど、君はとても綺麗な声で話すんだね。
それにこの腕だって、きっと必死に何かをこなしてきた証だ。
だからといって傷を放置しておいていいとは思わないけど...ごめん、滲みた?
もうすぐ終わるから、もうちょっとだけ我慢しててね。...よし、できた。
そうだ、アレルギーや食べられないものはない?
分かった、ならまずはお風呂に入って体を綺麗にすること。
使い方分かる?...大丈夫、俺はここにいるから終わったら声をかけて。
もっとゆっくり入っても構わなかったのに...こうして見ると、髪も綺麗だね。
乾かしてあげるからそこに座って。
本当につやつやだね。どんなお手入れをしたらこんなふうになるのか知りたいくらい。...はい、終わり。
さっきアレルギーも好き嫌いもないって言ってたから、ぶりの照り焼きを作っておいたんだ。
もう準備はできているから、遠慮しないで一緒に食べよう。
いただきます。うーん、ちょっと味が薄かったかもしれな...ごめん、泣くほど不味かった?
なんでもない、か...分かった、なら深くは聞かない。
その代わり、君が好きなことを教えて。
嫌なことは質問しないから、君が好きなものが知りたいんだ。
食べ物とか色とか、どんな些細なことでもいいから。...ね?
駄目だよ、そんな腕で無理をして洗い物なんかしたら。
君はお客さんなんだし、いいから休んでて?
部屋なら左側を貸すから、好きに使っていいよ。
お願いって何?...人からそんなお願いをされたのは初めてだけど、いいよ。
女の子なんだから、着替えたりするのに時間がかかるものだよね...いいって言われるまで部屋に入らないから、ゆっくり休んで。
...結構時間が経つのに、なかなか来ないな。
さっきの怪我はどう見ても暴力を振るわれた痕跡があったし、なんだか不安だ。
もしかして中で倒れているんじゃ...!ごめん、ちょっとだけ開けるよ。
...そんなに怯えないで。なんとなくそうなんじゃないかとは思っていたんだ。
そんなことあるはずがないって思いつつ、君はこの前暴力をふるわれていた人なんじゃないかって...。
包帯、もう1回巻き直すね。
恩返し?君は普通の人間より優しい心を持っているんだね。
でも、君の体が傷ついてしまうようなお礼なんて要らない。
あれは俺がやりたくてやっただけなんだから。
君を逃がした日、俺はなんだかついてない1日で...なんでもいいからやってよかったと思えることをしたかったんだ。
だから、君を逃がしたのは俺の都合。
もしかして、その傷はあの人たちから逃げてきたから?
それなら、これはあくまで俺からの提案なんだけど...ここで一緒に暮らすのはどうかな?
え、いきなり結婚!?それはとばしすぎだよ。
まずはじっくりとお付き合いしてから...。
俺はあの日、君に一目惚れしたんだ。
でも、名前も知らないし次にあの場所に行ったときには誰もいなくなっていたし...叶わない初恋だって思ってた。
だけど、もし俺でよければ、その...恋人からはじめませんか?
本当は友だちからって言うのが普通なんだろうけど、俺はあの日から忘れたことなんかなかった。
だからもし、君が本心から結婚してなんて言ったなら...俺と付き合ってください。
それは、いいってこと?...それじゃあ改めて、よろしくお願いします。
指が傷ついていたのは、そうして手を酷使していたからなんだね。
もうそんなふうに君が傷つかなくて済むように、俺がこの場所で君のことを護るよ。
だからそんなに不安がらないで。...あ、また血が滲んでる。
ひとまずリビングにおいで。
...ねえ、ひとつだけ教えて。どうしてここに俺が住んでるって分かったの?
それ、この前無くしたと思ってた薬箱...!
そっか、あの場所に置いてきていたんだ...気づかなかった。
この中に入っている紙に書かれた住所を頼りに探してくれたんだね。
届けてくれてありがとう。恩返しだと言うならこれだけで充分だよ。
他の人たちにとってがらくたでも、俺にとってこの箱は大切なものなんだ。
え、これを返すだけで終わるはずだったの?もしかして俺、聞き間違えた?
そうか...それはきっと言い間違えたわけじゃなくて、きっと君の本音が零れたんだね。
謝らないで。俺、いつも独りだから君が側にいてくれると嬉しいんだ。
ごめん、痛かった?もう少し滲みない薬を持っていればよかったんだけど、まだ作りかけなんだ。
ただ、傷の治りは早いからきっとよくなるよ。
もう遅いけど、眠くない?もし不眠症なら薬を処方することもできるけど...分かった、それなら今は何もしない。
もし必要になったらすぐ言ってね。
君と会えたら必ず何か話そうって思っていたから、本当はもし君があのときの人だったらって考えていたんだ。
飲み物は甘い方がいい?...温かいものを淹れるから、眠くなるまで話をしよう。
...これからもどうかよろしくね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『鶴の恩返し』の現代版、といったところでしょうか。
恩返しをするはずが零れ出た本音を返される...という謎展開になりました。
流石に鶴に変身してしまうのはまずいかと思い、急遽後半部分を変更しました。
並大抵の覚悟ではここまでできないと思います。
こんばんは。どうかされましたか?随分酷い怪我をしているようですが、どこかから逃げてきたのですか?
...分かりました、匿いましょう。ただし、あなたのお世話をさせてください。
このまま放っておくことなんてできません。
話し方?...敬語じゃない方がいいってこと?
