裏世界の蕀姫

黒蝶

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夏彦ルート

第91話

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「お疲れ様」
「ごめんなさい…」
「あんな無茶した後だもん、こうなるだろうってことはなんとなく分かってた。
俺の方こそごめんね。あのとき動けていれば、月見ちゃんに無理させずにすんだのに…」
あの蕀さんたちにお願いしてできた鎌…あれを振るときに、思いの外力が必要だったらしい。
あれから足の動きはがたがたになって、余計に歩きづらくなってしまった。
特に、冬真さんには負担をかけてしまっていると思う。
「…今、まー君に迷惑かけてるなって考えてた?」
「ごめんなさい。夏彦にだって迷惑をかけているのに…」
「いや、それはいいんだ。誰にも迷惑をかけずに生きていくなんて無理な話だし…そもそも、迷惑だなんて思ってないしね!」
夏彦は優しく笑いかけてくれたけれど、私はどうしても気になってしまう。
「ただ、まー君は月見ちゃんの能力について話してないから、無闇やたらと検査したがってるかもしれない」
「え…?」
「怪我が悪化してないか心配なんだと思うけど、ちょっと頻度を減らしてもらえるように俺から言ってみるよ」
確かに、最近ずっと血液検査をしているような気がする。
痛み止めや処置に使う包帯も、前のものとは違うものになっていた。
「悪くなっているかもしれないから、だったんですね。知りませんでした」
「そもそも走っちゃいけないのに走っちゃってるから、それもあって治りが遅くなってるんだとは思うんだけど…」
「すみません」
「いや、あれは俺が油断したからなわけだし、護ってくれてありがとう。
おかげで俺は今もこうやって動けてるし、怪我も割りとよくなったよ」
こうやって話していると、夏彦とふたりで生活していたときのことを思い出す。
色々な話をして、笑い合って…そんな時間が続いてほしいと願っていた。
「そういえば、俺が行きたい場所について話してなかったね」
「どこに行くんですか?」
「…どうしても、挨拶しに行きたい相手がいるんだ。色々報告しておきたいしね」
「どんな場所なのか楽しみです」
「月見ちゃんはそうやって色々な気持ちを話してくれるようになったね。…そういうの、俺はすごく嬉しいんだ」
夏彦の笑顔は太陽みたいにきらきらしていて、一緒に過ごす時間がすごく楽しい。
沢山思い出の花が咲いて、毎日が輝いている。
…そう感じてはいるけれど、今はどきどきしてちゃんと目を見て話せそうにない。
「焦っても駄目だろうし、今日はこれで終わり!改めて、今日はお疲れ様」
「あ、ありがとうございました…」
このきらきらした感情を、しっかり言葉にできるだろうか。
今は無理でも、ハンカチを完成させられたら話したい。
どんな反応がかえってくるのか、不安がない訳ではないけれど…話さないと何も始まらないから。
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