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冬真ルート
第29話
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「あ、あの、足に何か手紙がつけられているみたいなのですが…」
スノウの左足に何か紙がくくりつけられている。
冬真に話しかけると、すぐに確認して深刻そうな顔をした。
「何かあったのか、先生?」
「だから呼び方…春人さんから、至急依頼受付用サイトを確認してほしいって。
ただの不具合じゃなさそうだから、結構時間がかかるかもしれない」
「ウイルス系か?」
話を聞いた秋久さんが見たことがない機械を使って何かやりはじめる。
どうしようか戸惑っていると、冬真がスノウを見ていてほしいと言ってくれた。
「ごめん。料理はまた今度」
「は、はい」
スノウの足元を見ると、さっきまで紙がくくりつけられていた足ではない方が赤くなっていた。
とにかく何か処置はしておいた方がいいだろうと、冬真に貸してもらった薬にできる雑草の本を読む。
「──お願い、蕀さんたち」
出てくるかどうかは賭けだったけれど、なんとか上手く葉の部分が出てきてくれた。
「…これなら私も使ったことがあるので、多分スノウでも大丈夫だと思います」
残りの蔦は窓から外に向かって伸ばし、そのまま外の様子を探ることにした。
少し手のひらが痛いけれど、そんなことを言っている場合じゃない。
スノウは近くで大人しくとまっていてくれて、なんとか応急処置は終わらせた。
「痛くないですか?」
葉を押し当てるようにしてしまったので痛いんじゃないかと思っていたけれど、元気に鳴く姿はいつもどおりで安心した。
「…入ってもいい?」
「は、はい」
扉が開いてすぐ冬真は何か言おうとしていたものの、私の手を見て息を吐く。
「君、もしかしてまた何かしたの?」
「いえ、その…」
「スノウ、怪我してたんだ。ごめん、僕が気づいていればすぐ手当てできたのに」
「私の方こそ、勝手なことをしてごめんなさい」
「それより君の手当てさせて」
やっぱり見抜く力が強いのか、すぐ言い当てられてしまった。
「ごめんなさい」
「君が謝る必要なんてない。…僕の方こそ、いきなり仕事になってごめん」
「私は大丈夫です。ただ、冬真は休めているんですか…?」
驚いた様子で黙ってしまった冬真を見つめていると、小さく一言呟いた。
「…そんなこと訊かれたの、秋久さん以外で初めてかもしれない」
「そうなんですか?」
「うん。そういうのあんまり言われたことないし、言われなれてない」
「少し意外です。表情に出さないようにしているから、でしょうか?」
「君は僕のことを見抜くのが上手だよね。あんまり人にばれたことなかったのに」
冬真は苦笑いしながら手に包帯を巻いてくれた。
その後彼の表情が少し曇った気がしたけれど、一瞬だったので自信がない。
結局そのまま何も訊けないまま部屋を出てしまった。
スノウの左足に何か紙がくくりつけられている。
冬真に話しかけると、すぐに確認して深刻そうな顔をした。
「何かあったのか、先生?」
「だから呼び方…春人さんから、至急依頼受付用サイトを確認してほしいって。
ただの不具合じゃなさそうだから、結構時間がかかるかもしれない」
「ウイルス系か?」
話を聞いた秋久さんが見たことがない機械を使って何かやりはじめる。
どうしようか戸惑っていると、冬真がスノウを見ていてほしいと言ってくれた。
「ごめん。料理はまた今度」
「は、はい」
スノウの足元を見ると、さっきまで紙がくくりつけられていた足ではない方が赤くなっていた。
とにかく何か処置はしておいた方がいいだろうと、冬真に貸してもらった薬にできる雑草の本を読む。
「──お願い、蕀さんたち」
出てくるかどうかは賭けだったけれど、なんとか上手く葉の部分が出てきてくれた。
「…これなら私も使ったことがあるので、多分スノウでも大丈夫だと思います」
残りの蔦は窓から外に向かって伸ばし、そのまま外の様子を探ることにした。
少し手のひらが痛いけれど、そんなことを言っている場合じゃない。
スノウは近くで大人しくとまっていてくれて、なんとか応急処置は終わらせた。
「痛くないですか?」
葉を押し当てるようにしてしまったので痛いんじゃないかと思っていたけれど、元気に鳴く姿はいつもどおりで安心した。
「…入ってもいい?」
「は、はい」
扉が開いてすぐ冬真は何か言おうとしていたものの、私の手を見て息を吐く。
「君、もしかしてまた何かしたの?」
「いえ、その…」
「スノウ、怪我してたんだ。ごめん、僕が気づいていればすぐ手当てできたのに」
「私の方こそ、勝手なことをしてごめんなさい」
「それより君の手当てさせて」
やっぱり見抜く力が強いのか、すぐ言い当てられてしまった。
「ごめんなさい」
「君が謝る必要なんてない。…僕の方こそ、いきなり仕事になってごめん」
「私は大丈夫です。ただ、冬真は休めているんですか…?」
驚いた様子で黙ってしまった冬真を見つめていると、小さく一言呟いた。
「…そんなこと訊かれたの、秋久さん以外で初めてかもしれない」
「そうなんですか?」
「うん。そういうのあんまり言われたことないし、言われなれてない」
「少し意外です。表情に出さないようにしているから、でしょうか?」
「君は僕のことを見抜くのが上手だよね。あんまり人にばれたことなかったのに」
冬真は苦笑いしながら手に包帯を巻いてくれた。
その後彼の表情が少し曇った気がしたけれど、一瞬だったので自信がない。
結局そのまま何も訊けないまま部屋を出てしまった。
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