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春人ルート
第69話
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秋久さんたちが春人の病室に向かったところで、少ししてから喉が乾いて水をもらいに行こうとすると、途中で誰かにぶつかりそうになる。
「あ…」
「こんにちは、月見ちゃん」
そこに立っていたのは、少し目を赤くした夏彦さんだった。
一礼すると、がしっと肩を掴まれる。
「えっと、あの…」
「ありがとう。君がいなかったら、あいつは…ハルはどうなってたか分からない。
全部君のおかげだよ。感謝してもし足りない」
「私はただ、私ができることをやっただけなので…」
「銃を持っている相手がいるのに、あんなふうに飛び出していくなんてなかなかできることじゃないよ」
「どうしてそれを…」
「あいつ、自分に何かあったときの為に俺のパソコンに記録と音声の一部を送ってきていたんだ。その中に月見ちゃんがあいつを助けようとしているものがあったよ」
…まさか、蕀さんたちが写っている?
もしそうならどうしようと困っていると、それ以上は何も訊かれずに終わった。
「お大事に」
「あ、ありがとうございます」
どうしてだろうと首を傾げていると、後ろに人の気配を感じてふり返る。
「あんまり歩かない方がいいと思うんだけど、どうかしたの?」
「すみません…。水をもらいたくて来たんです」
「僕の方こそごめん。持っていくから部屋で待ってて」
「わ、分かりました」
少し歩いただけなのに、なんだかもう疲れているような気がする。
…できるだけじっとしていた方がいい理由が分かったような気がした。
「あ、チェリー…」
ベッドまで戻ったところで気づいたのは、すぐ側にチェリーがいたことだ。
ラビは春人の側にいるのだろうと思いつつ、いつもの癖で右手を使おうとしてしまう。
「……」
力をこめているつもりなのに、やっぱり指先まで感覚が伝わっていない。
「変な感じがします」
「…しばらくはそんなものだと思う」
「す、すみません」
チェリーに話しかけていたとはなかなか言えなくて、つい勢いで謝ってしまう。
「僕は別にいいんだけど…。君に面会希望の人がきてるよ」
「え?」
扉が開いたかと思うと、そこには、久しぶりに間近で見る春人の姿があった。
額や頬にはガーゼがつけられていて、腕や首のあたりも包帯だらけで…本当に酷い怪我だ。
「春人さんは本来なら絶対安静なんだ。無理しないように、君が見張ってて」
「えっと、その…ありがとう、ございます」
「…僕は他のことしてるから」
冬真さんの姿を見送った後、しばらく沈黙が続いた。
お互い何を話していいのか分からなかったからかもしれない。
ただ、折角こうして顔を合わせられたのに話をしないのは勿体ない気がした。
「…怪我、痛みますか?」
「まあ、それなりには。足まで包帯だらけで、ミイラみたいになってるから…」
ぎこちなく言葉を並べてみると、彼が複雑そうな表情をしているのが目に入った。
「あの…春人の病室、行ってもいいですか?」
「別にここと変わらないと思う」
「そうではなくて、少し、歩いておきたいんです」
「分かった、ならそうしよう」
ベッドで休んでほしいと話したら、彼はきっと気を遣ってこのままでいいと言うはずだ。
なんとか上手く誤魔化せただろうか。
「そのへん、機械がいっぱいあるから踏まないようにね」
「…はい」
チェリーを連れて、よたよたとぎこちなく後をついていく。
…春人が倒れてしまわないか、心配になりながら。
「あ…」
「こんにちは、月見ちゃん」
そこに立っていたのは、少し目を赤くした夏彦さんだった。
一礼すると、がしっと肩を掴まれる。
「えっと、あの…」
「ありがとう。君がいなかったら、あいつは…ハルはどうなってたか分からない。
全部君のおかげだよ。感謝してもし足りない」
「私はただ、私ができることをやっただけなので…」
「銃を持っている相手がいるのに、あんなふうに飛び出していくなんてなかなかできることじゃないよ」
「どうしてそれを…」
「あいつ、自分に何かあったときの為に俺のパソコンに記録と音声の一部を送ってきていたんだ。その中に月見ちゃんがあいつを助けようとしているものがあったよ」
…まさか、蕀さんたちが写っている?
もしそうならどうしようと困っていると、それ以上は何も訊かれずに終わった。
「お大事に」
「あ、ありがとうございます」
どうしてだろうと首を傾げていると、後ろに人の気配を感じてふり返る。
「あんまり歩かない方がいいと思うんだけど、どうかしたの?」
「すみません…。水をもらいたくて来たんです」
「僕の方こそごめん。持っていくから部屋で待ってて」
「わ、分かりました」
少し歩いただけなのに、なんだかもう疲れているような気がする。
…できるだけじっとしていた方がいい理由が分かったような気がした。
「あ、チェリー…」
ベッドまで戻ったところで気づいたのは、すぐ側にチェリーがいたことだ。
ラビは春人の側にいるのだろうと思いつつ、いつもの癖で右手を使おうとしてしまう。
「……」
力をこめているつもりなのに、やっぱり指先まで感覚が伝わっていない。
「変な感じがします」
「…しばらくはそんなものだと思う」
「す、すみません」
チェリーに話しかけていたとはなかなか言えなくて、つい勢いで謝ってしまう。
「僕は別にいいんだけど…。君に面会希望の人がきてるよ」
「え?」
扉が開いたかと思うと、そこには、久しぶりに間近で見る春人の姿があった。
額や頬にはガーゼがつけられていて、腕や首のあたりも包帯だらけで…本当に酷い怪我だ。
「春人さんは本来なら絶対安静なんだ。無理しないように、君が見張ってて」
「えっと、その…ありがとう、ございます」
「…僕は他のことしてるから」
冬真さんの姿を見送った後、しばらく沈黙が続いた。
お互い何を話していいのか分からなかったからかもしれない。
ただ、折角こうして顔を合わせられたのに話をしないのは勿体ない気がした。
「…怪我、痛みますか?」
「まあ、それなりには。足まで包帯だらけで、ミイラみたいになってるから…」
ぎこちなく言葉を並べてみると、彼が複雑そうな表情をしているのが目に入った。
「あの…春人の病室、行ってもいいですか?」
「別にここと変わらないと思う」
「そうではなくて、少し、歩いておきたいんです」
「分かった、ならそうしよう」
ベッドで休んでほしいと話したら、彼はきっと気を遣ってこのままでいいと言うはずだ。
なんとか上手く誤魔化せただろうか。
「そのへん、機械がいっぱいあるから踏まないようにね」
「…はい」
チェリーを連れて、よたよたとぎこちなく後をついていく。
…春人が倒れてしまわないか、心配になりながら。
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