物置小屋

黒蝶

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1人向け・看病系

愛という名のレール(秘密だらけだった元・執事)

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お待たせいたしました。
すみません、思った以上に時間がかかってしまって...。
まさかあなたがついてきてくださるとは思っていなかったので感激です。
さあ、お嬢様。共に参りましょう。


...ようやく着きました。
あの家ほど広くありませんが、どうか楽にしてください。
それにしても、本当に電車に乗ったことがなかったんですね。
あのようにきょろきょろとされてしまっては、不審者に見えてしまいますよ。
いいえ、私はそうは思いません。
ただ...やっぱり可愛いなと思うだけ。
ごめん、いきなり素に戻られるのは苦手なんだっけ。
でも、俺はもう君の執事じゃないから。
それより、本当にいいの?
俺は仕事もあるし、あの家を追い出されようが別に構わない。
でも、君は違うでしょ?なんで俺のこと庇ったりしたの?
確かに俺はあの人たちのものなんか触ってもいない。
ましてや、君の部屋で恋人同士いちゃいちゃしていたのにいつ盗めると思う?
でも、そんなことを言えば君まで酷い目に遭わされるかもしれない。
だから黙っていたのに...。犠牲は俺だけでよかったのに。
正妻の子ならともかく、あの継母が君のことをよく思っているはずがない。
そのうえ、あの人の子どもより君の方が優秀なんだから嫌われるに決まってる。
あのお屋敷で君が家事をさせられていたことを知っていた執事やメイドたちが辞めさせられてしまったのは、旦那様に告げ口しないようになんだろうね。
だから次は、俺の番でもおかしくないとは思っていた。
ほら、手がそんなふうに荒れるまで働いて...。
ハンドクリーム塗るから、そのまま手を出して。
...ねえ、本当にいいの?
俺と来るってことは、あのお屋敷には二度と帰れないってことだよ?
それに...旦那様にも会えなくなる。その覚悟はあるの?
...分かった、ならもう何も言わない。
その腕の傷、もしかして殴られたの?
俺の恋人を傷つけるなんて、あの人たちは余程覚悟がおありのようですね。
こんなふうにされたら殺気だたずにはいられない。
手当てするからちょっと腕を診せて。
はい、手当て終わり。
昔から怪我をすることが多かったから、こういうのは慣れてる。
それから...はい、これ。
君のお母さんの形見でしょ?そう、あの人が君から盗んだものだ。
何も心配はいらないから、先に寝ててくれる?
大丈夫だよ、どこにも行かないから。
それでは、おやすみなさいませ。
...ああ、ごめん。もうただの恋人なんだから、おやすみ、でいいのか。
なんだかこういうの、新鮮だな。
明日は家具を買いに行こう。
ずっと俺の古いベッドに寝てもらうわけにもいかないし、俺がそうしたいから。
そう考えると明日が少しだけ楽しみになるでしょ?
少しやることをやってからすぐ行くから、ちゃんと布団に入ってて。


...さて。こんばんは、旦那様。
お嬢様は私がいただきました。
無事かどうか...仕事のことしか見えていないあなたがそんなことを言い出すとは思っていませんでした。
冗談はやめてください。...虫酸が走る。
お暇したいのです。私も、彼女も。
金輪際彼女に...俺の大切な人に関わらないでください。
まさか俺の本職まで忘れたのですか?
...彼女に近づけば、接近禁止命令を出してもらう準備をします。
弁護の腕は落としていませんのでご安心を。
それよりよろしいのですか?
あなたの今の奥方のパワハラと窃盗の証拠が俺の手元にあります。
それから、あなたの娘に対する虐待の証拠もありますよ。
裁判になれば、俺は本気であなたの全てを奪うつもりでいきます。
1番大切な財力と社会的地位、そしてキャリアさえも...塵ひとつ残らないようにしてやります。
俺の要求はただひとつ。...二度と俺たちにか関わらないでください。
傷だらけで泣いている娘を放置した挙げ句、まともに向き合おうともしなかったあなたに親を名乗る資格はありません。
彼女は俺の恋人ですので、必ず幸せにします。
軟禁状態にしたりなんかしないし、あんたと俺では将来への貯蓄も全然違います。
お金で気持ちは買えません。
どうか目の前にあるものだけ見て、ご自身を偽りの愛で満たしてください。
それでは、さようなら。
...これで手を出してくることもないはず。
あれ、まだ起きてたの?
そんなに不安そうな顔をしなくても大丈夫。
これであの家との縁は切れたし、何があっても、もう二度と辛い思いはさせない。
...これから先、俺の一生を懸けて君を幸せにするって誓うから。
だから、ずっと側にいて。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
執事として存在していたが、実は凄腕弁護士だった...ということにしました。
『愛してさえいれば、それは無限を意味する。』──ウィリアム・ブレイクという詩人の言葉です。
彼らの愛はきっと無限に続いていくことでしょう。
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