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イベントもの
うちの可愛い…(猫の日)
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「月見ちゃん、こっち手伝ってもらっていい?」
「は、はい…」
恋人同士になってからの生活は、とても甘く…なんていうほど大きな変化はなかった。
ただ、月見ちゃんが出会った頃より緊張せずに話してくれるのが嬉しい。
それに、今はもうひとり家族がいる。
「ソルト、それだけは勘弁して…。大事な書類だから、それなくすとアッキーに怒られる!」
ソルトはやんちゃになってきて、時々こうして悪戯を仕掛けてくるようになった。
ただ、なんだかんだ言って仲良く暮らせていることに変わりはない。
「相変わらず君は散歩が好きだよね…。今日はアッキーのところに寄った帰りに連れて行ってあげるから、それまではここで大人しくしててね」
キャリーで移動するのにも慣れてきたのか、あまり嫌がらなくなった気がする。
「さて、俺たちも行こうか」
「はい。あの、夏彦…」
荷物を持とうと思ってくれたのか、それともこうしたいと思ってくれたのか。
どのみち、自分から言えない俺にとっては好都合だ。
「月見ちゃんはこっちね」
「ありがとうございます。ですが、荷物も少し持っていいですか?」
「勿論!大事に運んでくれるから、いつも助かってるよ」
手を繋いでいるところをハルに見られたら茶化されそうだが、なんとなくそれでもいい気がする。
彼女と手を繋げるのは、俺だけがいいから。
「ごめん。まさかあんなに花菜がはしゃぐとは…」
「とても楽しかったです。花菜は、すごくいい人なので…お洋服もお願いしてもらえて嬉しかったです」
捜査官の服を作るなんてなかなかない機会なはずなのに、月見ちゃんはいつも完璧に仕上げてくれる。
しかも納期の1週間以上前に進捗状況を知らせてくれるからありがたい。
ふたりで手を繋いで歩いていると彼女が転びそうになる。
「…っと、大丈夫だった?」
「は、はい。ありがとうございます」
抱きしめるような姿勢になりながら持っているリードの先に目をやると、何食わぬ顔でソルトがこちらを見ていた。
「いきなり離れると危ないでしょ?ソルトさん、もうちょっとこっちに来てくれない?」
また離れられると思っていたけど、にゃあにゃあ鳴いてこちらにすり寄ってきた。
「君は本当にやんちゃだね…。まあ、元気があるのはいいことだけど」
そういえば、月見ちゃんを抱きしめたままだった。
離そうとしたものの、そのまま彼女を横抱きにする。
「な、夏彦…」
「そんなに照れなくてもいいのに。足、まだ痛むんでしょ?だったら無理しないで、そのまま俺に身を預けてて」
「ありがとう、ございます…」
それが不満だったのか、ソルトはしっぽをさげたままその場に座りこむ。
「分かった。ソルトのこともこうしてあげるから、そんなに拗ねないで」
横抱きにした月見ちゃんの片腕におさまる白猫は満足げにひと鳴きする。
俺の周りがこんなに彩づくなんて思っていなかった。
こんなに可愛いものばかりで溢れるなんて、自分でも予測しきれてなかったんだ。
ただ今が幸せで、愛しくて、手放したくなくて。
これから先も、こんな感情に振り回されながら楽しく過ごせるんだろう。
確約はなくても、その感覚だけで充分だった。
「は、はい…」
恋人同士になってからの生活は、とても甘く…なんていうほど大きな変化はなかった。
ただ、月見ちゃんが出会った頃より緊張せずに話してくれるのが嬉しい。
それに、今はもうひとり家族がいる。
「ソルト、それだけは勘弁して…。大事な書類だから、それなくすとアッキーに怒られる!」
ソルトはやんちゃになってきて、時々こうして悪戯を仕掛けてくるようになった。
ただ、なんだかんだ言って仲良く暮らせていることに変わりはない。
「相変わらず君は散歩が好きだよね…。今日はアッキーのところに寄った帰りに連れて行ってあげるから、それまではここで大人しくしててね」
キャリーで移動するのにも慣れてきたのか、あまり嫌がらなくなった気がする。
「さて、俺たちも行こうか」
「はい。あの、夏彦…」
荷物を持とうと思ってくれたのか、それともこうしたいと思ってくれたのか。
どのみち、自分から言えない俺にとっては好都合だ。
「月見ちゃんはこっちね」
「ありがとうございます。ですが、荷物も少し持っていいですか?」
「勿論!大事に運んでくれるから、いつも助かってるよ」
手を繋いでいるところをハルに見られたら茶化されそうだが、なんとなくそれでもいい気がする。
彼女と手を繋げるのは、俺だけがいいから。
「ごめん。まさかあんなに花菜がはしゃぐとは…」
「とても楽しかったです。花菜は、すごくいい人なので…お洋服もお願いしてもらえて嬉しかったです」
捜査官の服を作るなんてなかなかない機会なはずなのに、月見ちゃんはいつも完璧に仕上げてくれる。
しかも納期の1週間以上前に進捗状況を知らせてくれるからありがたい。
ふたりで手を繋いで歩いていると彼女が転びそうになる。
「…っと、大丈夫だった?」
「は、はい。ありがとうございます」
抱きしめるような姿勢になりながら持っているリードの先に目をやると、何食わぬ顔でソルトがこちらを見ていた。
「いきなり離れると危ないでしょ?ソルトさん、もうちょっとこっちに来てくれない?」
また離れられると思っていたけど、にゃあにゃあ鳴いてこちらにすり寄ってきた。
「君は本当にやんちゃだね…。まあ、元気があるのはいいことだけど」
そういえば、月見ちゃんを抱きしめたままだった。
離そうとしたものの、そのまま彼女を横抱きにする。
「な、夏彦…」
「そんなに照れなくてもいいのに。足、まだ痛むんでしょ?だったら無理しないで、そのまま俺に身を預けてて」
「ありがとう、ございます…」
それが不満だったのか、ソルトはしっぽをさげたままその場に座りこむ。
「分かった。ソルトのこともこうしてあげるから、そんなに拗ねないで」
横抱きにした月見ちゃんの片腕におさまる白猫は満足げにひと鳴きする。
俺の周りがこんなに彩づくなんて思っていなかった。
こんなに可愛いものばかりで溢れるなんて、自分でも予測しきれてなかったんだ。
ただ今が幸せで、愛しくて、手放したくなくて。
これから先も、こんな感情に振り回されながら楽しく過ごせるんだろう。
確約はなくても、その感覚だけで充分だった。
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