物置小屋

黒蝶

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タイトル未定・第5話『新しい容疑者』

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翌朝、私は早速保健室へと向かった。
だが、そこにいたのは矢澤先生ではなく...昨日運悪く花代の家で鉢合わせた人物だった。
「こんにちは、真幸刑事」
「ああ、こんにちは」
「...」
「そんなに警戒しなくても、君を口撃こうげきしようとは思ってないよ」
「それならどうしてここにいらっしゃるんですか?それに、矢澤先生はどこに?」
いつもそうしてきているからなのか、つい警戒してしまう。
(大人なんか信用できない。...この人は少し違うみたいだからまだ様子を見るけど)
「矢澤先生には少し外してもらうよう頼んである。それから、僕がここにいるのは...報告があるからだ」
「...!」
昨日の滴下痕について、ということだろうか。
それとも、他に何か分かったことがあるからだろうか。
「...今、母親を取り調べてる。そこで一つ、気になることを聞いたんだけど...」
あいつは何を話したのだろう。
私はごくりと息を呑んだ。
「バイトしてたって本当?」
あまりに拍子抜けな質問に、私は笑いを堪えながら答える。
「バイトはしていましたが、何か問題でも?」
「実は...」
少し話しづらそうにしながらも、彼は語ってくれた。
「実は、店長にストーカーや嫌がらせの疑いがある」
「...!」
店長が、花代にストーカー...?
『鈴奈、ごめん。先に帰っててくれる?』
『うん、分かった。...それじゃあ、また明日ね』
その言葉を聞いて、何度か途中で花代が帰る道を変えていたことを思い出す。
(まさか店長がそんなことをしていたなんて...)
花代は店内で一番人気の店員だった。
そこそこの評価の私ならともかく、花代に辞められては困ったはずだ。
「それから、滴下痕の話なんだけど...あれはやっぱり雛川花代さんのものだったよ」
つまり、ますます殺人の可能性が高まったということだ。
「...あの人は」
「?」
「あの人は、どうしていますか?」
「花代さんのお母さんなら、事情を訊いているところだよ」
私はただ、そうですかと返すことしかできなかった。
(店長が殺した?それともあいつ?)
それとも、自殺...?
謎ばかりが増えて、どんどん人が信じられなくなっていく。
やっぱり、誰も信じられない。
「...学校が終わったら、バイト先に行く予定なんです。そこで店長と会ってきます」
「それは、」
「私には!...私には、花代しかいなかったんです。そろそろ授業なので失礼します」
真幸刑事を振りきり、私は教室へと歩きだす。
どうして花代が死んだのか。
...やはり自分で解き明かしたいと決意して、バイトまでの時間みっちり授業を受けた。
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新たな容疑者、浮上。
という展開です。殺人なのか自殺なのか...真幸刑事の視点でも、近々書きたいなと思っています。
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