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春人ルート
第64話
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「雪乃に何か言われた?」
春人の方を見ると、とても心配そうな目をしている。
「大丈夫です。今の生活に慣れたかとか、好きな食べ物とか…そんな話をしただけです」
「それならいいけど…。なんだか疲れているように見えたから、もしかして嫌なことを思い出したんじゃないかと思ったんだ」
「嫌なことは訊かれていません」
雪乃に気を遣わせてしまったんじゃないかと不安になるけれど、春人がそっと頭を撫でてくれた。
「…今日も出掛けるけど、一緒に来る?」
「いいんですか?」
「君がよければ。今日行く場所は、君にとってはきっとつまらない場所だから。
…色々あってすっかり忘れていたし、どうしても1度行っておきたいんだ」
「行っていいなら、行かせてください」
そんな大切な場所なら、私がいると邪魔になるかもしれない。
ただ、何もできずに独りで待つのが嫌だった。
春人の瞳がどこか翳っているように見えて、このままだとどこか遠くに行ってしまいそうな気がする。
「…それなら支度して。一応言っておくと、長めのズボンにした方がいいよ」
「分かりました」
すぐに準備を整えて春人の近くまで駆け寄る。
「お、お待たせしました」
「それじゃあ行こうか」
「…はい」
どんなことをするのかも分からないまま、取り敢えず彼の後をついていく。
隣に並んでいいのか相変わらず分からなくて、そのまま無言で1歩踏み出した。
しばらく歩いて辿り着いた場所には、いつかに見た石が沢山並んでいる。
春人はある場所で跪いて、小さく呟いた。
「…本当は全部終わってから来ようって思ってたんだけど、やっぱり先に花だけ供えておこうと思ったんだ」
「そう、なんですね」
そんなありきたりなことしか言えなかった。
やっぱり大切な人を失うのは辛いことなんだ。
「…ここに来ると、春海さんのことを思い出す。俺はどうすればよかったのか、いつも考える」
「春人は、今を必死に生きています。…それだけでは足りませんか?」
「やっぱり君は優しいね」
顔を伏せてしまった春人の手を握ると、少し震えていた。
「あの、えっと…あんまり上手く言えないんですけど、春人は優しい人です。
沢山辛いことを抱えているのに、いつもひとりで頑張り続けて…やっぱり春人はすごく尊敬できる人です」
その瞬間、春人にぐっと引き寄せられた。
「今までは、ここに来るのは贖罪からだった。だけど、今は少し意味が違う。
…それは君のおかげだ。ありがとう」
「私は何も…。あの、私もお話ししていいですか?」
「勿論」
「ありがとうございます」
墓石の前に座って、両手を合わせる。
目を閉じて話しかけると、なんだか想いが届くような気がした。
──お願いします。どうか春人たちを護ってください。
春人の方を見ると、とても心配そうな目をしている。
「大丈夫です。今の生活に慣れたかとか、好きな食べ物とか…そんな話をしただけです」
「それならいいけど…。なんだか疲れているように見えたから、もしかして嫌なことを思い出したんじゃないかと思ったんだ」
「嫌なことは訊かれていません」
雪乃に気を遣わせてしまったんじゃないかと不安になるけれど、春人がそっと頭を撫でてくれた。
「…今日も出掛けるけど、一緒に来る?」
「いいんですか?」
「君がよければ。今日行く場所は、君にとってはきっとつまらない場所だから。
…色々あってすっかり忘れていたし、どうしても1度行っておきたいんだ」
「行っていいなら、行かせてください」
そんな大切な場所なら、私がいると邪魔になるかもしれない。
ただ、何もできずに独りで待つのが嫌だった。
春人の瞳がどこか翳っているように見えて、このままだとどこか遠くに行ってしまいそうな気がする。
「…それなら支度して。一応言っておくと、長めのズボンにした方がいいよ」
「分かりました」
すぐに準備を整えて春人の近くまで駆け寄る。
「お、お待たせしました」
「それじゃあ行こうか」
「…はい」
どんなことをするのかも分からないまま、取り敢えず彼の後をついていく。
隣に並んでいいのか相変わらず分からなくて、そのまま無言で1歩踏み出した。
しばらく歩いて辿り着いた場所には、いつかに見た石が沢山並んでいる。
春人はある場所で跪いて、小さく呟いた。
「…本当は全部終わってから来ようって思ってたんだけど、やっぱり先に花だけ供えておこうと思ったんだ」
「そう、なんですね」
そんなありきたりなことしか言えなかった。
やっぱり大切な人を失うのは辛いことなんだ。
「…ここに来ると、春海さんのことを思い出す。俺はどうすればよかったのか、いつも考える」
「春人は、今を必死に生きています。…それだけでは足りませんか?」
「やっぱり君は優しいね」
顔を伏せてしまった春人の手を握ると、少し震えていた。
「あの、えっと…あんまり上手く言えないんですけど、春人は優しい人です。
沢山辛いことを抱えているのに、いつもひとりで頑張り続けて…やっぱり春人はすごく尊敬できる人です」
その瞬間、春人にぐっと引き寄せられた。
「今までは、ここに来るのは贖罪からだった。だけど、今は少し意味が違う。
…それは君のおかげだ。ありがとう」
「私は何も…。あの、私もお話ししていいですか?」
「勿論」
「ありがとうございます」
墓石の前に座って、両手を合わせる。
目を閉じて話しかけると、なんだか想いが届くような気がした。
──お願いします。どうか春人たちを護ってください。
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