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秋久ルート
第49話
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「悪い。落ち着いたか?」
「はい…本当にすみませんでした」
私の顔はきっとひどいものだ。それを隠そうとしていると、秋久さんがパーカーを優しくかけてくれた。
「顔を見られたくないならこれで隠していればいい」
「ありがとうございます」
そのまま秋久さんに付き添われて部屋を出る。
すると、前から驚いたような声がした。
「え、先輩が泣かせたんですか?」
「あんまりやかましく言うつもりなら、組手の練習につきあってもらうからな」
「そ、それはご勘弁を…」
声を聞いているだけで安心する。
なんだか足元がふわふわしていて、真っ直ぐ歩けていないような気がした。
「花菜、悪いがしばらく任せる」
「分かりました!…月見、またね」
私は取り敢えず一礼したけれど、その後すぐ体が軽くなった。
「あ、秋久さん」
「駄目だ。今おろしたら無理して歩くつもりだろ」
本当に彼には何でもお見通しらしい。
抱きかかえられてされるがままになっていると、後ろから誰かがやってきた。
「…舌を噛まないように気をつけてくれ」
「あの…?」
訳が分からず首を傾げたけれど、それはすぐに理解することになる。
「怖かったら目を閉じてな」
「は、はい」
首の後ろに回した腕に少し力を入れる。
目を閉じていると、小さく呻く声が聞こえた。
ただ、それ以外は私が知っている外の世界とそんなに変わらない。
「もう開けていいぞ」
「あ、ありがとうございます」
そこには倒されたであろう人たちが山になっている。
「もう少しゆっくり帰るつもりだったんだが…次から道を変える」
彼の言葉はどうしてか安心できる。
しばらく心地いい沈黙が続いたところで、1歩また1歩と近づいてくる人の姿が確認できた。
「私がお相手しましょう。…ディアボロの名にかけて、遊び相手は大歓迎ですから」
その人の後ろからも何人か来ていて、危ないから逃げた方がいいと体が悲鳴をあげた。
相手の人たちがみんなディアボロの人…そうだとすると、流石に数が多すぎる。
秋久さんひとりでどうにかできる数には見えない。
「今だけでいいので、おろしてください」
「…いや、このまま突っ切る」
「もしそれで秋久さんが体を壊したら、悔やんでも悔やみきれません」
彼は少し驚いた顔をしていたけれど、やがてふっと笑って頭を撫でてくれた。
「心配しなくても、俺はそこまでやわじゃない。それに、ここでおまえをおろした方がきっと後悔する」
彼はそう話すと、さっきより速く走りはじめた。
もしかすると目を開けているからかもしれないけれど、私の体はそう感じている。
本当は怖くて目を逸したい。ただ、そうしたらいけない気がして目を開けていた。
「このまま逃げるぞ」
「はい…本当にすみませんでした」
私の顔はきっとひどいものだ。それを隠そうとしていると、秋久さんがパーカーを優しくかけてくれた。
「顔を見られたくないならこれで隠していればいい」
「ありがとうございます」
そのまま秋久さんに付き添われて部屋を出る。
すると、前から驚いたような声がした。
「え、先輩が泣かせたんですか?」
「あんまりやかましく言うつもりなら、組手の練習につきあってもらうからな」
「そ、それはご勘弁を…」
声を聞いているだけで安心する。
なんだか足元がふわふわしていて、真っ直ぐ歩けていないような気がした。
「花菜、悪いがしばらく任せる」
「分かりました!…月見、またね」
私は取り敢えず一礼したけれど、その後すぐ体が軽くなった。
「あ、秋久さん」
「駄目だ。今おろしたら無理して歩くつもりだろ」
本当に彼には何でもお見通しらしい。
抱きかかえられてされるがままになっていると、後ろから誰かがやってきた。
「…舌を噛まないように気をつけてくれ」
「あの…?」
訳が分からず首を傾げたけれど、それはすぐに理解することになる。
「怖かったら目を閉じてな」
「は、はい」
首の後ろに回した腕に少し力を入れる。
目を閉じていると、小さく呻く声が聞こえた。
ただ、それ以外は私が知っている外の世界とそんなに変わらない。
「もう開けていいぞ」
「あ、ありがとうございます」
そこには倒されたであろう人たちが山になっている。
「もう少しゆっくり帰るつもりだったんだが…次から道を変える」
彼の言葉はどうしてか安心できる。
しばらく心地いい沈黙が続いたところで、1歩また1歩と近づいてくる人の姿が確認できた。
「私がお相手しましょう。…ディアボロの名にかけて、遊び相手は大歓迎ですから」
その人の後ろからも何人か来ていて、危ないから逃げた方がいいと体が悲鳴をあげた。
相手の人たちがみんなディアボロの人…そうだとすると、流石に数が多すぎる。
秋久さんひとりでどうにかできる数には見えない。
「今だけでいいので、おろしてください」
「…いや、このまま突っ切る」
「もしそれで秋久さんが体を壊したら、悔やんでも悔やみきれません」
彼は少し驚いた顔をしていたけれど、やがてふっと笑って頭を撫でてくれた。
「心配しなくても、俺はそこまでやわじゃない。それに、ここでおまえをおろした方がきっと後悔する」
彼はそう話すと、さっきより速く走りはじめた。
もしかすると目を開けているからかもしれないけれど、私の体はそう感じている。
本当は怖くて目を逸したい。ただ、そうしたらいけない気がして目を開けていた。
「このまま逃げるぞ」
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