220 / 385
夏彦ルート
第89話
しおりを挟む
「月見、ちょっとだけお邪魔してもいい?」
「は、はい。どうぞ…」
朝起きてグローブをはめていると、そこに花菜がやってきた。
いつもどおり笑っているようにも見えるけれど、なんだか疲れているような気もする。
「おはよう!ごめんね、急に来ちゃって…」
「いえ、私は大丈夫です。特に何もしていなかったので…」
「でも、眠くないの?」
「はい、全く」
あれから夏彦に寝るように言われて部屋で横になったものの、あんまり眠れていない。
それでも体はいつもどおり動くし、以前はこれが普通だったので特に問題はなかった。
「花菜は、何かあったんですか?」
「あれ、そんなふうに見えた?」
「…見えます。悩み事があるような、不安なことがあるような…全部は分からないんですけど、そういうものを抱えているように見えます」
そう話すと花菜はそっかと呟いて、そのまましばらく俯いていた。
「あ、あの…」
どうすればいいか分からなくて困っていると、花菜は少し不安そうな顔をしてこちらを見つめた。
「私、仕事で失敗しちゃったんだ。そのせいで先輩にも迷惑をかけちゃって…私って本当に駄目だなって考えてた」
「花菜はすごいです」
「え…?」
きょとんとしている花菜に向かってそのまま言葉を続ける。
「私は、花菜たちみたいに誰かと戦う力はありません。今だって怪我をして迷惑をかけている最中で…」
初めて会ってからというもの、夏彦たちには助けられてばかりだ。
それこそ、これから先全部は返せないんじゃないかと思うくらい。
「一生懸命お仕事と向き合えることは、素敵なことだと思います。
どんなことをしているのか、詳しいことは全然知らないんですけど…それでも、花菜が頑張っているのは分かります」
そこまで話してはっとする。
変なことを言って傷つけてしまわなかっただろうか。
花菜を怒らせてしまったかもしれない…どう声をかけようか迷っていると、彼女に勢いよく手を握られる。
「あ、あの…」
「月見は優しいね。…ありがとう、もう少しだけ頑張ってみようと思った!
私よくうじうじ考えちゃうんだけど、月見のおかげで心が決まったよ」
「それならよかったです」
「ごめんね、今日は月見の話を聞きたくてここに来たのに…」
「私は人の話を聞くのが楽しいので、こんなふうに過ごすのも好きです」
花菜は首を傾げていたけれど、ふと思いついたように言葉を口にする。
「そういえばなんだけど…月見は、夏彦に告白したりしないの?」
「告白、ですか?」
「だって、すごく好きだよね?」
他の人たちからもそんなふうに見えているのだろうか。
少しどきどきしながら花菜の方を見て言葉を発そうとした瞬間、誰かが入ってきた。
「月見ちゃん、ちょっと入るね」
「は、はい。どうぞ…」
朝起きてグローブをはめていると、そこに花菜がやってきた。
いつもどおり笑っているようにも見えるけれど、なんだか疲れているような気もする。
「おはよう!ごめんね、急に来ちゃって…」
「いえ、私は大丈夫です。特に何もしていなかったので…」
「でも、眠くないの?」
「はい、全く」
あれから夏彦に寝るように言われて部屋で横になったものの、あんまり眠れていない。
それでも体はいつもどおり動くし、以前はこれが普通だったので特に問題はなかった。
「花菜は、何かあったんですか?」
「あれ、そんなふうに見えた?」
「…見えます。悩み事があるような、不安なことがあるような…全部は分からないんですけど、そういうものを抱えているように見えます」
そう話すと花菜はそっかと呟いて、そのまましばらく俯いていた。
「あ、あの…」
どうすればいいか分からなくて困っていると、花菜は少し不安そうな顔をしてこちらを見つめた。
「私、仕事で失敗しちゃったんだ。そのせいで先輩にも迷惑をかけちゃって…私って本当に駄目だなって考えてた」
「花菜はすごいです」
「え…?」
きょとんとしている花菜に向かってそのまま言葉を続ける。
「私は、花菜たちみたいに誰かと戦う力はありません。今だって怪我をして迷惑をかけている最中で…」
初めて会ってからというもの、夏彦たちには助けられてばかりだ。
それこそ、これから先全部は返せないんじゃないかと思うくらい。
「一生懸命お仕事と向き合えることは、素敵なことだと思います。
どんなことをしているのか、詳しいことは全然知らないんですけど…それでも、花菜が頑張っているのは分かります」
そこまで話してはっとする。
変なことを言って傷つけてしまわなかっただろうか。
花菜を怒らせてしまったかもしれない…どう声をかけようか迷っていると、彼女に勢いよく手を握られる。
「あ、あの…」
「月見は優しいね。…ありがとう、もう少しだけ頑張ってみようと思った!
私よくうじうじ考えちゃうんだけど、月見のおかげで心が決まったよ」
「それならよかったです」
「ごめんね、今日は月見の話を聞きたくてここに来たのに…」
「私は人の話を聞くのが楽しいので、こんなふうに過ごすのも好きです」
花菜は首を傾げていたけれど、ふと思いついたように言葉を口にする。
「そういえばなんだけど…月見は、夏彦に告白したりしないの?」
「告白、ですか?」
「だって、すごく好きだよね?」
他の人たちからもそんなふうに見えているのだろうか。
少しどきどきしながら花菜の方を見て言葉を発そうとした瞬間、誰かが入ってきた。
「月見ちゃん、ちょっと入るね」
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~
Bonzaebon
ファンタジー
東方一の武芸の名門、流派梁山泊を破門・追放の憂き目にあった落ちこぼれのロアは行く当てのない旅に出た。 国境を越え異国へと足を踏み入れたある日、傷ついた男からあるものを託されることになる。 それは「勇者の額冠」だった。 突然、事情も呑み込めないまま、勇者になってしまったロアは竜帝討伐とそれを巡る陰謀に巻き込まれることになる。
『千年に一人の英雄だろうと、最強の魔物だろうと、俺の究極奥義の前には誰もがひれ伏する!』
※本作は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載させて頂いております。
世界が色付くまで
篠原 皐月
恋愛
ただこのまま、この狭い無彩色の世界で、静かに朽ちて逝くだけだと思っていた……。
そんな漠然とした予想に反して、数年前恭子の目の前に広がった世界は、少しずつ確実に新しい自分を作り上げていったが、時折追いかけて来る過去が彼女の心身を覆い隠し、心の中に薄闇を広げていた。そんな変わり映えしない日常の中、自己中心極まりない雇い主から受けたとある指令で、恭子は自分とは相対する立場の人間と真正面から向き合う事になる。
【夢見る頃を過ぎても】続編。背負った重荷の為、互いに自分の感情を容易に表に出せない男女の、迷走する恋愛模様を書いていきます。
同窓会に行ったら、知らない人がとなりに座っていました
菱沼あゆ
キャラ文芸
「同窓会っていうか、クラス会なのに、知らない人が隣にいる……」
クラス会に参加しためぐるは、隣に座ったイケメンにまったく覚えがなく、動揺していた。
だが、みんなは彼と楽しそうに話している。
いや、この人、誰なんですか――っ!?
スランプ中の天才棋士VS元天才パティシエール。
「へえー、同窓会で再会したのがはじまりなの?」
「いや、そこで、初めて出会ったんですよ」
「同窓会なのに……?」
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
憑かれるのはついてくる女子高生と幽霊
水瀬真奈美
恋愛
家出じゃないもん。これは社会勉強!
家出人少女は、雪降る故郷を離れて東京へと向かった。東京では行く当てなんてないだから、どうしようか? 車内ではとりあえずSNSのツイツイを立ち上げては、安全そうなフォロワーを探すことに……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる