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夏彦ルート
第74話
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言葉が心まで届いて、喜びが沢山咲いたような気がする。
「もうすぐ勢いで復讐しちゃうところだった俺を踏みとどまらせてくれたのは、月見ちゃんだよ。
もし誰もいなかったら、あいつに致命傷を負わせていたかもしれない」
「だけど、あれってあんまり深い傷にならない場所に向かって攻撃していたんですよね…?」
私の背中があまり傷まないのも、もしあの男に刺さっていたとしても、致命傷にならない場所を狙っていたからだと冬真さんが言っていた。
「たしかに狙ったつもりではいたけど、あのとき俺の手はちょっと震えてた。…少しでもずれたら相手に致命傷を負わせてしまう、そうなったらあいつらと同じになっちゃうんだ。
だけど、月見ちゃんを傷つけたかったわけじゃない。本当にごめん」
「私は、自分がどうなってもいいと思っていました。夏彦を護れたらそれでいいって、思っていたんです」
今の私は、少しだけ怒っているのかもしれない。
自分が怪我をしたことではなく、約束したことを忘れかけていたであろう彼に対して。
「…約束、したのに」
「それは…」
「私は、夏彦に誰も傷つけてほしくなかったんです。いつも何かを隠しているのを笑って誤魔化して、何の力にもなれないのが嫌だったんです。
あなたに、誰のことも傷つけずにいてほしかったのに…」
彼は自分自身がどれだけ傷ついているのか分かっていない。
だから、誰かが枯れそうになっている彼に思いやりの水を沢山撒いていくしかないのだ。
「本当にごめんね」
「もっと自分を大切にしてください。夏彦が傷つくと、私は悲しいです」
もう自分が何を言っているのかいまひとつ分からない。
ただ、とにかく夏彦にこれ以上傷ついてほしくなかった、
「夏彦の周りには、あなたを大切に想う人が沢山いるんです…。それだけは忘れないでください」
「…月見ちゃんは、俺のこと怒らないの?」
「ひとりで無理をしたことには怒っています。でも、それだけです」
夏彦は背中の傷のあたりをゆっくり撫でながら、掠れた声で呟く。
「…こんな怪我、させたのに?」
「怪我ならいつか治ります。だから、大丈夫です」
それに、彼を人殺しにせずにすんだんだからそれでいい。
沢山のぬくもりを教えてもらって、居場所まで作ってもらえて…これだけ幸せな時間を私は知らなかった。
それを全部くれたのが目の前の優しい人だから、その手を血で染めてほしくなかったしどうしても役に立ちたかったのだ。
なんとか笑ってみせるけれど、足に痛みが走る。
「…月見ちゃん?」
「だ、大丈夫です…」
なんとか杖で体を支えていたのにも限界がきて、体が崩れ落ちる。
「そのまま、足が痛くない体勢でいて」
夏彦が何度もボタンを押しているのが見えたけれど、痛くて何もすることができない。
自分の服を見てみると、じわりと赤い液体が染み出していた。
「もうすぐ勢いで復讐しちゃうところだった俺を踏みとどまらせてくれたのは、月見ちゃんだよ。
もし誰もいなかったら、あいつに致命傷を負わせていたかもしれない」
「だけど、あれってあんまり深い傷にならない場所に向かって攻撃していたんですよね…?」
私の背中があまり傷まないのも、もしあの男に刺さっていたとしても、致命傷にならない場所を狙っていたからだと冬真さんが言っていた。
「たしかに狙ったつもりではいたけど、あのとき俺の手はちょっと震えてた。…少しでもずれたら相手に致命傷を負わせてしまう、そうなったらあいつらと同じになっちゃうんだ。
だけど、月見ちゃんを傷つけたかったわけじゃない。本当にごめん」
「私は、自分がどうなってもいいと思っていました。夏彦を護れたらそれでいいって、思っていたんです」
今の私は、少しだけ怒っているのかもしれない。
自分が怪我をしたことではなく、約束したことを忘れかけていたであろう彼に対して。
「…約束、したのに」
「それは…」
「私は、夏彦に誰も傷つけてほしくなかったんです。いつも何かを隠しているのを笑って誤魔化して、何の力にもなれないのが嫌だったんです。
あなたに、誰のことも傷つけずにいてほしかったのに…」
彼は自分自身がどれだけ傷ついているのか分かっていない。
だから、誰かが枯れそうになっている彼に思いやりの水を沢山撒いていくしかないのだ。
「本当にごめんね」
「もっと自分を大切にしてください。夏彦が傷つくと、私は悲しいです」
もう自分が何を言っているのかいまひとつ分からない。
ただ、とにかく夏彦にこれ以上傷ついてほしくなかった、
「夏彦の周りには、あなたを大切に想う人が沢山いるんです…。それだけは忘れないでください」
「…月見ちゃんは、俺のこと怒らないの?」
「ひとりで無理をしたことには怒っています。でも、それだけです」
夏彦は背中の傷のあたりをゆっくり撫でながら、掠れた声で呟く。
「…こんな怪我、させたのに?」
「怪我ならいつか治ります。だから、大丈夫です」
それに、彼を人殺しにせずにすんだんだからそれでいい。
沢山のぬくもりを教えてもらって、居場所まで作ってもらえて…これだけ幸せな時間を私は知らなかった。
それを全部くれたのが目の前の優しい人だから、その手を血で染めてほしくなかったしどうしても役に立ちたかったのだ。
なんとか笑ってみせるけれど、足に痛みが走る。
「…月見ちゃん?」
「だ、大丈夫です…」
なんとか杖で体を支えていたのにも限界がきて、体が崩れ落ちる。
「そのまま、足が痛くない体勢でいて」
夏彦が何度もボタンを押しているのが見えたけれど、痛くて何もすることができない。
自分の服を見てみると、じわりと赤い液体が染み出していた。
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