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冬真ルート
第46話
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「ねえ、蕀姫」
「は、はい」
治療を受けた冬香さんは、冬真が離れている間に話しかけられる。
それが嫌というわけではないけれど、やっぱりふたりに距離があるような気がして悲しい。
「そんな顔しないで。君は何も悪いことなんてしてないから。それに、君のおかげで今こうして冬真と顔を合わせられる。
僕だけじゃ、こんなふうに一緒に過ごすことなんてできなかった。だから…ありがとう、蕀姫」
冬香さんの笑顔は少し悲しそうに見える。
どうしてそんな顔をするのかはなんとなく分かっているけれど、どうしてふたりの距離はこんなにひらいてしまったんだろう。
「そうだ、蕀姫にいいものをあげる」
「私に、ですか?」
「うん。君に受け取ってほしいんだ。最近作ったものなんだけど、僕が持っていても仕方ないからね」
それは、花の形をした髪飾りのようなものだった。
「ありがとうございます」
「喜んでもらえてよかった。ねえ、君は──」
「いつまで彼女の手を握ってるの?」
近づいてきた冬真の声は冷たくて、私の体をぐっと引き寄せた。
「あ、あの…私は、嫌なことをされているわけではないので…。だから、もう少し冬香さんと話をしてほしいです」
「君は本当に人のことばかりだね。だけど、情報を話してもらう必要があるからそれだけは聞いてあげる」
「ありがとう」
冬真に向けられる冬香さんの笑顔はやっぱり優しくて、嫌っているようには見えない。
それなら、冬真が何かを誤解していると考えるのが自然だ。
「ラムネ屋たちが探していたのは僕じゃない」
「どういう意味?」
「よく分からなかったけどそれだけは分かる。…しばらく大学には近づかない方がいい」
「休めってこと?」
「それは冬真が決めていいことだよ」
ふたりの間にはぴりぴりしたものがはしっていて、見ているだけで辛くなる。
本当は目を背けたかったけれど、それだけはしてはいけないような気がした。
「…また明日包帯を換えに来る」
「ありがとう。またね、蕀姫」
ひらひらと手をふってはいるものの、怪我が痛むのかいつもより笑顔が固い。
冬真に手をひかれて歩いたけれど、どうしてもふたりのことが気になった。
「君も包帯、換えないといけないでしょ?」
「は、はい。お願いします」
冬真は優しい声で話してくれたけれど、冬香さんのことは一切口にしなかった。
話したくないことを無理矢理話させるようなことはしたくない。
ただ、私ひとりでできることには限界がある。
「あの…」
「ごめん。僕はあいつと話すときどうしてもああなるんだ。…どんな相手でももう死んでいくのは見たくないから頑張るけど」
それでも、動けそうにないからと冬香さんの所まで通うということは完全に嫌いなわけではないのかもしれない。
いつか何があったのか教えてもらえるだろうか。
「は、はい」
治療を受けた冬香さんは、冬真が離れている間に話しかけられる。
それが嫌というわけではないけれど、やっぱりふたりに距離があるような気がして悲しい。
「そんな顔しないで。君は何も悪いことなんてしてないから。それに、君のおかげで今こうして冬真と顔を合わせられる。
僕だけじゃ、こんなふうに一緒に過ごすことなんてできなかった。だから…ありがとう、蕀姫」
冬香さんの笑顔は少し悲しそうに見える。
どうしてそんな顔をするのかはなんとなく分かっているけれど、どうしてふたりの距離はこんなにひらいてしまったんだろう。
「そうだ、蕀姫にいいものをあげる」
「私に、ですか?」
「うん。君に受け取ってほしいんだ。最近作ったものなんだけど、僕が持っていても仕方ないからね」
それは、花の形をした髪飾りのようなものだった。
「ありがとうございます」
「喜んでもらえてよかった。ねえ、君は──」
「いつまで彼女の手を握ってるの?」
近づいてきた冬真の声は冷たくて、私の体をぐっと引き寄せた。
「あ、あの…私は、嫌なことをされているわけではないので…。だから、もう少し冬香さんと話をしてほしいです」
「君は本当に人のことばかりだね。だけど、情報を話してもらう必要があるからそれだけは聞いてあげる」
「ありがとう」
冬真に向けられる冬香さんの笑顔はやっぱり優しくて、嫌っているようには見えない。
それなら、冬真が何かを誤解していると考えるのが自然だ。
「ラムネ屋たちが探していたのは僕じゃない」
「どういう意味?」
「よく分からなかったけどそれだけは分かる。…しばらく大学には近づかない方がいい」
「休めってこと?」
「それは冬真が決めていいことだよ」
ふたりの間にはぴりぴりしたものがはしっていて、見ているだけで辛くなる。
本当は目を背けたかったけれど、それだけはしてはいけないような気がした。
「…また明日包帯を換えに来る」
「ありがとう。またね、蕀姫」
ひらひらと手をふってはいるものの、怪我が痛むのかいつもより笑顔が固い。
冬真に手をひかれて歩いたけれど、どうしてもふたりのことが気になった。
「君も包帯、換えないといけないでしょ?」
「は、はい。お願いします」
冬真は優しい声で話してくれたけれど、冬香さんのことは一切口にしなかった。
話したくないことを無理矢理話させるようなことはしたくない。
ただ、私ひとりでできることには限界がある。
「あの…」
「ごめん。僕はあいつと話すときどうしてもああなるんだ。…どんな相手でももう死んでいくのは見たくないから頑張るけど」
それでも、動けそうにないからと冬香さんの所まで通うということは完全に嫌いなわけではないのかもしれない。
いつか何があったのか教えてもらえるだろうか。
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