物置小屋

黒蝶

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1人向け・イベント系

彼岸の花が、咲く前に。(お盆の話です)

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...今日は起きるの早いな。
そういえば、しばらくおじいさんの家に戻るって言ってたんだったな。
いってこいよ...なんて見送るほど俺は優しくない。
墓掃除だけじゃ気がすまないし、おまえがいいなら俺も行く。
...仕事?そんなものとっくに片づけて、余ってる有給休暇申請して休めるようにしてある。
ほら、早く準備しないと置いてくぞ。


...相変わらず広いな、ここは。
おまえ、あれからちょくちょくここきてるだろ。
どうして知ってるのって、当たり前だろ、おまえのことなんだから。
俺に手伝わせるのは気がひけるからって、一人でここにきてたんだろ?
やっぱりか。手伝うって言ったのに、そういうところは本当に頑なだな。
...まあ、嫌ってわけじゃないけど。
で、灯籠を組み立てるんだろ?あんまりやったことないけど、やり方を教えてほしい。
おりょうぐとか迎え火とか、そういうの全然分からないし...俺にできそうなことをやりたいんだよ。
見てるだけなら、俺がきた意味ないだろ?いいの?って...今更だろ、そんなの。
よくなかったら、こんなふうについてきたりしない。ほら、感激してないで早くやるぞ。

...意外と難しいんだな、これ。
まあ、一応完成か?迎え火は...夜やるのか、分かった。
それにしても、ここは本当にいい場所だな。
...おまえも、おまえのおじいさんも好きだった理由が分かる気がする。
なあ、もし嫌じゃないならまた聞かせてくれないか?何をって、おじいさんのこと。
俺が知ってるのはおまえにとって大切な人だったってことと、入院生活が大変そうだったってことくらいだから。
...アルバム?これ、小さい頃のおまえか?...まつぼっくり持って笑ってて可愛いな。
っ、にやにやするな、俺は率直な感想を述べただけだ。
この一緒に写ってるの、おじいさんだろ?...小さいおまえの隣で楽しそうに笑ってるな。
またそんな顔をして...どんな?って、無自覚なのか?
...自分を責めるような、そういう顔。
もしおまえが、あのときみたいに絶望して...自分のせいで人を不幸にしてしまうって考えてるなら、それは間違いだから。
俺はぴんぴんしてるし、おまえもあのときよりは少しだけ気持ちを持ち直しただろ?
それに、こうしてふたりでおじいさんの帰りを待つことだってできる。
...おまえは、人よりできることが多いんだよ。
だからもっと、自信もっていい。
生きていようがいまいが、大切な人の為にここまで頑張れる奴を俺は知らない。
玄関の掃き掃除に、家の中の遺品整理...これだけのことをやってくれる人がいたら、幸せだって思うんじゃないか?
...おまえは、自分で思ってるよりすごいんだよ。
...悪い、また泣かせた。けど、おじいさんはおまえが想ってくれてるのが嬉しいって感じてるんじゃないかって、そんな気がする。
上手く言えないけど、きっと大丈夫だ。
おまえの気持ちは、ちゃんと伝わってるはずだから。

...少しは落ち着いたか?それならよかった。
おまえが好きなもの、何か作ってやる。
だから、一旦買い物に行こう。...このへんの店、案内してほしいし。
ほら、行くぞ。
...ついでに、おまえが好きな場所教えて?
おまえが大切にしているものを、俺は知りたいから。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
まだまだ早いですが、『あなたに誓う』の恋人たちでお盆の話を綴ってみました。
お彼岸は春分と秋分近くなんです。

『一緒に散歩して、どんぐりやまつぼっくりを拾って遊ぶ』...唐牛で覚えている、記憶が消えていくようになる前の出来事です。
本当に大切で、けれどもう会えなくて...一目でいいから、なんて思うこともあります。
ただ、そうなってからでは遅いのです...。
因みに私は毎年、灯籠の組み立てや迎え火・送り火...おりょうぐも少しだけやります。
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