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春人ルート
第66.5話
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食事の帰り道、不審者に声をかけられた。
…正確に言えば、何処かで会ったことがあるような気がするが覚えていない。
「…大丈夫だから、そんな顔しないで」
「でも、ひとりで行くなんて危険です」
月見を家まで送り届け、その手紙の指示に従うことにした。
「それでも、やるしかないときだってある」
「春人…」
「その子たちと待ってて」
彼女を巻きこむわけにはいかない。
顔を見られてしまった以上、行く以外に選択肢が残されていないのだ。
「せめて他の方に連絡を、」
「後でもできる。すぐ帰ってくるから、あんまり大事にしないで。…いってきます」
小走りで家を出て、手紙の主を追う。
書かれていた場所はあの人が死んだとされている道路で、動揺していないと言えば嘘になる。
だが、あの日何があったのか事実を知りたい。
そのまま進んでいくと、何かが耳元を掠めた。
…ナイフのようなものだが、この形状なら超至近距離から飛ばされているはずだ。
足音は全部で3つほど、全員同じような歩幅で歩いている。
「呼び出しに応じたのに、随分手荒な出迎えですね。…隠れてる奴等も全員かかってこい」
予想以上の人数がわらわらと出てくるものの、攻撃がかなり軽い。
飛んでくる拳をかわしつつ、隙を見て手刀をおろすなり顎や腹部に拳を打ちこんだり…。
恐らくこのなかに先程ナイフを投げてきたものはいない。
…そう悟ったときには遅かった。
「悪いね、お兄さん」
次の瞬間、左肩に痛みが走る。
更に腹部に蹴りをいれられたらしく、みるみるうちに鮮血で染まっていった。
「…あんたが、殺したのか」
その人物には見覚えがある。…春海さんの遺体を偽造していた刑事だ。
いくら違うと言っても聞き入れず、事件の可能性があると訴えてもなかったことにされた。
なんだ、はじめから犯人はこんな近くにいたんじゃないか。
「俺は実行犯じゃない。けど、あの人に逆らえるわけないだろ?」
「…じゃあやっぱり、警視総監だったんだ。あ、正確には元・警視総監か。今は代替わりして12歳離れた弟が引き継いでるんだもんね」
「何故それを…」
「…さあ?話す必要ある?」
動揺した一瞬の隙に思いきり飴を投げつける。
…勿論、ただのそれではないのだが。
「ちょっと寝ててよ。…あなたの証言ははっきりいただきましたし」
ナイフを投げられた時点で、録音機器を作動しておいてよかった。
見た目はチョコレート菓子だが、カメラもばっちり取り付けてある。
あとはこの映像が夏彦たちのところへ転送されれば、漸く事実を白日のもとに晒せるかもしれない。
その場を立ち去ろうとすると、額に銃口が突きつけられた。
「こういうマスク、悪役が持つには丁度いいだろう?…残念でした。これで終わりだ」
やっぱり俺じゃ、無理なのか。
力が足りなかったのか、相手の持ち物を調べておくべきだったのか…死の覚悟を決めて目を閉じる。
かちりと引き金が引かれる音がした。
「な、なんだこれは…!?」
脳天を撃ち抜かれたはずなのに、奴の声がはっきりと耳に届く。
目の前には巨大な蔦が広がっていて、何がおこったのか一瞬理解できなかった。
「どうして…」
すぐ近くに目をやると、そこには予想外の人物が立っていた。
…正確に言えば、何処かで会ったことがあるような気がするが覚えていない。
「…大丈夫だから、そんな顔しないで」
「でも、ひとりで行くなんて危険です」
月見を家まで送り届け、その手紙の指示に従うことにした。
「それでも、やるしかないときだってある」
「春人…」
「その子たちと待ってて」
彼女を巻きこむわけにはいかない。
顔を見られてしまった以上、行く以外に選択肢が残されていないのだ。
「せめて他の方に連絡を、」
「後でもできる。すぐ帰ってくるから、あんまり大事にしないで。…いってきます」
小走りで家を出て、手紙の主を追う。
書かれていた場所はあの人が死んだとされている道路で、動揺していないと言えば嘘になる。
だが、あの日何があったのか事実を知りたい。
そのまま進んでいくと、何かが耳元を掠めた。
…ナイフのようなものだが、この形状なら超至近距離から飛ばされているはずだ。
足音は全部で3つほど、全員同じような歩幅で歩いている。
「呼び出しに応じたのに、随分手荒な出迎えですね。…隠れてる奴等も全員かかってこい」
予想以上の人数がわらわらと出てくるものの、攻撃がかなり軽い。
飛んでくる拳をかわしつつ、隙を見て手刀をおろすなり顎や腹部に拳を打ちこんだり…。
恐らくこのなかに先程ナイフを投げてきたものはいない。
…そう悟ったときには遅かった。
「悪いね、お兄さん」
次の瞬間、左肩に痛みが走る。
更に腹部に蹴りをいれられたらしく、みるみるうちに鮮血で染まっていった。
「…あんたが、殺したのか」
その人物には見覚えがある。…春海さんの遺体を偽造していた刑事だ。
いくら違うと言っても聞き入れず、事件の可能性があると訴えてもなかったことにされた。
なんだ、はじめから犯人はこんな近くにいたんじゃないか。
「俺は実行犯じゃない。けど、あの人に逆らえるわけないだろ?」
「…じゃあやっぱり、警視総監だったんだ。あ、正確には元・警視総監か。今は代替わりして12歳離れた弟が引き継いでるんだもんね」
「何故それを…」
「…さあ?話す必要ある?」
動揺した一瞬の隙に思いきり飴を投げつける。
…勿論、ただのそれではないのだが。
「ちょっと寝ててよ。…あなたの証言ははっきりいただきましたし」
ナイフを投げられた時点で、録音機器を作動しておいてよかった。
見た目はチョコレート菓子だが、カメラもばっちり取り付けてある。
あとはこの映像が夏彦たちのところへ転送されれば、漸く事実を白日のもとに晒せるかもしれない。
その場を立ち去ろうとすると、額に銃口が突きつけられた。
「こういうマスク、悪役が持つには丁度いいだろう?…残念でした。これで終わりだ」
やっぱり俺じゃ、無理なのか。
力が足りなかったのか、相手の持ち物を調べておくべきだったのか…死の覚悟を決めて目を閉じる。
かちりと引き金が引かれる音がした。
「な、なんだこれは…!?」
脳天を撃ち抜かれたはずなのに、奴の声がはっきりと耳に届く。
目の前には巨大な蔦が広がっていて、何がおこったのか一瞬理解できなかった。
「どうして…」
すぐ近くに目をやると、そこには予想外の人物が立っていた。
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