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秋久ルート
第51話
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「解けそうか?」
「ごめんなさい。あと少しなんですが…」
何かが絡まっているのか上手くできない。
ただ、急いでやると蕀さんが傷ついてしまう。
だからといってゆっくりやりすぎると、血が足りなくなって倒れてしまいそうだ。
「…あ、できました」
「そりゃよかった」
私の手からぽたぽたと落ちる血を見て、秋久さんは眉をひそめる。
「ごめんなさい。汚いですよね…」
「いや、そういうつもりじゃない。護られてばっかりだな、と考えてただけだ」
「逆、だと思います。私が秋久さんに護られてばかりなんです」
「月見の手は痛そうだ」
痛そうだったから心配してくれているんだ…そのことに気づいた私は、ますます申し訳なくなる。
私の力不足が招いた結果だ。
「反省します。蕀さんたちに上手くお願いできなくて、ぐちゃぐちゃになってしまったんです」
「そうだったのか。いつもお願いしたとおりに動いているのか?」
「基本的には、上手く伝わってくれることが多いです」
怖かったからかもしれない。
失敗したら誰かが怪我をするかもしれない、秋久さんを助けられないかもしれないって考えると震えが止まらなかった。
「もしかすると、一気に沢山の司令を出したからかもしれないな」
「沢山の司令、ですか?」
「ああ。人間だって、1度にあれもこれもって欲張ってやろうとすると何かしら抜けるだろ?
それはおまえの蕀でも一緒なんじゃないかと思ったんだ」
そうかもしれない。
誰かを護りたい、傷つけたくない、人の気配を探してほしい…これだけいっぱいやると混乱する。
「沢山お願いするのは初めてだったので、上手くいかなかったのかもしれません」
「初めてだったのか?」
「はい。いつもは周りを見ていてとか、何か武器になるものをとか…ひとつだけお願いしていたんです」
秋久さんはそんな私をもう1度抱きしめてくれた。
「やっぱり苦労してきたんだな」
「そ、そんなこと、ないです。こんなふうに誰かに助けてもらえたことなんてありませんでしたから」
私はいい人たちに見つけてもらえたからここにいられる。
もしあの日拾ってくれたのが春人さんたちじゃなかったら、今頃ここにいなかった。
「…そうだ、取り敢えず応急処置をしておこう」
「ありがとうございます」
手に巻かれたガーゼを見つめながらお礼を言う。
秋久さんは手当てをするのが上手だ。
「あの…」
「どうした?」
「私にも、巻き方を教えてほしいです」
応急処置を覚えておいたら、少しは役にたてるかもしれない。
「分かった。また今度な」
彼の表情が穏やかになったのを見て安心する。
そのまま話していると、夜道から誰かが現れた。
「…捕まえるのはこいつらでいいの?」
「おまえら…悪い、助かる」
暗闇から現れたのは冬真さんたちだった。
「ごめんなさい。あと少しなんですが…」
何かが絡まっているのか上手くできない。
ただ、急いでやると蕀さんが傷ついてしまう。
だからといってゆっくりやりすぎると、血が足りなくなって倒れてしまいそうだ。
「…あ、できました」
「そりゃよかった」
私の手からぽたぽたと落ちる血を見て、秋久さんは眉をひそめる。
「ごめんなさい。汚いですよね…」
「いや、そういうつもりじゃない。護られてばっかりだな、と考えてただけだ」
「逆、だと思います。私が秋久さんに護られてばかりなんです」
「月見の手は痛そうだ」
痛そうだったから心配してくれているんだ…そのことに気づいた私は、ますます申し訳なくなる。
私の力不足が招いた結果だ。
「反省します。蕀さんたちに上手くお願いできなくて、ぐちゃぐちゃになってしまったんです」
「そうだったのか。いつもお願いしたとおりに動いているのか?」
「基本的には、上手く伝わってくれることが多いです」
怖かったからかもしれない。
失敗したら誰かが怪我をするかもしれない、秋久さんを助けられないかもしれないって考えると震えが止まらなかった。
「もしかすると、一気に沢山の司令を出したからかもしれないな」
「沢山の司令、ですか?」
「ああ。人間だって、1度にあれもこれもって欲張ってやろうとすると何かしら抜けるだろ?
それはおまえの蕀でも一緒なんじゃないかと思ったんだ」
そうかもしれない。
誰かを護りたい、傷つけたくない、人の気配を探してほしい…これだけいっぱいやると混乱する。
「沢山お願いするのは初めてだったので、上手くいかなかったのかもしれません」
「初めてだったのか?」
「はい。いつもは周りを見ていてとか、何か武器になるものをとか…ひとつだけお願いしていたんです」
秋久さんはそんな私をもう1度抱きしめてくれた。
「やっぱり苦労してきたんだな」
「そ、そんなこと、ないです。こんなふうに誰かに助けてもらえたことなんてありませんでしたから」
私はいい人たちに見つけてもらえたからここにいられる。
もしあの日拾ってくれたのが春人さんたちじゃなかったら、今頃ここにいなかった。
「…そうだ、取り敢えず応急処置をしておこう」
「ありがとうございます」
手に巻かれたガーゼを見つめながらお礼を言う。
秋久さんは手当てをするのが上手だ。
「あの…」
「どうした?」
「私にも、巻き方を教えてほしいです」
応急処置を覚えておいたら、少しは役にたてるかもしれない。
「分かった。また今度な」
彼の表情が穏やかになったのを見て安心する。
そのまま話していると、夜道から誰かが現れた。
「…捕まえるのはこいつらでいいの?」
「おまえら…悪い、助かる」
暗闇から現れたのは冬真さんたちだった。
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