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春人ルート
第95話
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「あの、おふたりさん…ちょっといい?」
ふたり揃って気まずそうにしているのを見て、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「私は、外した方がいいでしょうか?」
もしお仕事の話なら、私がいない方が早く終わることもあるかもしれない。
そう思っていたけれど、何故か体がぴくりとも動かななかった。
ちらっと目をやると、春人に感覚がない手首を握られている。
「報告書ならあと少しで仕上がるので、もう少し時間をもらえませんか?」
「いや、それもそうなんだけど、別の話もあるんだ」
「別の話、ですか」
「…春人さん、ちょっと体を調べさせてほしい」
もしかして、本当はすごく具合がわるいのだろうか。
不安になって名前を呼ぼうとすると、大丈夫だというように笑みを向けられる。
「分かりました。それにしても、こんな時間からですか?」
「まー君、今しか時間がないんだって」
「そういうことでしたら、いくらでもどうぞ」
「ありがとう。…あんたがいると邪魔だから、その人のことを手伝って」
「そんな冷たいこと言わなくていいのに…。行こうか、月見ちゃん」
「はい」
チェリーのことは春人にお願いすることができた。
どんなことをするのか気になるけれど、それより心配なのはやっぱりどのくらい具合が悪いのかということだ。
「そういえば、月見ちゃん」
「は、はい」
「ありがとう。やっぱり君にお願いしてよかった」
「え…?」
夏彦さんはふっと笑って、春人の話を聞かせてくれた。
「ハルは昔から独りで抱えこみがちで、いつも暗い気持ちに蓋をして隠してるから…時々俺も考えてることが分からなかったりするんだ。
だけど、本当は誰より孤独を抱えて生きてきたんだと思う。その傷を1番理解できるのが月見ちゃんなんじゃないかな」
「そう、かもしれません。1番かどうかは分からないけど…たしかに、恐怖や孤独はなんとなく分かります」
そして、それがどれだけ心に深く刻まれてしまうかも。
全部は無理でもそれは分かる。
「あと、寂しがるとあのぬいぐるみを抱きしめる癖があるんだ」
「ラビを抱きしめているところ、何度か見ました」
「あ、やっぱりそう?分かりづらそうで分かりやすいところ、いっぱいあるんだよね」
「あの、夏彦さんは春人とどれくらい一緒にいるんですか?」
「そうだな…月日でいえば10年以上?」
その後も春人の話で盛り上がる。
人と話すのは得意な方ではないけれど、何故かこの時間を苦だと思わなかった。
「月見ちゃん、指先は感覚が戻ってきてない?」
「まだ、全然なんです。力を入れても動かせなくて…すみません」
「ごめん!謝らせたかったわけじゃないんだ。ただ、大変そうだなって思っただけ。
そうだ、いいものあげる。後で春人と一緒に食べて」
「ありがとうございます」
もらった金平糖を持っていたポシェットに仕舞って、冬真さんが出てくるのを待つ。
それからしばらく夏彦さんとの会話を楽しむことができた。
ふたり揃って気まずそうにしているのを見て、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「私は、外した方がいいでしょうか?」
もしお仕事の話なら、私がいない方が早く終わることもあるかもしれない。
そう思っていたけれど、何故か体がぴくりとも動かななかった。
ちらっと目をやると、春人に感覚がない手首を握られている。
「報告書ならあと少しで仕上がるので、もう少し時間をもらえませんか?」
「いや、それもそうなんだけど、別の話もあるんだ」
「別の話、ですか」
「…春人さん、ちょっと体を調べさせてほしい」
もしかして、本当はすごく具合がわるいのだろうか。
不安になって名前を呼ぼうとすると、大丈夫だというように笑みを向けられる。
「分かりました。それにしても、こんな時間からですか?」
「まー君、今しか時間がないんだって」
「そういうことでしたら、いくらでもどうぞ」
「ありがとう。…あんたがいると邪魔だから、その人のことを手伝って」
「そんな冷たいこと言わなくていいのに…。行こうか、月見ちゃん」
「はい」
チェリーのことは春人にお願いすることができた。
どんなことをするのか気になるけれど、それより心配なのはやっぱりどのくらい具合が悪いのかということだ。
「そういえば、月見ちゃん」
「は、はい」
「ありがとう。やっぱり君にお願いしてよかった」
「え…?」
夏彦さんはふっと笑って、春人の話を聞かせてくれた。
「ハルは昔から独りで抱えこみがちで、いつも暗い気持ちに蓋をして隠してるから…時々俺も考えてることが分からなかったりするんだ。
だけど、本当は誰より孤独を抱えて生きてきたんだと思う。その傷を1番理解できるのが月見ちゃんなんじゃないかな」
「そう、かもしれません。1番かどうかは分からないけど…たしかに、恐怖や孤独はなんとなく分かります」
そして、それがどれだけ心に深く刻まれてしまうかも。
全部は無理でもそれは分かる。
「あと、寂しがるとあのぬいぐるみを抱きしめる癖があるんだ」
「ラビを抱きしめているところ、何度か見ました」
「あ、やっぱりそう?分かりづらそうで分かりやすいところ、いっぱいあるんだよね」
「あの、夏彦さんは春人とどれくらい一緒にいるんですか?」
「そうだな…月日でいえば10年以上?」
その後も春人の話で盛り上がる。
人と話すのは得意な方ではないけれど、何故かこの時間を苦だと思わなかった。
「月見ちゃん、指先は感覚が戻ってきてない?」
「まだ、全然なんです。力を入れても動かせなくて…すみません」
「ごめん!謝らせたかったわけじゃないんだ。ただ、大変そうだなって思っただけ。
そうだ、いいものあげる。後で春人と一緒に食べて」
「ありがとうございます」
もらった金平糖を持っていたポシェットに仕舞って、冬真さんが出てくるのを待つ。
それからしばらく夏彦さんとの会話を楽しむことができた。
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