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秋久ルート
第3話
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迫りくる何かに向かって両手を前に出す。
『あんたなんていなければよかったのに』
その相手は私の首に手をかけて、そのまま強く締めてくる。
これは、いつのことだろう。
たしかにこんなことがあったような気はするけれど、はっきりとは覚えていない。
「……ちゃん、お嬢ちゃん」
誰かに呼ばれたような気がして、慌てて顔をあげる、
すぐ近くにいたのは、お仕事に行ったはずの秋久さんだった。
「起きられるか?」
「ご、ごめんなさい…」
「こんなところで寝てたら風邪引くぞ?」
「…ごめんなさい」
「そんなに謝らなくていい。魘されてるみたいだったから起こしただけなんだ」
優しい声を聞いただけで胸が熱くなる。
こんなこと、今までなかった。
窓からさしこむ光を見ていたのが懐かしい。
「もし起きられそうなら夜食でも食べるか?今からスープだけでも、と思ったんだが…」
「私が、食べてもいいんですか?」
「当たり前だろ?ただ、お嬢ちゃんが食べたいなら、だけどな」
「えっと…いただいてもいいなら」
「決まりだな」
秋久さんは微笑んで、温かいスープを分けてくれた。
「ゆっくり食べな」
「あ、ありがとうございます。…いただきます」
一口飲んでみると、体中がぽかぽかしてくる。
こんなふうに誰かが作ってくれたものを食べるのは、いつ以来だろう。
「どうだ?一応普段から自炊してるから、食べられないほど不味いってことはないと思うが…」
「……です」
「ん?」
「美味しい、です。美味しい…」
気づいたときには涙がぽろぽろと零れていた。
なんとか止めようとしたけれど、なかなか止まってくれない。
「泣いていいんだ、それだけ辛い思いをしてきたってことだろう。それに、今この瞬間を安心してくれてるならそれでいい」
「ごめんなさ…ごめんなさい…」
「謝る必要はない。お嬢ちゃんはもっと自分の気持ちに素直になっていい。
心配しなくても、あんたの不安はすぐに取り除いてやる」
最後の方何を言われたのか分からなかったけれど、とにかく涙が止まらない。
泣いたら怒られると思ったのに、秋久さんはただ頭を撫でてくれている。
そういえば、こういうものが優しさだったと少し思い出した。
「ごめんなさい…」
「悪いことをしたわけじゃないんだし、そんなに謝らなくていい。
ただ、もう独りで我慢しようとするな。行くところがないならここにいていいし、嫌だと思ったら出ていったって構わない」
「ここに、置いてもらえるんですか?」
「そのつもりで連れて帰ってきたからな。ただ、明後日から少しずつ家事を手伝ってもらうことになるがな」
太陽のような笑顔に照らされて、なんだかほっとして体の力が抜けてしまう。
胡桃色の髪を整えながら、秋久さんはまた優しく微笑んだ。
『あんたなんていなければよかったのに』
その相手は私の首に手をかけて、そのまま強く締めてくる。
これは、いつのことだろう。
たしかにこんなことがあったような気はするけれど、はっきりとは覚えていない。
「……ちゃん、お嬢ちゃん」
誰かに呼ばれたような気がして、慌てて顔をあげる、
すぐ近くにいたのは、お仕事に行ったはずの秋久さんだった。
「起きられるか?」
「ご、ごめんなさい…」
「こんなところで寝てたら風邪引くぞ?」
「…ごめんなさい」
「そんなに謝らなくていい。魘されてるみたいだったから起こしただけなんだ」
優しい声を聞いただけで胸が熱くなる。
こんなこと、今までなかった。
窓からさしこむ光を見ていたのが懐かしい。
「もし起きられそうなら夜食でも食べるか?今からスープだけでも、と思ったんだが…」
「私が、食べてもいいんですか?」
「当たり前だろ?ただ、お嬢ちゃんが食べたいなら、だけどな」
「えっと…いただいてもいいなら」
「決まりだな」
秋久さんは微笑んで、温かいスープを分けてくれた。
「ゆっくり食べな」
「あ、ありがとうございます。…いただきます」
一口飲んでみると、体中がぽかぽかしてくる。
こんなふうに誰かが作ってくれたものを食べるのは、いつ以来だろう。
「どうだ?一応普段から自炊してるから、食べられないほど不味いってことはないと思うが…」
「……です」
「ん?」
「美味しい、です。美味しい…」
気づいたときには涙がぽろぽろと零れていた。
なんとか止めようとしたけれど、なかなか止まってくれない。
「泣いていいんだ、それだけ辛い思いをしてきたってことだろう。それに、今この瞬間を安心してくれてるならそれでいい」
「ごめんなさ…ごめんなさい…」
「謝る必要はない。お嬢ちゃんはもっと自分の気持ちに素直になっていい。
心配しなくても、あんたの不安はすぐに取り除いてやる」
最後の方何を言われたのか分からなかったけれど、とにかく涙が止まらない。
泣いたら怒られると思ったのに、秋久さんはただ頭を撫でてくれている。
そういえば、こういうものが優しさだったと少し思い出した。
「ごめんなさい…」
「悪いことをしたわけじゃないんだし、そんなに謝らなくていい。
ただ、もう独りで我慢しようとするな。行くところがないならここにいていいし、嫌だと思ったら出ていったって構わない」
「ここに、置いてもらえるんですか?」
「そのつもりで連れて帰ってきたからな。ただ、明後日から少しずつ家事を手伝ってもらうことになるがな」
太陽のような笑顔に照らされて、なんだかほっとして体の力が抜けてしまう。
胡桃色の髪を整えながら、秋久さんはまた優しく微笑んだ。
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