物置小屋

１人向け・イベント系

月光の羽衣と星屑の芒・星屑の芒ルート(奪い愛の結末・弐)

「...姫、私は帰らないってどういうこと？
これは...文(ふみ)？」
『あなた宛に綴りたいと、数日前から姫があなたへの想いをしたためたものだ。』
「僕への想い？...それが、帰れないっていう話にどう繋がるの？」
『それは...先程申しあげたように、私が彼女を想っているからだ。』
「だけどそれは、」
『姫も、同じように想ってくださっている。』
「嘘だ、そんなはずは...。」
『どうかあなたに、姫を連れて帰るのを諦めていただきたい。...頼む、このとおりだ。』
「土下座されても信じられない。
少しだけ、姫とふたりきりで話をさせてほしい。
...僕は人間と違って、卑怯な真似をするつもりはない。」
『分かった。話が終わるまで、私は別の場所にいることにしよう。
姫、私は庭にいますから、何かあったらすぐ呼んでください。...それでは。』

「...ねえ。君は本当にあの男のことを好きになってしまったの？
無理矢理言わさせられたとか、文だって書かさせれたとか...本当に恋をしたから諦めてほしい、か。
今回帰らなかったら、もう二度と月には戻れないんだよ？
それでもいいって...君の覚悟はよく分かった。
それなら僕が折れるしかない。
強引に連れ戻したところで、君があの男の為に何をするか分からないしね。
それじゃあ、これだけは受け取ってほしい。
髪飾りなら、いつでも身につけられるでしょ？
月のことは僕に任せて、君はこっちでゆっくり過ごしなよ。
その代わり...最後に手を繋いでくれる？
ありがとう。それじゃあ、このまま行こうか。」

『姫...。話は終わったのですか？』
「一応ね。君に確認したいことはひとつだけ。
...かぐや姫のこと、ちゃんと幸せにしてくれる？」
『勿論だ。決して寂しい思いはさせないとあなたにも誓おう。』
「分かった。姫を不幸にしたそのときは、引きずってでも連れて帰るからそのつもりで。」
『分かった。...ありがとう。』
「お礼なんて必要ない。
だけど、君みたいな人間がいたということはしっかり覚えておく。
...それじゃあ姫、元気でね。」
『予想外でした。あなたから聞いた話では、かなり頑固なようでしたので説得できないのではと不安に思っていたのですが...これもきっと、あなたの力なのでしょう。
その髪飾りを見れば、あの者もあなたのことをどれだけ深く愛していたかすぐ分かります。...妬いてしまうほどに。
いえ、なんでもありません。...私を選んでくれて、残ってくれて、本当にありがとうございます。
あの者ともしっかり約束しましたが、あなたに誓わせてください。
私は、生涯を賭けてあなたをどこの誰よりも幸せにします。
だから...どうかこれからも、私の側にいてください。
少し前にふたりで見に行った芒のように、どこまでも真っ直ぐ想い続けます。
これからもどうかよろしくお願いします。』


「あーあ、どうして連れ帰るのを諦めてしまったんだろう。
...まさか、ここに独りで帰ってくることになるとは思っていなかった。
だけど、あの人間になら姫を預けても問題無さそうだったし...あんな笑顔を摘み取れるはずがない。
これから先、どんなに長くなろうとも僕は君を待ち続ける。
だから...もしも生まれ変わったそのときは、僕の隣で笑顔を咲かせてほしいな。
今はここから、君たちのことを見守らせてもらおう。
...愛しているよ。」
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こちらのルートでは、貴公子と両思いになったかぐや姫は残ることを赦してもらう...というふうにしました。
芒の花言葉は、『心が通じる』。
このふたりには、きっと似合いの言葉でしょう。
両ルートとも難易度が高かったように思いますが、楽しかったです。