229 / 385
夏彦ルート
第97.5話
しおりを挟む
「アッキー、まずは俺の質問に答えてくれない?」
「内容によるな」
即答するあたりが秋久らしい。
内心苦笑しながら、単刀直入に質問をぶつける。
「【ハイドランジア】、どんな感じになってる?」
「それなら今日寄って確認してきた。店員たちもお客も、店長は大丈夫なのかって口を揃えて訊いてきた。
…おまえのそういうところ、本当に羨ましくなる」
「そういうところって?」
「周りから心配してもらえるほど愛されてるところ。だから、もう変に気負ったりするな」
気負うなというのがどういう意味か、なんとなく察知する。
秋久にはずっと止められていた。
知られた瞬間から、あいつらに何かしたからと言って兄が戻ってくる訳ではないからと忠告され続けていたのは事実だ。
「だけど、まだ全部は終わってない」
「けど、ちょっとは気が変わっただろ?」
「そういうところ、アッキーの狡いところだと思う」
「へえ、どんなところだ?」
「否定できないのが分かってて言ってくるところだよ」
確かに復讐だけに囚われていた頃とは、我ながらだいぶ変わったと思う。
今心の中心にあるのは月見ちゃんのことで、その周りには近くにいる仲間や仕事関係の人たちの顔が浮かんで…復讐なんてしようとは思えなくなっていた。
「あ、あの…」
「悪いな、お嬢ちゃん。なんとなく居づらい空気にして。…で、ここから本題に入るんだが、おまえたちの家を見てきた。
荒らされた形跡もないし、何者かに侵入された形跡もない。そろそろ夏彦の怪我も治ってくるだろうし、冬真は大学からの課題で忙しくなる。だから、」
「帰っていいの?」
「それはふたりで話して決めろ。勿論、帰るなら帰るで歓迎する」
秋久には沢山手を借りた。
あいつらからの追っ手がないということは、家だけは隠し通せたか俺を諦めたかのどちらかだ。
「ありがとう、アッキー」
「俺にできるのはこれくらいしかないからな。あとは自力で頑張れよ」
「あと…?他にも何かやることがあるんですか?」
きょとんとしている月見ちゃんになんでもないと告げた後、すぐに秋久の手をひいて部屋の外に出る。
「ちょっと、アッキー…!」
「おまえも照れることがあるんだな。…そういうところ、夏樹に似てるな」
「あの完全無欠そうな兄貴にそんな一面があるとは思わなかった。…今度ゆっくり聞かせて」
「俺が知ってるあいつの話ならいつでもしてやる。それから、頼まれてたもんはこれでよかったか?」
「充分だよ。ありがとう」
大量の資料に、あいつらの罪状。
本当に何から何まで世話になりっぱなしだ。
「じゃあ、あとは頑張れよ」
わしわしと頭を撫でられ、思わず苦笑してしまう。
「…そういうところ、夏兄に似てるんだよ」
秋久の背中にそう呟きながら、月見ちゃんにどんな言葉をかけるか考える。
この想いに花を咲かせることが赦されるなら、どう伝えればいいだろう。
「内容によるな」
即答するあたりが秋久らしい。
内心苦笑しながら、単刀直入に質問をぶつける。
「【ハイドランジア】、どんな感じになってる?」
「それなら今日寄って確認してきた。店員たちもお客も、店長は大丈夫なのかって口を揃えて訊いてきた。
…おまえのそういうところ、本当に羨ましくなる」
「そういうところって?」
「周りから心配してもらえるほど愛されてるところ。だから、もう変に気負ったりするな」
気負うなというのがどういう意味か、なんとなく察知する。
秋久にはずっと止められていた。
知られた瞬間から、あいつらに何かしたからと言って兄が戻ってくる訳ではないからと忠告され続けていたのは事実だ。
「だけど、まだ全部は終わってない」
「けど、ちょっとは気が変わっただろ?」
「そういうところ、アッキーの狡いところだと思う」
「へえ、どんなところだ?」
「否定できないのが分かってて言ってくるところだよ」
確かに復讐だけに囚われていた頃とは、我ながらだいぶ変わったと思う。
今心の中心にあるのは月見ちゃんのことで、その周りには近くにいる仲間や仕事関係の人たちの顔が浮かんで…復讐なんてしようとは思えなくなっていた。
「あ、あの…」
「悪いな、お嬢ちゃん。なんとなく居づらい空気にして。…で、ここから本題に入るんだが、おまえたちの家を見てきた。
荒らされた形跡もないし、何者かに侵入された形跡もない。そろそろ夏彦の怪我も治ってくるだろうし、冬真は大学からの課題で忙しくなる。だから、」
「帰っていいの?」
「それはふたりで話して決めろ。勿論、帰るなら帰るで歓迎する」
秋久には沢山手を借りた。
あいつらからの追っ手がないということは、家だけは隠し通せたか俺を諦めたかのどちらかだ。
