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秋久ルート
第71話
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何をするか不安になっていたけれど、夏彦さんは綺麗な洋服を手渡してくれた。
「なんだか心配させちゃったみたいだったから、そのお詫びも兼ねて準備してきたんだ。
久しぶりに洋服屋としての仕事をしたかったしね。気に入らなかったら捨ててくれていいから、着てみてもらえないかな?」
まさか真新しい半袖の洋服をもらえるなんて思っていなかった。
あまりに突然のことで頭がついていけてないけれど、夏彦さんが私のために用意してくれたことは分かる。
「ありがとうございます。早速着てみます」
「ボタンの留め方とか、困ったことがあったら言ってね」
「は、はい」
夏彦さんに教えてもらったとおり着てみると、思っているよりずっと簡単に着られた。
「あ、あの、着替えました」
「ああ、お嬢ちゃん。…似合ってるな」
「ありがとうございます」
秋久さんに似合っていると言ってもらえるのはすごく嬉しい。
どうしてこんなことを考えてしまうのかは分からないけれど、もっと見て褒めてほしいと考えた。
勿論本人には言えないけれど、ちゃんと気持ちを伝えられなかったと後悔することにはならないように気をつけようと思う。
「流石だな」
秋久さんが夏彦さんにそう声をかけると、夏彦さんは照れているみたいだった。
「まあ、こっちを本業にしたかったくらいだし?もっと褒めてよアッキー」
「まだプリンが残ってるが、食べるか?」
「え、いいの!?ラッキー、いただきます」
夏彦さんが機嫌よくキッチンに向かったのを見て、秋久さんに声をかける。
「あの…」
「心配しなくても、あいつは自分なりの答えを出そうとしている。
何かあったときは俺が力になるから心配いらない」
彼の表情から読み取れたのは、何かしら覚悟を決めたことだけだった。
「ごちそうさまでした!ありがとうアッキー」
「ソースを作りすぎただけだから、礼を言われるようなことはしてない」
「月見ちゃんにもお礼を言わないとね」
「い、いえ…」
「そうだ、裁縫が得意なら今度店を手伝ってもらおうかな…。
あとは手のモデルもお願いしたいんだけど、詳しい話をしてもいい?」
「は、はい」
ふた言だけでは、何をすればいいのかよく分からない。
ただ、誰かの役に立てるなら頑張ってみよう。
「まず、裁縫についてなんだけど…もうすぐふたりの家に帰れるだろうから、そうなったら在宅ワークという形で雇用させてもらおうと思ってる」
「在宅ワークって、何をするんですか?」
「アッキーのハンカチ直したんだよね?そういうのを時間が空いてるときにやってほしいんだ。
あと、手のモデルっていうのはアクセサリー雑誌のことで…」
説明を聞いただけで楽しくなる。
もし全部片づいて、まだ秋久さんの役に立てるならやってみたい。
「是非お願いします」
「それじゃあ決まりだね!こちらこそよろしく」
「なんだか心配させちゃったみたいだったから、そのお詫びも兼ねて準備してきたんだ。
久しぶりに洋服屋としての仕事をしたかったしね。気に入らなかったら捨ててくれていいから、着てみてもらえないかな?」
まさか真新しい半袖の洋服をもらえるなんて思っていなかった。
あまりに突然のことで頭がついていけてないけれど、夏彦さんが私のために用意してくれたことは分かる。
「ありがとうございます。早速着てみます」
「ボタンの留め方とか、困ったことがあったら言ってね」
「は、はい」
夏彦さんに教えてもらったとおり着てみると、思っているよりずっと簡単に着られた。
「あ、あの、着替えました」
「ああ、お嬢ちゃん。…似合ってるな」
「ありがとうございます」
秋久さんに似合っていると言ってもらえるのはすごく嬉しい。
どうしてこんなことを考えてしまうのかは分からないけれど、もっと見て褒めてほしいと考えた。
勿論本人には言えないけれど、ちゃんと気持ちを伝えられなかったと後悔することにはならないように気をつけようと思う。
「流石だな」
秋久さんが夏彦さんにそう声をかけると、夏彦さんは照れているみたいだった。
「まあ、こっちを本業にしたかったくらいだし?もっと褒めてよアッキー」
「まだプリンが残ってるが、食べるか?」
「え、いいの!?ラッキー、いただきます」
夏彦さんが機嫌よくキッチンに向かったのを見て、秋久さんに声をかける。
「あの…」
「心配しなくても、あいつは自分なりの答えを出そうとしている。
何かあったときは俺が力になるから心配いらない」
彼の表情から読み取れたのは、何かしら覚悟を決めたことだけだった。
「ごちそうさまでした!ありがとうアッキー」
「ソースを作りすぎただけだから、礼を言われるようなことはしてない」
「月見ちゃんにもお礼を言わないとね」
「い、いえ…」
「そうだ、裁縫が得意なら今度店を手伝ってもらおうかな…。
あとは手のモデルもお願いしたいんだけど、詳しい話をしてもいい?」
「は、はい」
ふた言だけでは、何をすればいいのかよく分からない。
ただ、誰かの役に立てるなら頑張ってみよう。
「まず、裁縫についてなんだけど…もうすぐふたりの家に帰れるだろうから、そうなったら在宅ワークという形で雇用させてもらおうと思ってる」
「在宅ワークって、何をするんですか?」
「アッキーのハンカチ直したんだよね?そういうのを時間が空いてるときにやってほしいんだ。
あと、手のモデルっていうのはアクセサリー雑誌のことで…」
説明を聞いただけで楽しくなる。
もし全部片づいて、まだ秋久さんの役に立てるならやってみたい。
「是非お願いします」
「それじゃあ決まりだね!こちらこそよろしく」
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