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夏彦ルート
第80話
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「ふたりとも、今日は大人しく寝てて」
冬真さんは呆れたように息を吐いて、夏彦の方をじっと見つめる。
「そんなに見つめられると照れちゃうな…」
「あんたがわちゃわちゃして大人しくしなさそうだからだよ。その人は勝手に出ていったりしないでしょ?
あんたみたいな怪我が酷いのにじっとしていられない患者が、1番手がかかる…」
「まー君、心配してくれてるの?ありがとう、すごく優しい…!」
「…黙らないなら点滴増やす」
やっぱりこのふたりは仲が悪いように見えて、本当は相性がいいのかもしれない。
「僕は別に、この人と仲がいいわけじゃないから」
「え…?」
「ただ、ちょっと心配だったというか、その…」
「俺とまー君は仲よしなんだ!」
「…麻酔かけてやりたい」
どうして冬真さんは私が考えていたことが分かったんだろう。
できるだけ表情には出さないようにしていたはずだったのに、言葉にしなくても伝わってしまうほど酷い顔をしていたのだろうか。
「月見ちゃん?大丈夫?」
「あ、はい…」
「とにかく、絶対ちゃんと寝てて。…ちょっと来て」
「わ、分かりました」
夏彦に一礼して、そのまま冬真さんについていく。
どんな話をするんだろうと思っていると、ベッドに座るように言われた。
「ちょっと動かないで」
「分かりました」
そういえば、3日に1回くらいの割合で包帯を換えないといけないと言われたのを思い出す。
「ごめんなさい。…ありがとうございます」
「僕はただ、僕の仕事をしてるだけだから。…これくらいしか役に立たないし」
「それってどういう、」
「そういえば、お客さんが来てる。話がしたいって」
「え…?」
ドアから出ていく冬真さんと入れ違いでやって来たのは花菜だった。
「月見、この前は…」
「この前はすみませんでした」
最近、思ったことがすらすらと言えるようになった気がする。
花菜が悪かったわけじゃない。
「だって私、言い方きつかったし…」
「いいんです。夏彦のことを思ったら花菜の反応は当然で…私の考えが甘かったんです」
頭を下げると、花菜はどうしてか私を抱きしめてくれた。
「あ、あの…」
「なんていい子なの!?」
「その、えっと…」
「ごめん!私、よくひとりで盛りあがっちゃうんだ」
彼女は笑いながら、唐突な質問をぶつけてきた。
「ねえ、月見は夏彦のどこが好きなの?」
「どうしてですか?」
「なんとなく、かな。恋の話って聞いてみたいし…」
「言葉にしづらいです。ただ、夏彦の側にいたいなって思うんです」
「…やっぱり恋なんだ」
「あの…?」
花菜はまた笑いながら言った。
「ううん、なんでもない!私は応援してるし、また月見が作ってくれた服を着たい。
どんなことになっているのかは分からないけど…絶対に危ないことはしないで」
「私は大丈夫です」
他の人たちの方が心配だ。
私にできることは、本当に限られたことだけだから。
冬真さんは呆れたように息を吐いて、夏彦の方をじっと見つめる。
「そんなに見つめられると照れちゃうな…」
「あんたがわちゃわちゃして大人しくしなさそうだからだよ。その人は勝手に出ていったりしないでしょ?
あんたみたいな怪我が酷いのにじっとしていられない患者が、1番手がかかる…」
「まー君、心配してくれてるの?ありがとう、すごく優しい…!」
「…黙らないなら点滴増やす」
やっぱりこのふたりは仲が悪いように見えて、本当は相性がいいのかもしれない。
「僕は別に、この人と仲がいいわけじゃないから」
「え…?」
「ただ、ちょっと心配だったというか、その…」
「俺とまー君は仲よしなんだ!」
「…麻酔かけてやりたい」
どうして冬真さんは私が考えていたことが分かったんだろう。
できるだけ表情には出さないようにしていたはずだったのに、言葉にしなくても伝わってしまうほど酷い顔をしていたのだろうか。
「月見ちゃん?大丈夫?」
「あ、はい…」
「とにかく、絶対ちゃんと寝てて。…ちょっと来て」
「わ、分かりました」
夏彦に一礼して、そのまま冬真さんについていく。
どんな話をするんだろうと思っていると、ベッドに座るように言われた。
「ちょっと動かないで」
「分かりました」
そういえば、3日に1回くらいの割合で包帯を換えないといけないと言われたのを思い出す。
「ごめんなさい。…ありがとうございます」
「僕はただ、僕の仕事をしてるだけだから。…これくらいしか役に立たないし」
「それってどういう、」
「そういえば、お客さんが来てる。話がしたいって」
「え…?」
ドアから出ていく冬真さんと入れ違いでやって来たのは花菜だった。
「月見、この前は…」
「この前はすみませんでした」
最近、思ったことがすらすらと言えるようになった気がする。
花菜が悪かったわけじゃない。
「だって私、言い方きつかったし…」
「いいんです。夏彦のことを思ったら花菜の反応は当然で…私の考えが甘かったんです」
頭を下げると、花菜はどうしてか私を抱きしめてくれた。
「あ、あの…」
「なんていい子なの!?」
「その、えっと…」
「ごめん!私、よくひとりで盛りあがっちゃうんだ」
彼女は笑いながら、唐突な質問をぶつけてきた。
「ねえ、月見は夏彦のどこが好きなの?」
「どうしてですか?」
「なんとなく、かな。恋の話って聞いてみたいし…」
「言葉にしづらいです。ただ、夏彦の側にいたいなって思うんです」
「…やっぱり恋なんだ」
「あの…?」
花菜はまた笑いながら言った。
「ううん、なんでもない!私は応援してるし、また月見が作ってくれた服を着たい。
どんなことになっているのかは分からないけど…絶対に危ないことはしないで」
「私は大丈夫です」
他の人たちの方が心配だ。
私にできることは、本当に限られたことだけだから。
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