物置小屋

黒蝶

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1人向け・慰め系

天使な悪魔と世界でひとつだけの箱庭(タイトルどおりです)

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...僕を呼び出したのは、あなた?
何をすればいいの?なんでもできるよ。
例えば...邪魔な存在を消したり、富を増やしたり。
前には死にたくないって願った人もいたみたいだけど、僕はまだそういう人に出会ったことがない。
それで、あなたは何を望むの?
...自分を消してほしくて呼んだの?それなら、こっちにきて。


入って。ここは僕の家、人間観察には丁度いいんだ。
何って...鍵を閉めた。
これで世界から君という存在は消えた。
ここに一生いればいい。大丈夫、嫌がることはしないから。
...ほら、悲鳴でもあげてみなよ。
なんでそんなに嬉しそうなの?
ありがとうとか馬鹿なの?ここから死ぬまで出られないんだよ!?
本当に心が綺麗すぎて、食べる気にもならない。
もういい、やっぱりやめた。
これから君を家に帰すから...ちょっと、どうして袖を掴むの?
それ、本気で言ってる?僕の側にいたところで、何も面白いことなんかないよ。
分かった、家に送るかは後にするとして...ごめん。
腕、さっき強引にひっぱったから痛かったでしょ?
ただ転んだだけじゃこんな傷にはならない。
...親にやられたの?やっぱりそうなんだ。
帰る場所がないなんて言う人間は、大抵そういう嫌な目に遭った子が多いから。
殴ったり蹴ったり、閉じこめたり。
そんなことをするなら、僕たちにくれればいいのに。
...痛い?生きているからそうやって痛いって感じられる。
それって悪くないことだと思うけどね。
はい、手当て終わり。
それじゃあ今度こそ帰ってもらうから...って、え!?
呼び出したことを見逃してやるって言ってるのに、なんで泣いてるの?
僕は心が綺麗な子は食べないんだ。
だって、そういう人間がいなくなったら...この世界に救いなんてないでしょ?
平気で人を傷つける奴、卑劣な真似をして追い詰める奴、己の欲望だけを満たす奴...本当に愚かなことだ。
そういう人間は心がそれはもう真っ黒だから美味しいんだけど、君は違う。
家の人間が騒ぐんじゃない?
なのに、本当に帰らないつもりなの?
僕は説教するつもりなんてない。
腕、上にあげられたら怖いの?...ただ、頭を撫でたかっただけなんだけど。
最初に言ったでしょ、嫌がることはしないって。
君が帰りたくないと心から望むなら、ずっとここにいればいい。
鍵は開けておくから、帰りたくなったらすぐ言って。
え...料理、できるの?
僕はあんまり作れないから、手伝ってくれるなら助かるけど...。
その代わりに置いてほしいなんて、面白い人間もいたものだ。
僕はこの部屋を君が欲しいものでいっぱいにしてあげる。
毎日包帯も巻き直すし、洋服や本...さっきここにくるまでに見ていたぬいぐるみも、全部揃えるよ。
その代わり、君は食事の準備と掃除を少しやる。
ちゃんと休んでやりたいことをやっていい。
あとは、僕が案内する部屋以外には入らないこと。
人間が見てはいけないものもあるから、それは絶対に守って。
ゆびきり?どうやってやるの?
小指を絡ませる...こうか。僕は約束を破る人間は大嫌いだ。
だけど、こういう約束を護るという誓いみたいなものは初めて知ったよ。
...僕はこれから出掛けないといけない。
これでも一応真面目に働いているからね。
君に呼び出された以上、僕が他の人間に呼ばれることはない。
帰ってくるまでそこで眠っていればいい。
というか、出ていってもいいから。
...まあ、ここなら温かいご飯もふかふかの布団も、なんだって用意してあげられるけどね。
君が望むなら、君を傷つける人間から護ってあげる。
だから、その...怯えなくても大丈夫だよ。
それじゃあ、いってきます。
出ていきたかったら本当に出ていっていいんだからね。


はあ、やっと終わった...って、本当にいるし。
こんなにも傷ついて、それでも笑っていられるなんて...どれだけの苦労を背負っているんだろうな。
まったく、僕らしくない。
こんなふうにプレゼントを置くなんていうのは、年に1度のサンタクロースの仕事だろうに。
服も本も...うさぎのぬいぐるみも、気に入ってくれるといいな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こんなふうに言ってもらえるなら、出ていきたくない。
いいなあ、居場所...羨ましくなってしまいました。
彼女が呼び出した悪魔は、天使のような優しさを持っていました。
彼が与えた部屋は、彼女にとって世界でふたつとない箱庭になっていくことでしょう。
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