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冬真ルート
第12話
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冬真さんの声にはなんだかすごく大きな感情が滲んでいて、体が固まっていくのを感じながら声をあげる。
「ごめんなさい。忘れ物をしていたので、なんとかあのふたりに届けられないかと思って…」
「…そう」
しばらく沈黙が流れて、やっぱりこの人は怒っているんだと震えてしまいそうになる。
今すぐこの場から離れたい…そんなことを考えていると、どんどん距離を詰められた。
「あ、あの…」
「そのまま動かないで」
その場で足から崩れ落ちそうになったのを、何も言わずに支えてくれた。
「僕の仕事には危険がつきものなんだ。だから、次はこんなところに来ちゃ駄目」
「ごめんなさい」
「謝られても嬉しくないんだけど。だけどまあ、その…忘れ物を届けてもらえたのは助かった。
あの子にとって、絶対に手放したくないくらい大事なものだったみたいだから」
冬真さんの目は真剣そのもので、逸らしてはいけないような気がする。
そのまま見つめ返すと、彼に少し困った表情を向けられた。
「君は変なところで勇気があるというか、変わってるというか…。そういえば、どうしてこの男は倒れてるの?」
「さっき、知らない人が助けてくれたんです。いつの間にかいなくなってしまって…」
「そう。早く行こう」
「は、はい」
なんとか隠し通せた蔦をよく見ると、棘に手書きのメモ用紙が刺されていた。
《自己紹介できなかったけど、どうか黙っていてほしい。
僕は手品師。いつかまた会えたら、そのときは再び名乗らせてもらうことにするよ。さっき見たもののタネも知りたいしね》
それが蕀さんたちのことを指しているのは明らかで、申し訳なく思いながら冬真さんには見えないようにポケットに入れる。
しばらく後ろをついていくと、きらきらした羽が見えた。
「スノウ、お疲れ様」
「やっと来たか。そっちも随分疲れてるようだが、具合でも悪いのか?」
「ううん。秋久さん、救急箱持ってない?」
「あるにはあるが…お嬢ちゃん、手が血だらけになってる。取り敢えずこれで傷口を洗った方がいい」
「ありがとうございます」
ペットボトルの水を少しずつ手にかけてもらいながら、泥や砂を落としていく。
そうこうしているうちに、秋久さんだけではなく春人さんと夏彦さんもやってきた。
「あれ?なんで月見ちゃんがいるの?」
「諸事情あるけど、あんまり気にしないで」
「向こうでのびているものもそうですか?」
「うん。捕まえておくのでせいいっぱいだったから…ありがとう」
私にはまだ分かっていないことが多い。
どうしてか助けてくれた【手品師】さんに、あのふたりが話していた【リセッター】…そして、初日に聞いた【カルテット】という言葉。
包帯を巻いてもらいながら、今は混乱した頭を抱えることしかできなかった。
「ごめんなさい。忘れ物をしていたので、なんとかあのふたりに届けられないかと思って…」
「…そう」
しばらく沈黙が流れて、やっぱりこの人は怒っているんだと震えてしまいそうになる。
今すぐこの場から離れたい…そんなことを考えていると、どんどん距離を詰められた。
「あ、あの…」
「そのまま動かないで」
その場で足から崩れ落ちそうになったのを、何も言わずに支えてくれた。
「僕の仕事には危険がつきものなんだ。だから、次はこんなところに来ちゃ駄目」
「ごめんなさい」
「謝られても嬉しくないんだけど。だけどまあ、その…忘れ物を届けてもらえたのは助かった。
あの子にとって、絶対に手放したくないくらい大事なものだったみたいだから」
冬真さんの目は真剣そのもので、逸らしてはいけないような気がする。
そのまま見つめ返すと、彼に少し困った表情を向けられた。
「君は変なところで勇気があるというか、変わってるというか…。そういえば、どうしてこの男は倒れてるの?」
「さっき、知らない人が助けてくれたんです。いつの間にかいなくなってしまって…」
「そう。早く行こう」
「は、はい」
なんとか隠し通せた蔦をよく見ると、棘に手書きのメモ用紙が刺されていた。
《自己紹介できなかったけど、どうか黙っていてほしい。
僕は手品師。いつかまた会えたら、そのときは再び名乗らせてもらうことにするよ。さっき見たもののタネも知りたいしね》
それが蕀さんたちのことを指しているのは明らかで、申し訳なく思いながら冬真さんには見えないようにポケットに入れる。
しばらく後ろをついていくと、きらきらした羽が見えた。
「スノウ、お疲れ様」
「やっと来たか。そっちも随分疲れてるようだが、具合でも悪いのか?」
「ううん。秋久さん、救急箱持ってない?」
「あるにはあるが…お嬢ちゃん、手が血だらけになってる。取り敢えずこれで傷口を洗った方がいい」
「ありがとうございます」
ペットボトルの水を少しずつ手にかけてもらいながら、泥や砂を落としていく。
そうこうしているうちに、秋久さんだけではなく春人さんと夏彦さんもやってきた。
「あれ?なんで月見ちゃんがいるの?」
「諸事情あるけど、あんまり気にしないで」
「向こうでのびているものもそうですか?」
「うん。捕まえておくのでせいいっぱいだったから…ありがとう」
私にはまだ分かっていないことが多い。
どうしてか助けてくれた【手品師】さんに、あのふたりが話していた【リセッター】…そして、初日に聞いた【カルテット】という言葉。
包帯を巻いてもらいながら、今は混乱した頭を抱えることしかできなかった。
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