裏世界の蕀姫

黒蝶

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秋久ルート

第14.5話

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「悪い、遅くなった」
いつもならもっと早く来られるが、お嬢ちゃんがいる手前そんなことはできない。
「それはいいんだけど、あの人をひとりにして大丈夫?」
「多分な」
「随分曖昧だね、アッキー」
「…で?何があった?」
こんな時間に緊急会議で呼び出すということは、何か進展があったか最悪の事態に見舞われる可能性があるということだ。
そう尋ねると、春人が申し訳そうに口を開いた。
「彼女についてなのですが、どうやら家族もどきが戸籍を確認しようとしたようです。
奴等には見られないよう閲覧制限をかけていたのでなんとかなりましたが…問題はもうひとつあります」
「…この前のやつか」
俺個人としても調べてみてはいるものの、徹底的に追いこむにはまだピースが足りていない。
「ドラッグの種類は大体分かってきている。ただ、捕まえるとなると事情は変わってくるな」
本当は、もう少し彼女には好きに過ごしてほしい。
だが、残念ながらそういうわけにもいかないようだ。
「夏彦、頼んでおいた資料は集まったか?」
「一応これで全部だよ。ただ、ここから先となるとちょっとセキュリティーがえげつないかな」
夏彦の情報は信用しているし、当然他のふたりのことも信じている。
だが、これ以上この件に巻きこんで大丈夫なのだろうか。
「…リーダー、らしくありませんよ」
「おまえにはお見通しか。だったら春人、潜入の為にここに書いてあるものを用意してほしい」
「分かりました」
春人はいつも満面の笑みを浮かべているが、心に残った傷は未だに深く残っている。
「今日知らせたかったことってこれで終わりか?」
「彼女のこと、気をつけておいてください」
「それは分かってる。この前捕まえた奴が小型カメラを隠し持ってたからな」
「そんなものまで揃えられるなんて、あいつら一体どんな組織と繋がってるんだろう」
冬真の人間観察力はこのメンバーの中で突出している。
「たしかに冬真のいうとおりだ。あの小さな組織で下っ端の構成員全員がカメラを持てるとは思えない」
そのカメラに運悪く飲食店での一件が映ってしまっており、お嬢ちゃんの顔もばっちりとらえられてしまっていた。
「悪いがもう少し調査を頼む。『零』としても少し動いてはみるが、あまり期待はしないでほしい。
…それから、連続殺人犯がうろついてるみたいだから気をつけるように」
「心配性ですね」
そんなこんなで、この日の会議はお開きになった。
いつもと違うのは、家路を急いでいることだ。
普段ならもっとゆっくり帰るところだが、まだ奴等が俺やお嬢ちゃんに辿り着いていないうちに手を打たなければならない。


──何かあってからでは遅いのだ。あのときのように。
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