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春人ルート
第61話
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手伝ってほしい…そんなふうに言ってもらえて嬉しくないはずがない。
「私にできることなら、頑張ります」
「ありがとう」
鞄に入れて一緒に連れてきていたラビとチェリーを抱きしめながら、春人が何を考えているのか訊いてみることにする。
「どんな作戦を立てているんですか?」
「できれは穏便に…でもきっと無理だろうから、集めた証拠を全部提出するつもり」
必死に彼がやってきたことがやっと実ろうとしている…その事実が堪らなく嬉しい。
「秋久さんの力を借りるんですね」
「そう。あとは夏彦からの情報と、冬真の頭脳にかかってる」
他の人の力を借りることを考えてくれてよかった。
独りで頑張ってほしくないという思いは届いたようだ。
「一旦休んだほうがいい。全部が終わったら、またあの場所で星を見よう」
「はい」
「…そろそろ戻ろう」
頷いて立ちあがると、春人は手を私の前に出してくれた。
けれど、その手をそのまま握ってしまってもいいのか不安になる。
少し迷って自分の手を絡めると、彼はきゅっと握り返してくれた。
「このまま行けば、多分人混みはそんなにないはずたから」
「あ、ありがとうございます…」
そのまま真っ直ぐ進んでいると、あっという間に部屋まで辿り着いた。
休んだ方がいいと言ってもらえたけれど、今夜はいつも以上に眠れそうにない。
「失礼します…」
早朝、キッチンでラビとチェリーに声をかけて朝食づくりに取り掛かる。
あの家にいた頃はもっと自由がなかった。
それを春人が救ってくれて今があるのだと思うと、どうしても胸がいっぱいになってしまう。
「…もう少しでできますから、ここで待っててくださいね」
炊飯器のスイッチを押して、ふたりをピアノの上に移動させる。
春人はとにかく卵を使ったものを気に入ってくれているようなので、だし巻き卵を慎重に巻いていく。
手のひらに血が滲んでこないか不安だったけれど、これなら大丈夫そうだ。
眠れなかった私は、蕀さんたちにお願いして色々なものを試しに作ってみていた。
役に立てるかどうかは分からないけれど、できることはやっておきたい。
「…昨日、何してたの?」
「お、おはようございます…」
「誤魔化さずに教えて」
どう答えればいいのか分からなくてあたふたしていると、じっとこちらを見つめられる。
「あ、あの…」
「やっぱり何かしてたの?」
「眠れなくて、起きていただけです」
今はまだ知られるわけにはいかない。
信じられないからじゃなくて、春人が本当に困ったときに手助けできるようにしておきたい…勿論、心配をかけたくないというのもあるけれど。
「…そう。今日はこの子たちにブラッシングをしたいから、ご飯を食べたら手伝ってくれる?」
「はい」
一緒にいられる時間があるのは楽しい。
食器をテーブルに並べてすぐに準備をした。
春人は両手をあわせて、私に視線を向ける。
「…後から渡しておくものがある」
「私にできることなら、頑張ります」
「ありがとう」
鞄に入れて一緒に連れてきていたラビとチェリーを抱きしめながら、春人が何を考えているのか訊いてみることにする。
「どんな作戦を立てているんですか?」
「できれは穏便に…でもきっと無理だろうから、集めた証拠を全部提出するつもり」
必死に彼がやってきたことがやっと実ろうとしている…その事実が堪らなく嬉しい。
「秋久さんの力を借りるんですね」
「そう。あとは夏彦からの情報と、冬真の頭脳にかかってる」
他の人の力を借りることを考えてくれてよかった。
独りで頑張ってほしくないという思いは届いたようだ。
「一旦休んだほうがいい。全部が終わったら、またあの場所で星を見よう」
「はい」
「…そろそろ戻ろう」
頷いて立ちあがると、春人は手を私の前に出してくれた。
けれど、その手をそのまま握ってしまってもいいのか不安になる。
少し迷って自分の手を絡めると、彼はきゅっと握り返してくれた。
「このまま行けば、多分人混みはそんなにないはずたから」
「あ、ありがとうございます…」
そのまま真っ直ぐ進んでいると、あっという間に部屋まで辿り着いた。
休んだ方がいいと言ってもらえたけれど、今夜はいつも以上に眠れそうにない。
「失礼します…」
早朝、キッチンでラビとチェリーに声をかけて朝食づくりに取り掛かる。
あの家にいた頃はもっと自由がなかった。
それを春人が救ってくれて今があるのだと思うと、どうしても胸がいっぱいになってしまう。
「…もう少しでできますから、ここで待っててくださいね」
炊飯器のスイッチを押して、ふたりをピアノの上に移動させる。
春人はとにかく卵を使ったものを気に入ってくれているようなので、だし巻き卵を慎重に巻いていく。
手のひらに血が滲んでこないか不安だったけれど、これなら大丈夫そうだ。
眠れなかった私は、蕀さんたちにお願いして色々なものを試しに作ってみていた。
役に立てるかどうかは分からないけれど、できることはやっておきたい。
「…昨日、何してたの?」
「お、おはようございます…」
「誤魔化さずに教えて」
どう答えればいいのか分からなくてあたふたしていると、じっとこちらを見つめられる。
「あ、あの…」
「やっぱり何かしてたの?」
「眠れなくて、起きていただけです」
今はまだ知られるわけにはいかない。
信じられないからじゃなくて、春人が本当に困ったときに手助けできるようにしておきたい…勿論、心配をかけたくないというのもあるけれど。
「…そう。今日はこの子たちにブラッシングをしたいから、ご飯を食べたら手伝ってくれる?」
「はい」
一緒にいられる時間があるのは楽しい。
食器をテーブルに並べてすぐに準備をした。
春人は両手をあわせて、私に視線を向ける。
「…後から渡しておくものがある」
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