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1人向け・イベント系
ただ想いを、伝えたい。(失声症の恋人と、海でのデート)
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おはよう。今日は早起きだね。
どうかしたの?そんなに慌てて書かなくても、ゆっくりで大丈夫だよ。
『海に行きたい』...いいね、それ。
今日は休みだし、のんびり出掛けて...ん?どうして裾を掴んでるの?
『分からなくなる』って...ああ、そっか、海だとノートを使えなくなっちゃうから...。
俺も君も手話は少ししか分からないし、読唇はたまに読み取りきれないから、コミュニケーションがとれなくなるってことか...。
大丈夫だよ、きっと。
行ってみたら、案外なんとかなるかもしれないよ?
...それに、やる前から諦めちゃうなんて勿体ないでしょ?
今、『たしかに』って口を動かしたでしょ?
大丈夫、ふたりでならきっと...だから、行ってみよう?
それじゃあ決まり。楽しみだね...。
晴れてて本当によかったね。
あのあたりなら、あんまり人がいなさそうだよ。
休みなのに、そんなに人がいなさそうに見えるんだけど...ん?あっち?
本当だ、今の時間なら屋台で何か買っている人が多いからなんだね。
もしかして...ここにくるの、初めてじゃない?やっぱり、なんだかそんな気がした。
前にきたのはいつ...って、ごめん。選択肢が多いと答えるのも難しいよね。
...『ずっと前』、そうなんだ。それからあんまり変わってない?
そっかそっか、俺より君の方が詳しそうだね...。
それじゃあ荷物はこのへんに置いていこうか。
まずは足だけ入って...わっ、ちょっと、いきなり水をかけてくるのは反則...可愛いから許すけど。
あ、隙あり。やっと少しだけやりかえせた。...それにしても、随分楽しそうだね。
もしかして、本当はずっときたいのを我慢してたんじゃない?
首を横にふっても駄目だから。...顔に出ちゃっててバレバレだよ。
ねえ、今何か言いかけたでしょ?もう1回言って?
...ごめん、分からなかった。2文字でもやっぱり難しいものだね...そうだ、ずっと渡したいものがあったんだ。
車のなかに置いてきちゃったから、ちょっとだけ待っててくれる?ついでに飲み物も買ってくるから...ね?
...置いてくるなんて、本当に何してるんだろう。
やっと見つけられたものだったのに...よかった、やっぱりここにあった。
なんだか様子が変だな...あれってもしかしなくても、だよね。
早く行かないと。
...すいません、彼女に何しようとしてるんですか?
誰だよって...俺はその子の恋人なんだけど。
何か用事があるなら俺がつきあってあげるからその手を離してもらえないかな?
1人にしてごめん。大丈夫だった?...頷いてるけど、嘘でしょ。
手が震えてる...本当にごめんね。
もう大丈夫だから、安心して?それから、これ。
...1枚1枚が防水になってるメモ帳らしくて、買っておいたのに渡すタイミングを逃しちゃって...。
それから、これは専用のペン。インクの替えとノートの予備も一応買ってみたんだけど、もし要らなかったら...わっ、どうしたの、いきなり手を握ってきて...。
君が笑ってくれて本当によかった。
あ、今の手の動きは『ありがとう』でしょ?ちゃんと覚えてるよ。
そういえば、さっき何て言おうとしてたのか気になるな...。
試し書きついでに教えてほしいな、なんて...『好き』って直接言われると恥ずかしいよ。
それにしても、手話でもできるのにわざわざ口の動きだけで伝えようとしたのは、どうして?
大丈夫、ゆっくりでいいから話して?
『書くのが1番残るけど、口でしっかり言葉にしたかったから』って...可愛い。
抱きしめてもいい?...よかった、もう震えはおさまってるみたいだね。
ううん、なんでもない。
あ、そうだ、ひとつ伝え忘れてた。
...俺も君のこと、大好きだよ。
ほら、もう遅いしそろそろ帰ろう。
次はこのメモを使って、一緒にもっと海を楽しもうね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
失声症歴5年ほどの私の理想です。
防水のものがあればいいのにな、と思う今日この頃...。
探し方が悪かったのか、田舎だから置いていないのか。
私が見つけることができなかったもの...持ち運びができて、防水加工がされていて、お風呂や海で使えるノートやペンのようなものがあればいいなと思いながら綴りました。
彼が全力で探してくれたそれを、彼女はきっとずっと大切に使い続けることでしょう。
どうかしたの?そんなに慌てて書かなくても、ゆっくりで大丈夫だよ。
『海に行きたい』...いいね、それ。
今日は休みだし、のんびり出掛けて...ん?どうして裾を掴んでるの?
