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物語の欠片
タイトル未定・第3話『捜査開始』
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女の背中を見送り、私はそのまま真っ直ぐ花代の部屋へ向かう。
「何、これ...」
久しぶりに入った友人の部屋でただただ驚愕した。
以前と比べて、ほとんどものがなくない。
(バイトをしてもお金が足りなかったの?)
私と花代は、小さな喫茶店で働いていた。
校則に引っ掛からなくて、尚且二人の夢に近い場所。...それがそこだった。
『鈴奈、私たちもいつか二人でこんな素敵なお店を開きたいね』
小さい頃からずっと、そんな話をしていたのだ。
...そんな話をしていた、はずなのに。
「~っ」
私はただ歯を食いしばることしかできなかった。
ここで一番泣きたかったのは花代のはずで、何も気づけなかった私に泣く資格なんてない。
...そんなもの、あるはずがないのだ。
【全て友人の日長鈴奈に相続させてください】
そう書かれていた用紙とスマートフォンを封筒に入れ直し、綿を優しく抱きしめるようにかかえなおした。
(花代...何があったのか、絶対に突き止めてみせるから)
大人たちは自殺で片づけて終わりにする。
そのあと他の人間は全て忘れる。...勿論、追い詰めた人間も含めて。
社会とは、大人とは、人間とはそういうものなのだ。
『鈴奈!』
そんなふうに優しく名前を呼んでくれる人はもういない。
「花代...」
「そこで何してる!」
私はすっかり忘れていた。
今ここにいることがバレたら、花代を追い詰めた犯人だと疑われかねないということを。
「...」
無言で相手を見つめると、どこかで会ったことのある大人だった。
「あれ、鈴奈さん?」
「...警察の人」
「これからその部屋を調べないといけないんだ。どうしてここにいるのかは後で聞くことにして、」
「大切な友人が死んだ理由を探す為にここにきたんです」
「...そうか。でも、そういうことは」
「大人は都合が悪いことがあればすぐ隠すのに、信用できない」
「それなら、そこで見ていればいい。...本当はいけないことだけど、手袋はしておいてね」
この大人は、私を咎めなかった。
それどころか見ていていいと言う。
(意味、分からない)
混乱する頭を抱えて、無言で頷きその場で起立する。
ーー封筒を、そっと鞄に隠して。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本当は多分駄目です。
犯人が検分することはあっても、一般市民が立ち入っていいはずがない。
この物語には、まだまだ秘密が詰まっています。
そのあたりもお楽しみいただけますと光栄です。
「何、これ...」
久しぶりに入った友人の部屋でただただ驚愕した。
以前と比べて、ほとんどものがなくない。
(バイトをしてもお金が足りなかったの?)
私と花代は、小さな喫茶店で働いていた。
校則に引っ掛からなくて、尚且二人の夢に近い場所。...それがそこだった。
『鈴奈、私たちもいつか二人でこんな素敵なお店を開きたいね』
小さい頃からずっと、そんな話をしていたのだ。
...そんな話をしていた、はずなのに。
「~っ」
私はただ歯を食いしばることしかできなかった。
ここで一番泣きたかったのは花代のはずで、何も気づけなかった私に泣く資格なんてない。
...そんなもの、あるはずがないのだ。
【全て友人の日長鈴奈に相続させてください】
そう書かれていた用紙とスマートフォンを封筒に入れ直し、綿を優しく抱きしめるようにかかえなおした。
(花代...何があったのか、絶対に突き止めてみせるから)
大人たちは自殺で片づけて終わりにする。
そのあと他の人間は全て忘れる。...勿論、追い詰めた人間も含めて。
社会とは、大人とは、人間とはそういうものなのだ。
『鈴奈!』
そんなふうに優しく名前を呼んでくれる人はもういない。
「花代...」
「そこで何してる!」
私はすっかり忘れていた。
今ここにいることがバレたら、花代を追い詰めた犯人だと疑われかねないということを。
「...」
無言で相手を見つめると、どこかで会ったことのある大人だった。
「あれ、鈴奈さん?」
「...警察の人」
「これからその部屋を調べないといけないんだ。どうしてここにいるのかは後で聞くことにして、」
「大切な友人が死んだ理由を探す為にここにきたんです」
「...そうか。でも、そういうことは」
「大人は都合が悪いことがあればすぐ隠すのに、信用できない」
「それなら、そこで見ていればいい。...本当はいけないことだけど、手袋はしておいてね」
この大人は、私を咎めなかった。
それどころか見ていていいと言う。
(意味、分からない)
混乱する頭を抱えて、無言で頷きその場で起立する。
ーー封筒を、そっと鞄に隠して。
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本当は多分駄目です。
犯人が検分することはあっても、一般市民が立ち入っていいはずがない。
この物語には、まだまだ秘密が詰まっています。
そのあたりもお楽しみいただけますと光栄です。
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