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物語の欠片
タイトル未定・第2話『遺されたもの』
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真幸という刑事は、私に花代についてのあれこれを聞いてきた。
どういったものが好きだったのかというものから、最近の様子...どんな関係だったのかまで。
「ありがとう。今日は疲れてるだろうし、これで失礼します」
「...はい」
刑事の後ろ姿をぼんやりと見つめながら、私は小さくため息を吐いた。
(『今日は』ってことは、またくるってことだよね)
矢澤先生にお礼を言って、この日は早退させてもらった。
だが、家に帰るわけではなく...私は古い扉をたたいた。
「あら、あなたたしか...」
「花代がいなくなったのに、あなたは何をやっているんですか?」
刑事なんか信じない、信じられない。
だから、私は私ができることをやる。
(それにしても、この人は何をやっているんだろう?)
煙草を吹かしている目の前の女に吐き気を覚えながら話しかける。
「あなたにあげる。本当は警察に渡すべきなんだろうけど、あたしはあの子の母親だから」
何か封筒のようなものを渡され、その場で開ける。
中には手紙と、見覚えのあるスマートフォン...。
(花代のスマートフォン...?)
「その鍵はこの家のとどこのか分からないあの子の部屋の何かを開ける為のものよ。好きに使っていいわ。数日は帰らないから」
この母親はいつもこうだった。
花代はこいつが気に入らないことがあれば蹴られ、根性焼きのような痕が体に大量にあったこともある。
彼女がそうして暴力を振るわれていたことを、警察は突き止めただろうか。
(...無理だろうな)
私は挑発的な笑みを浮かべる女を押し退けてズカズカ土足で踏みこんだ。
「心配しなくてもあなたが花代にしたことは今は言ってない。でももし、あなたが花代を追いこんだ一因だというのなら...警察に話す」
「言ってなさいマセガキ」
女はそう吐き捨てて、どこかへ行ってしまった。
こいつは結局、花代が死んでも何とも思っていないんだ。
帰りが遅くて、家に誘って一緒にご飯を食べたこともある。
(花代...)
私は手のなかにあるスマートフォンを握りしめた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
暴力を振るわれても、周りの大人は助けてくれない...『誰かがやってくれる』とか、そういうのはきっとない。
そうして周りの大人を信じていない鈴奈は私の一部です。
...もしかすると、花代はある時期の私自身なのかもしれません。
どういったものが好きだったのかというものから、最近の様子...どんな関係だったのかまで。
「ありがとう。今日は疲れてるだろうし、これで失礼します」
「...はい」
刑事の後ろ姿をぼんやりと見つめながら、私は小さくため息を吐いた。
(『今日は』ってことは、またくるってことだよね)
矢澤先生にお礼を言って、この日は早退させてもらった。
だが、家に帰るわけではなく...私は古い扉をたたいた。
「あら、あなたたしか...」
「花代がいなくなったのに、あなたは何をやっているんですか?」
刑事なんか信じない、信じられない。
だから、私は私ができることをやる。
(それにしても、この人は何をやっているんだろう?)
煙草を吹かしている目の前の女に吐き気を覚えながら話しかける。
「あなたにあげる。本当は警察に渡すべきなんだろうけど、あたしはあの子の母親だから」
何か封筒のようなものを渡され、その場で開ける。
中には手紙と、見覚えのあるスマートフォン...。
(花代のスマートフォン...?)
「その鍵はこの家のとどこのか分からないあの子の部屋の何かを開ける為のものよ。好きに使っていいわ。数日は帰らないから」
この母親はいつもこうだった。
花代はこいつが気に入らないことがあれば蹴られ、根性焼きのような痕が体に大量にあったこともある。
彼女がそうして暴力を振るわれていたことを、警察は突き止めただろうか。
(...無理だろうな)
私は挑発的な笑みを浮かべる女を押し退けてズカズカ土足で踏みこんだ。
「心配しなくてもあなたが花代にしたことは今は言ってない。でももし、あなたが花代を追いこんだ一因だというのなら...警察に話す」
「言ってなさいマセガキ」
女はそう吐き捨てて、どこかへ行ってしまった。
こいつは結局、花代が死んでも何とも思っていないんだ。
帰りが遅くて、家に誘って一緒にご飯を食べたこともある。
(花代...)
私は手のなかにあるスマートフォンを握りしめた。
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暴力を振るわれても、周りの大人は助けてくれない...『誰かがやってくれる』とか、そういうのはきっとない。
そうして周りの大人を信じていない鈴奈は私の一部です。
...もしかすると、花代はある時期の私自身なのかもしれません。
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