「ありがとう、アッキー」
「俺にできるのはこれくらいしかないからな。あとは自力で頑張れよ」
「あと…?他にも何かやることがあるんですか?」
きょとんとしている月見ちゃんになんでもないと告げた後、すぐに秋久の手をひいて部屋の外に出る。
「ちょっと、アッキー…!」
「おまえも照れることがあるんだな。…そういうところ、夏樹に似てるな」
「あの完全無欠そうな兄貴にそんな一面があるとは思わなかった。…今度ゆっくり聞かせて」
「俺が知ってるあいつの話ならいつでもしてやる。それから、頼まれてたもんはこれでよかったか?」
「充分だよ。ありがとう」
大量の資料に、あいつらの罪状。
本当に何から何まで世話になりっぱなしだ。
「じゃあ、あとは頑張れよ」
わしわしと頭を撫でられ、思わず苦笑してしまう。
「…そういうところ、夏兄に似てるんだよ」
秋久の背中にそう呟きながら、月見ちゃんにどんな言葉をかけるか考える。
この想いに花を咲かせることが赦されるなら、どう伝えればいいだろう。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
ミニゴブリンから始まる神の箱庭~トンデモ進化で最弱からの成り上がり~
リーズン
ファンタジー
〈はい、ミニゴブリンに転生した貴女の寿命は一ヶ月約三十日です〉
……えーと? マジっすか?
トラックに引かれチートスキル【喰吸】を貰い異世界へ。そんなありふれた転生を果たしたハクアだが、なんと転生先はミニゴブリンだった。
ステータスは子供にも劣り、寿命も一ヶ月しかなく、生き残る為には進化するしか道は無い。
しかし群れのゴブリンにも奴隷扱いされ、せっかく手に入れた相手の能力を奪うスキルも、最弱のミニゴブリンでは能力を発揮できない。
「ちくしょうそれでも絶対生き延びてやる!」
同じ日に産まれたゴブゑと、捕まったエルフのアリシアを仲間に進化を目指す。
次々に仲間になる吸血鬼、ドワーフ、元魔王、ロボ娘、勇者etc。
そして敵として現れる強力なモンスター、魔族、勇者を相手に生き延びろ!
「いや、私はそんな冒険ファンタジーよりもキャッキャウフフなラブコメスローライフの方が……」
予想外な行動とトラブルに巻き込まれ、巻き起こすハクアのドタバタ成り上がりファンタジーここに開幕。
「ダメだこの作者私の言葉聞く気ねぇ!?」
お楽しみください。
色々な所で投稿してます。
バトル多め、題名がゴブリンだけどゴブリン感は少ないです。
完結 この手からこぼれ落ちるもの
ポチ
恋愛
やっと、本当のことが言えるよ。。。
長かった。。
君は、この家の第一夫人として
最高の女性だよ
全て君に任せるよ
僕は、ベリンダの事で忙しいからね?
全て君の思う通りやってくれれば良いからね?頼んだよ
僕が君に触れる事は無いけれど
この家の跡継ぎは、心配要らないよ?
君の父上の姪であるベリンダが
産んでくれるから
心配しないでね
そう、優しく微笑んだオリバー様
今まで優しかったのは?
結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。
義理姉がかわいそうと言われましても、私には関係の無い事です
渡辺 佐倉
恋愛
マーガレットは政略で伯爵家に嫁いだ。
愛の無い結婚であったがお互いに尊重し合って結婚生活をおくっていければいいと思っていたが、伯爵である夫はことあるごとに、離婚して実家である伯爵家に帰ってきているマーガレットにとっての義姉達を優先ばかりする。
そんな生活に耐えかねたマーガレットは…
結末は見方によって色々系だと思います。
なろうにも同じものを掲載しています。
え?後悔している?それで?
みおな
恋愛
婚約者(私)がいながら、浮気をする婚約者。
姉(私)の婚約者にちょっかいを出す妹。
娘(私)に躾と称して虐げてくる母親。
後悔先に立たずという言葉をご存知かしら?
前世でわたしの夫だったという人が現れました
柚木ゆず
恋愛
それは、わたしことエリーズの婚約者であるサンフォエル伯爵家の嫡男・ディミトリ様のお誕生日をお祝いするパーティーで起きました。
ディミトリ様と二人でいたら突然『自分はエリーズ様と前世で夫婦だった』と主張する方が現れて、驚いていると更に『婚約を解消して自分と結婚をして欲しい』と言い出したのです。
信じられないことを次々と仰ったのは、ダツレットス子爵家の嫡男アンリ様。
この方は何かの理由があって、夫婦だったと嘘をついているのでしょうか……? それともアンリ様とわたしは、本当に夫婦だったのでしょうか……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる