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秋久ルート
第63話
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「月見」
「おかえりなさい」
秋久さんの無事な姿を見てほっとしたけれど、夏彦さんが一緒にいない理由が気になる。
考えているのもを察知されたのか、彼は優しく教えてくれた。
「おかげで夏彦を連れ帰れた。今は向こうの部屋でごってり絞られてるはずだ」
冬真さんの声が聞こえるけれど、何を話しているのかは分からない。
「秋久さんは大丈夫ですか?」
「特に疲れているわけでもないし、月見のおかげで走り回らずにすんだ。だから大丈夫だ。
協力してくれて本当に助かった。ありがとな」
そんな優しい言葉をかけられて、やっと役に立てたんだと実感する。
ただ、それならどうしてさっきから浮かない顔をしているんだろう。
「何か、問題ですか?」
「どうしてそう思うんだ?」
「なんとなく、表情が曇っているように見えるからです」
もしかすると不快に思わせてしまったかもしれない…不安になりながら顔を覗きこむと、秋久さんは困ったように笑った。
「すごいな月見は。なんでもお見通しみたいだ」
「私にお手伝いできることはありませんか?」
「まだ途中までしか読んでないからなんとも言えないが、もしかしたら手伝ってもらうことになるかもしれない」
「が、頑張ります」
何も分かっていない私にはこんなことしか言えない。
それでも秋久さんは、丁寧にありがとうと伝えてくれた。
「それじゃ、俺は一旦部屋に戻る。何かあったら声をかけてくれ」
「分かりました」
彼が部屋へ行ったのを確認して、すぐに冬真さんの声がした方へ向かう。
「だから、俺はあいつを追いたいんだって。情報もある程度は出てくるだろうし、誰かに危険が迫るような事態になるのは避けたいからね」
「そんなこと言って、本当は別の目的があるんだろ?そういうところ、分かりやすいんだよ」
「まー君冷たい…。俺はこれ以上何も言わないでおく。何を話しても信じてくれないだろうから」
ふたりが喧嘩している声が響いていたけれど、間に別の人が入った。
「なっちゃんの悪い癖だよ、そういうところ。冬真はなっちゃんのことが心配だから話を聞きたいって言ってるのに、その言い方はない」
花菜の一言に夏彦さんは黙りこんでしまったみたいだ。
冬真さんが言っていた別の目的って何だろう。
「ごめん。ちょっとかっとなってた」
「…僕も言いすぎた」
花菜のみんなを繋げる力はすごいと思う。
私ならきっと逃げ出してしまっていた。
「月見にも謝っておきなよ。帰ってこないんじゃないかって心配してたから」
「月見ちゃんが?やっぱりあの子優しいんだね。今度何か服を用意しておこうかな」
たまたま自分の話題を聞いてしまうなんて、ものすごく恥ずかしい。
ただ、声だけだと夏彦さんが考えていることを知るのは無理そうだ。
ゆっくりお茶を淹れていると、甘栗が走ってきた。
「おかえりなさい」
秋久さんの無事な姿を見てほっとしたけれど、夏彦さんが一緒にいない理由が気になる。
考えているのもを察知されたのか、彼は優しく教えてくれた。
「おかげで夏彦を連れ帰れた。今は向こうの部屋でごってり絞られてるはずだ」
冬真さんの声が聞こえるけれど、何を話しているのかは分からない。
「秋久さんは大丈夫ですか?」
「特に疲れているわけでもないし、月見のおかげで走り回らずにすんだ。だから大丈夫だ。
協力してくれて本当に助かった。ありがとな」
そんな優しい言葉をかけられて、やっと役に立てたんだと実感する。
ただ、それならどうしてさっきから浮かない顔をしているんだろう。
「何か、問題ですか?」
「どうしてそう思うんだ?」
「なんとなく、表情が曇っているように見えるからです」
もしかすると不快に思わせてしまったかもしれない…不安になりながら顔を覗きこむと、秋久さんは困ったように笑った。
「すごいな月見は。なんでもお見通しみたいだ」
「私にお手伝いできることはありませんか?」
「まだ途中までしか読んでないからなんとも言えないが、もしかしたら手伝ってもらうことになるかもしれない」
「が、頑張ります」
何も分かっていない私にはこんなことしか言えない。
それでも秋久さんは、丁寧にありがとうと伝えてくれた。
「それじゃ、俺は一旦部屋に戻る。何かあったら声をかけてくれ」
「分かりました」
彼が部屋へ行ったのを確認して、すぐに冬真さんの声がした方へ向かう。
「だから、俺はあいつを追いたいんだって。情報もある程度は出てくるだろうし、誰かに危険が迫るような事態になるのは避けたいからね」
「そんなこと言って、本当は別の目的があるんだろ?そういうところ、分かりやすいんだよ」
「まー君冷たい…。俺はこれ以上何も言わないでおく。何を話しても信じてくれないだろうから」
ふたりが喧嘩している声が響いていたけれど、間に別の人が入った。
「なっちゃんの悪い癖だよ、そういうところ。冬真はなっちゃんのことが心配だから話を聞きたいって言ってるのに、その言い方はない」
花菜の一言に夏彦さんは黙りこんでしまったみたいだ。
冬真さんが言っていた別の目的って何だろう。
「ごめん。ちょっとかっとなってた」
「…僕も言いすぎた」
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私ならきっと逃げ出してしまっていた。
「月見にも謝っておきなよ。帰ってこないんじゃないかって心配してたから」
「月見ちゃんが?やっぱりあの子優しいんだね。今度何か服を用意しておこうかな」
たまたま自分の話題を聞いてしまうなんて、ものすごく恥ずかしい。
ただ、声だけだと夏彦さんが考えていることを知るのは無理そうだ。
ゆっくりお茶を淹れていると、甘栗が走ってきた。
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