物置小屋

黒蝶

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物語の欠片

チョコレートに願いを。

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季節は秋から冬になり、学校生活にもなれてきた頃。
私と葉月の関係は相変わらず続いている。
「弥生、あの...」
葉月が何かを言いかけたとき、私は先生に呼ばれた。
「ごめん、葉月。夜、いつもの場所でもいいかな?」
「うん、待ってる...」
(今すぐ聞いた方がよさそうだったけど、相手が先生なら後でってわけにはいかないし...)
そのとき見た葉月は、なんだか寂しそうだった。
...その日の夜、いつもの場所へ向かう。
そこにはもう既に葉月がいて、手をあげて声をかけた。
「葉月」
「弥生...」
星空の下、じっと見つめあう。
先に口を開いたのは、葉月だった。
「弥生は、ホワイトとビター、どっちが好き?」
(ホワイト?ビター?)
何の話か全く見えてこない。
「あ、えっと、甘いのと苦いのどっちが好きなのかなって...」
「もしかして、チョコレートのこと?」
葉月は小さく首を縦にふる。
その反応を見て、私は思わず笑ってしまった。
「それなら、ホワイトじゃなくて、ミルク...っ」
駄目だ、ツボにはまってしまった。
「き、緊張してたの。こんなこと聞く相手なんて今までいなかったし...」
「ごめんごめん。私はどちらかと言えばビターかな。葉月は?」
「甘い方が好き」
「...そっか」
手作りチョコなんて、上手くできるか分からない。
分からないけれど...少し、やってみようと思った。
「それじゃあ葉月、また明日、ここで」
「うん」
私はともかく、流石に真夜中葉月を一人で歩かせるわけにはいかない。
チョコレートのこともあって、早めに解散した。
ーー翌日、私は朝からバレンタインチョコ作りに勤しんでいた。
(生チョコくらいしかレシピ覚えてないけど、食べられないとか嫌いとか、そういうのを聞いておけばよかったな...)
そう思ってももう遅い。
空では既に月が輝いていて、いつもの木の下には見覚えのある影があった。
「葉月!」
「弥生...これ、食べてみてくれる?」
光沢を放つチョコレートなんていう言葉があるけれど、もしかするとこういうものを示すのかもしれない。
「美味しい!」
「よかった...」
私は不恰好なチョコレートをそっと手渡す。
「作ってはみたんだけど、美味しくないかもしれない...」
その瞬間、葉月は私をぎゅっと抱きしめて、そのままその場に倒れこんだ。
「ありがとう。早速食べてみてもいい?」
「う、うん...」
(どうか気に入ってもらえますように...)
そう祈りつつ、そっと目を閉じる。
「弥生、これすごく美味しい」
「葉月のの方が美味しいよ...」
美味しいなんて言われたのは久しぶりで、どんな反応をしていいのか分からなかった。
「...いちご大福より?」
「いちご大福も好きだけど、こっちも大好きだよ」
二人で顔を見あわせ笑いあう。
ーーたった一つの大切なものを失ってしまわないようにと願いながら、もう一度チョコレートが入った宝石箱を握りしめたのだった。
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バレンタインバージョンを作ってみました。
なんだか微妙...ごめんなさい。
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