物置小屋

黒蝶

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1人向け・慰め系

ただ、それだけあればいい。(自己嫌悪する恋人へ)

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おはよう。今日も暑いね...。
それに、今日は早起きだね。いつもならもう少し寝てるのに、何か用事があるの?
そういう訳じゃないんだ、ふうん...ん、どうかしたの?
大丈夫、ゆっくりでいいよ。
君が書いてる間に朝ご飯の準備を終わらせてくるね。あと盛りつけるだけだから...。
はい、完成って、わっ...!?ノートが近くて吃驚したよ...。
ん?『どうしてさっき不満そうだったの?』って...それは、君が何か隠してるように見えたから。
何か我慢してるんじゃないかって思ったんだ。
『私といて楽しい?』って...それはまた唐突だね。
そんなの、すごく楽しいに決まってるでしょ?
楽しくなかったらこんなふうに一緒にいないよ。
...ねえ、やっぱり何かあったんでしょ?怒らないから正直に教えてほしいな。
今言いたくないならご飯の後にしようか?...よし、それじゃあひとまずいただきます。

どうだった?美味しかった?よかった...。
そんなにいい笑顔で頷いてくれたら、絶対に嘘じゃないって思えるよ。
ん?ノート?どれどれ...『私は声が出ないからできないことが多いなって、自己嫌悪を止められなくて変なことを聞いちゃった、ごめんなさい』って...。
どうして謝るの?君だってなりたくてなった訳じゃないでしょ?
納得してないって顔してる。
そうだな...たとえば、声が出ないから咄嗟の受け答えができない。
だけどその分、君の言葉は丁寧に相手に届けられる。
確かに君は、普通に暮らしている人よりはできないことが多いのかもしれない。
だけど、他の人より丁寧にできることだってあることを俺は知ってる。
この前駅に迎えにきてくれてたとき、道を聞かれてたでしょ?
あんなふうに地図を綺麗に書いて手渡せる人なんて、なかなかいないと思う。
メモ帳を持ち歩いていたからというのと、君の優しさがあったからできたことなんだって思うよ。
『見てたの?』って...ごめん、代わりに答えに行こうかとも思ったんだけど勇気が出なかったんだ。
そうやって俺ができないことを、君は普通にやってる。
...俺の恋人はすごいなって思ったよ。
それから、君はいつも挨拶してくれるよね。
毎日毎日、手話だったりメモ帳に書いたりして欠かさず伝えてくれてる。
できることが少ないって言ってたけど、俺はそれだけでいいんだ。
おはようって言いあえて、おかえりって言ってくれる。
...それだけあれば充分だよ。
大丈夫、泣いてていいから...抱きしめさせて?

少し落ち着いた?『ありがとう』って...そういうところも好き。
...ごめん、さっきそれだけでいいって言ったけど少し付け加えるね。
おはようって、おかえりって、おやすみって...大切な君に言ってもらえないと意味がない。
だけど、それだけあればいいっていうのは本当。
たとえどんなことがあったとしても俺が側にいるってこと、忘れないでね。
『お仕事は?』って...今日は休みだよ。
そういうちょっと抜けてるところも可愛いね。
折角だし、何かしようか?
行きたいところとかやりたいことってある?
今の唇の動きは『雑貨屋さん』でしょ?いいよ、一緒に行こう。
こうして君と出掛けられるのは久しぶりだから、すごく楽しみだな...。
食器は片づけておくから、君は先に...ん?どうしたの?
『私もやる』って...ありがとう。それじゃあお願いしようかな。
こうやってふたりでいられる時間が増えるのは、俺も嬉しいから。
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私には、できることよりできないことの方が多いです。
だから...もし、そういった部分から長所を見つけ出してくれる人が側にいたらなんて考えてしまうのです。
ごめんなさい、やっぱり私駄目ですね。
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