『分からなくなる』って...ああ、そっか、海だとノートを使えなくなっちゃうから...。
俺も君も手話は少ししか分からないし、読唇はたまに読み取りきれないから、コミュニケーションがとれなくなるってことか...。
大丈夫だよ、きっと。
行ってみたら、案外なんとかなるかもしれないよ?
...それに、やる前から諦めちゃうなんて勿体ないでしょ?
今、『たしかに』って口を動かしたでしょ?
大丈夫、ふたりでならきっと...だから、行ってみよう?
それじゃあ決まり。楽しみだね...。
晴れてて本当によかったね。
あのあたりなら、あんまり人がいなさそうだよ。
休みなのに、そんなに人がいなさそうに見えるんだけど...ん?あっち?
本当だ、今の時間なら屋台で何か買っている人が多いからなんだね。
もしかして...ここにくるの、初めてじゃない?やっぱり、なんだかそんな気がした。
前にきたのはいつ...って、ごめん。選択肢が多いと答えるのも難しいよね。
...『ずっと前』、そうなんだ。それからあんまり変わってない?
そっかそっか、俺より君の方が詳しそうだね...。
それじゃあ荷物はこのへんに置いていこうか。
まずは足だけ入って...わっ、ちょっと、いきなり水をかけてくるのは反則...可愛いから許すけど。
あ、隙あり。やっと少しだけやりかえせた。...それにしても、随分楽しそうだね。
もしかして、本当はずっときたいのを我慢してたんじゃない?
首を横にふっても駄目だから。...顔に出ちゃっててバレバレだよ。
ねえ、今何か言いかけたでしょ?もう1回言って?
...ごめん、分からなかった。2文字でもやっぱり難しいものだね...そうだ、ずっと渡したいものがあったんだ。
車のなかに置いてきちゃったから、ちょっとだけ待っててくれる?ついでに飲み物も買ってくるから...ね?
...置いてくるなんて、本当に何してるんだろう。
やっと見つけられたものだったのに...よかった、やっぱりここにあった。
なんだか様子が変だな...あれってもしかしなくても、だよね。
早く行かないと。
...すいません、彼女に何しようとしてるんですか?
誰だよって...俺はその子の恋人なんだけど。
何か用事があるなら俺がつきあってあげるからその手を離してもらえないかな?
1人にしてごめん。大丈夫だった?...頷いてるけど、嘘でしょ。
手が震えてる...本当にごめんね。
もう大丈夫だから、安心して?それから、これ。
...1枚1枚が防水になってるメモ帳らしくて、買っておいたのに渡すタイミングを逃しちゃって...。
それから、これは専用のペン。インクの替えとノートの予備も一応買ってみたんだけど、もし要らなかったら...わっ、どうしたの、いきなり手を握ってきて...。
君が笑ってくれて本当によかった。
あ、今の手の動きは『ありがとう』でしょ?ちゃんと覚えてるよ。
そういえば、さっき何て言おうとしてたのか気になるな...。
試し書きついでに教えてほしいな、なんて...『好き』って直接言われると恥ずかしいよ。
それにしても、手話でもできるのにわざわざ口の動きだけで伝えようとしたのは、どうして?
大丈夫、ゆっくりでいいから話して?
『書くのが1番残るけど、口でしっかり言葉にしたかったから』って...可愛い。
抱きしめてもいい?...よかった、もう震えはおさまってるみたいだね。
ううん、なんでもない。
あ、そうだ、ひとつ伝え忘れてた。
...俺も君のこと、大好きだよ。
ほら、もう遅いしそろそろ帰ろう。
次はこのメモを使って、一緒にもっと海を楽しもうね。
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失声症歴5年ほどの私の理想です。
防水のものがあればいいのにな、と思う今日この頃...。
探し方が悪かったのか、田舎だから置いていないのか。
私が見つけることができなかったもの...持ち運びができて、防水加工がされていて、お風呂や海で使えるノートやペンのようなものがあればいいなと思いながら綴りました。
彼が全力で探してくれたそれを、彼女はきっとずっと大切に使い続けることでしょう。
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