敬語の方が不安にならないかなって思ったんだけど...分かった、それなら極力敬語は避ける。
距離を感じるっていう君の意見もなんとなく理解できるから。
こっちに来てくれる?...ああ、やっぱり酷い怪我だね。
特に腕や足がボロボロになってる。
誰かに攻撃されたの?...なんて、踏みこみすぎだよね。
答えたくなければいいんだ。俺だって聞かれたくないことはあるし、誰だって秘密はあるものでしょ?
...さっきから思っていたけど、君はとても綺麗な声で話すんだね。
それにこの腕だって、きっと必死に何かをこなしてきた証だ。
だからといって傷を放置しておいていいとは思わないけど...ごめん、滲みた?
もうすぐ終わるから、もうちょっとだけ我慢しててね。...よし、できた。
そうだ、アレルギーや食べられないものはない?
分かった、ならまずはお風呂に入って体を綺麗にすること。
使い方分かる?...大丈夫、俺はここにいるから終わったら声をかけて。
もっとゆっくり入っても構わなかったのに...こうして見ると、髪も綺麗だね。
乾かしてあげるからそこに座って。
本当につやつやだね。どんなお手入れをしたらこんなふうになるのか知りたいくらい。...はい、終わり。
さっきアレルギーも好き嫌いもないって言ってたから、ぶりの照り焼きを作っておいたんだ。
もう準備はできているから、遠慮しないで一緒に食べよう。
いただきます。うーん、ちょっと味が薄かったかもしれな...ごめん、泣くほど不味かった?
なんでもない、か...分かった、なら深くは聞かない。
その代わり、君が好きなことを教えて。
嫌なことは質問しないから、君が好きなものが知りたいんだ。
食べ物とか色とか、どんな些細なことでもいいから。...ね?
駄目だよ、そんな腕で無理をして洗い物なんかしたら。
君はお客さんなんだし、いいから休んでて?
部屋なら左側を貸すから、好きに使っていいよ。
お願いって何?...人からそんなお願いをされたのは初めてだけど、いいよ。
女の子なんだから、着替えたりするのに時間がかかるものだよね...いいって言われるまで部屋に入らないから、ゆっくり休んで。
...結構時間が経つのに、なかなか来ないな。
さっきの怪我はどう見ても暴力を振るわれた痕跡があったし、なんだか不安だ。
もしかして中で倒れているんじゃ...!ごめん、ちょっとだけ開けるよ。
...そんなに怯えないで。なんとなくそうなんじゃないかとは思っていたんだ。
そんなことあるはずがないって思いつつ、君はこの前暴力をふるわれていた人なんじゃないかって...。
包帯、もう1回巻き直すね。
恩返し?君は普通の人間より優しい心を持っているんだね。
でも、君の体が傷ついてしまうようなお礼なんて要らない。
あれは俺がやりたくてやっただけなんだから。
君を逃がした日、俺はなんだかついてない1日で...なんでもいいからやってよかったと思えることをしたかったんだ。
だから、君を逃がしたのは俺の都合。
もしかして、その傷はあの人たちから逃げてきたから?
それなら、これはあくまで俺からの提案なんだけど...ここで一緒に暮らすのはどうかな?
え、いきなり結婚!?それはとばしすぎだよ。
まずはじっくりとお付き合いしてから...。
俺はあの日、君に一目惚れしたんだ。
でも、名前も知らないし次にあの場所に行ったときには誰もいなくなっていたし...叶わない初恋だって思ってた。
だけど、もし俺でよければ、その...恋人からはじめませんか?
本当は友だちからって言うのが普通なんだろうけど、俺はあの日から忘れたことなんかなかった。
だからもし、君が本心から結婚してなんて言ったなら...俺と付き合ってください。
それは、いいってこと?...それじゃあ改めて、よろしくお願いします。
指が傷ついていたのは、そうして手を酷使していたからなんだね。
もうそんなふうに君が傷つかなくて済むように、俺がこの場所で君のことを護るよ。
だからそんなに不安がらないで。...あ、また血が滲んでる。
ひとまずリビングにおいで。
...ねえ、ひとつだけ教えて。どうしてここに俺が住んでるって分かったの?
それ、この前無くしたと思ってた薬箱...!
そっか、あの場所に置いてきていたんだ...気づかなかった。
この中に入っている紙に書かれた住所を頼りに探してくれたんだね。
届けてくれてありがとう。恩返しだと言うならこれだけで充分だよ。
他の人たちにとってがらくたでも、俺にとってこの箱は大切なものなんだ。
え、これを返すだけで終わるはずだったの?もしかして俺、聞き間違えた?
そうか...それはきっと言い間違えたわけじゃなくて、きっと君の本音が零れたんだね。
謝らないで。俺、いつも独りだから君が側にいてくれると嬉しいんだ。
ごめん、痛かった?もう少し滲みない薬を持っていればよかったんだけど、まだ作りかけなんだ。
ただ、傷の治りは早いからきっとよくなるよ。
もう遅いけど、眠くない?もし不眠症なら薬を処方することもできるけど...分かった、それなら今は何もしない。
もし必要になったらすぐ言ってね。
君と会えたら必ず何か話そうって思っていたから、本当はもし君があのときの人だったらって考えていたんだ。
飲み物は甘い方がいい?...温かいものを淹れるから、眠くなるまで話をしよう。
...これからもどうかよろしくね。
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『鶴の恩返し』の現代版、といったところでしょうか。
恩返しをするはずが零れ出た本音を返される...という謎展開になりました。
流石に鶴に変身してしまうのはまずいかと思い、急遽後半部分を変更しました。
並大抵の覚悟ではここまでできないと思います。
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