物置小屋

１人向け・慰め系

偽りの笑顔を壊したい。(理想です)

...ねえ、どうかした？
泣そうな顔してるから、辛いことがあったのかなって思って...。
首をふっても駄目。...俺には、嘘なんて通用しないから。
君のことなら、なんだって...とまではいかなくても、ほぼお見通しだよ。
大丈夫、ゆっくりでいいから書いてみて？
『伝えたいことが伝わらなかった』...それは、街で？
...ごめん、読唇あんまり得意じゃないから「今日、カフェでご飯を...」、までしか分からなかった。
俺はいつまでだって待つから、ゆっくり君の負担にならない程度に書いてくれればいいからね。
『ご飯を食べていたら、耳が聞こえてないと思われたみたいで、近くの席の人に色々言われた』...そっか。
どうしてそんなことを、わざわざ声に出して言うんだろうね。
どんなことを言われたの？...ああ、言いたくないなら言わなくていいから。
『なんで障害者がこんなところで食事してるんだって言われた』...酷いことを言う人もいるんだね。...辛かったね。
あ、今のは日本手話の『大丈夫』でしょ？...本当は全然大丈夫じゃないでしょ。
...大丈夫じゃないときは、無理に笑わなくていい。
泣くのも、俺の前では我慢しなくていいんだよ。
心ない言葉をかけられて傷つくことは、きっと誰でもある。
でも、傷つく度合いは人によって違う。
同じ言葉でも、かすり傷程度に感じる人もいれば、ナイフで刺されたような感覚になる人もいる。
上手く言えないけど、傷ついたことを隠す必要はないんじゃないかな...。
隠すのが上手になっちゃったら、君はきっと我慢ばっかりしちゃうでしょ？
...君にはもっと、我儘になってほしいんだ。
どんなことでも、ちゃんと最後まで聞くから...大丈夫なふりして、笑うのはやめて？
『私が駄目だから』...って、そんなこと思わなくていいんだよ。
...君はその人たちに傷つくことを言われても、その人たちが嫌がることをしなかった。
それは君が持ってる優しさで、強さだと思う。
きっと、誰にでもできることじゃない。
だけど、君がずっと独りで我慢してるのは嫌なんだ。
普段君が感情を隠してるときがあるのはちゃんと分かってるつもりだけど...俺とふたりきりのときだけは、素直に感情を出してくれないかな...？
...『本当は辛かった』、か。
やっと君の気持ちを聞けてよかった。
よしよし、大丈夫。泣くのを堪えなくていいから...。

ちょっとすっきりした？それならよかった。
また何かあったらすぐ言って。
...ん？どうしたの、俺の服握って...。
『好き』って、今のは反則。読唇できるよ、それくらいの単語なら。
君が本当の笑顔を見せてくれてよかった。
俺も、その...手の動き、見ててくれる？直接言うのは恥ずかしいから、こうやって伝えるね。
...どういう意味か分かった？
そう、唯一世界共通の手話、「愛してる」だよ。
どうして笑ってるの？
...！結局言っちゃった...。そんなに笑わなくてもいいのに。
本当に元気になったみたいだね。
...たとえ君の声が出ないままでも、俺は君のこと大好きだから。
そのことだけは、忘れないでね。
ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ
もう完全に私の理想です、ごめんなさい。
しかもちゃんとまとまっていないような気が...。
周りに、失声症って分かってもらえなくて...昨日も独りで列車に乗る前にご老人にどの列車に乗ればいいのかを聞かれて答えていると、別の知らない人たちから『うわ、あいつ病気！うつる？これも聞こえてないか！』と言われてしまいました...。
いや、耳はしっかり、寧ろ人より聞こえがいいんです。
ご老人に平気かと聞かれて、私はただ笑顔で頷くことしかできませんでした。
...その後帰りついたとき、涙が止まりませんでした。
私はもう、人前で泣くことができません。...どうしても嘘笑いが出てしまうのです。