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秋久ルート
第60話
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秋久さんが、復讐…?
それは違うと否定したかったけれど、本当にそう言い切ってしまっていいのか戸惑った。
ただ、秋久さんが隠し事をしていたようには思えない。
「月見、入るぞ」
手紙に夢中になっていたせいか全然気づいていなくて、はっとしたときにはもう遅かった。
秋久さんの手には私が読んでいた手紙が握られている。
「カルナの奴、余計なことを」
「心配、だったんだと思います。私も心配です」
「そんなふうに思う必要はない。少なくとも、俺は復讐なんて考えてない」
優しく頭を撫でられたけれど、今はそれだけじゃ安心できない。
「本当、ですか?私は夏彦さんのお兄さんのことや事件のことを詳しく知っているわけではありません。
でも、それだけ危険な相手ならもっと他の人たちにも協力を…」
「これは俺のけじめだ。それを誰かに投げるような真似はしたくない」
彼の言葉は本心だ。
ただ、それならせめてもう少し知りたい。
「…事件のこと、教えてもらえませんか?」
「あんまり細かくは言わないって前に話さなかったか?」
「今は知りたいんです。お願いします」
秋久さんをじっと見つめると、深呼吸をしてから話してくれた。
「まず、夏樹が死んだ事件は事故として処理されている。事実が世間に露見すればどうなるか分からないってところだろうな」
「人がひとり亡くなっているのに、ですか?」
「それより評判を気にする奴等もいるってことだ。そういう人間が減ってくれればありがたいんだけどな。
…夏樹は蔡原本家の意思に背いた為に殺された。あの家が暗殺を生業としていたことはカルナが教えたんだろう?」
首を縦にふるのとほぼ同時に彼の言葉は続けられた。
「夏樹は人殺しをしたくなかったんだ。そして、夏彦にも手を汚させたくなかった。
あいつとは夏彦を逃がそうって話をしてたところだったんだ。道具や金を集めてからにしないと苦労させるからって、いつも残業していた」
秋久さんの目はとても寂しそうで、今にも泣き出しそうな色をしている。
「『そろそろ計画を実行しよう』…それが最後にまともに話した言葉だった」
「その後殺されてしまったんですか?」
「ああ。突然電話がかかってきて、出たときにはもう遅かった。
『自分にできなかったことをしてほしい。弟を救ってくれ』…助けてほしいじゃなくて、そんなことを言ってきたんだ。
その後探したが、見つかったのはもう冷たくなってる夏樹だけだった」
秋久さん表情には悔しさが滲んでいる。
何か声をかけようと口を開けた瞬間、テーブルに置いてあった砂時計が倒れて砂が止まった。
それは違うと否定したかったけれど、本当にそう言い切ってしまっていいのか戸惑った。
ただ、秋久さんが隠し事をしていたようには思えない。
「月見、入るぞ」
手紙に夢中になっていたせいか全然気づいていなくて、はっとしたときにはもう遅かった。
秋久さんの手には私が読んでいた手紙が握られている。
「カルナの奴、余計なことを」
「心配、だったんだと思います。私も心配です」
「そんなふうに思う必要はない。少なくとも、俺は復讐なんて考えてない」
優しく頭を撫でられたけれど、今はそれだけじゃ安心できない。
「本当、ですか?私は夏彦さんのお兄さんのことや事件のことを詳しく知っているわけではありません。
でも、それだけ危険な相手ならもっと他の人たちにも協力を…」
「これは俺のけじめだ。それを誰かに投げるような真似はしたくない」
彼の言葉は本心だ。
ただ、それならせめてもう少し知りたい。
「…事件のこと、教えてもらえませんか?」
「あんまり細かくは言わないって前に話さなかったか?」
「今は知りたいんです。お願いします」
秋久さんをじっと見つめると、深呼吸をしてから話してくれた。
「まず、夏樹が死んだ事件は事故として処理されている。事実が世間に露見すればどうなるか分からないってところだろうな」
「人がひとり亡くなっているのに、ですか?」
「それより評判を気にする奴等もいるってことだ。そういう人間が減ってくれればありがたいんだけどな。
…夏樹は蔡原本家の意思に背いた為に殺された。あの家が暗殺を生業としていたことはカルナが教えたんだろう?」
首を縦にふるのとほぼ同時に彼の言葉は続けられた。
「夏樹は人殺しをしたくなかったんだ。そして、夏彦にも手を汚させたくなかった。
あいつとは夏彦を逃がそうって話をしてたところだったんだ。道具や金を集めてからにしないと苦労させるからって、いつも残業していた」
秋久さんの目はとても寂しそうで、今にも泣き出しそうな色をしている。
「『そろそろ計画を実行しよう』…それが最後にまともに話した言葉だった」
「その後殺されてしまったんですか?」
「ああ。突然電話がかかってきて、出たときにはもう遅かった。
『自分にできなかったことをしてほしい。弟を救ってくれ』…助けてほしいじゃなくて、そんなことを言ってきたんだ。
その後探したが、見つかったのはもう冷たくなってる夏樹だけだった」
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何か声をかけようと口を開けた瞬間、テーブルに置いてあった砂時計が倒れて砂が止まった。
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