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春人ルート
第59話
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空が紺碧色に染まる頃、春人は星空がよく見える場所に連れてきてくれた。
「…昔から、嫌なことがあったときにここに来るんだ」
「そう、なんですね」
春人にとって嫌なことというのは一体なんだろう。
いつも真っ直ぐ前を見ている印象が強い彼が苦手だと思うことが想像できなかった。
苦手なこととは限らないとは思うけれど、それが1番嫌な事な気がする。
「春人は、星が好きなんですか?」
「…なんとなくだけど、ひとつひとつの星が個性を持っているような気がするんだ。こんな表現をしたら変な奴だって思われそうだけど、俺はいつもそう思ってる。
勿論、単純に心が和むっていう理由もあるけどね」
彼が見つめる空からはきらきら光るものが沢山降っていて、その光景を見ているだけで心が温かくなっていく。
ただ、夜は少し寒い。
「…これ、羽織っておいて」
「え?」
後ろを向こうとした瞬間、勢いよく何かがかけられる。
それはとてももふもふしていて、なんだか肌触りが気持ちよかった。
「あの、これは…」
「ブランケット。いつも持ち歩いてるから、今日も持ってた」
「寒く、ないんですか?」
「寒いのは嫌いじゃないし、このくらいの気温なら慣れてる」
春人は私に近くのベンチで待っているように言って、そのままどこかへ行ってしまった。
独りで空を見るのは多分あの公園にいたときぶりだ。
たまたま見つけてもらえて、たまたま助けてもらえて…その縁が今でも繋がっているのは奇跡だと思う。
私は迷惑をかけてばかりなのに、家事をするだけで褒めてくれた。
この場所に存在してもいいんだと思うと、少し嬉しくなる。
ただ、それと同時に春人が抱えていることが解消されるように手伝いたい。
何ができるか具体的に分かっているわけではないけれど、ずっと事件を追っているならなんとか解決できるように私なりにできることもあるはずだ。
「お待たせ。こういう飲み物、嫌いじゃなかった?」
「はい。ありがとうございます」
缶を傾けると、甘いココアが口の中いっぱいに広がる。
「星、こんなに沢山見られたのは初めてかもしれません」
「…そう」
「あの…少しだけでもいいので、私に春人がやっていることを手伝わせてもらえませんか?」
「修理のこと?それならもう充分、」
「いいえ。別のお仕事のことです。全部とは言いません。
…だけど、大切な人の事件を調べるなら手伝わせてもらえませんか?」
春人は驚いたような表情をすると、ふっと息を吐いた。
「危険なんだ。君だって無事ではすまされないかもしれない」
「それでもいいんです。私はあの日、死ぬはずだったところを助けてもらって…まだ、恩を返し足りません」
「あいつらにヘタに近づいたら、殺されてしまうかもしれない」
そんなことは分かっているつもりだ。
それでも、ここで引き下がるわけにはいかない。
「沢山護ってもらって…それが嫌なんです。ただ迷惑になるのは、嫌なんです。
本当は、【便利屋】さんは危険なお仕事なんでしょう?」
そう告げると、彼はまた驚いていた。
「…昔から、嫌なことがあったときにここに来るんだ」
「そう、なんですね」
春人にとって嫌なことというのは一体なんだろう。
いつも真っ直ぐ前を見ている印象が強い彼が苦手だと思うことが想像できなかった。
苦手なこととは限らないとは思うけれど、それが1番嫌な事な気がする。
「春人は、星が好きなんですか?」
「…なんとなくだけど、ひとつひとつの星が個性を持っているような気がするんだ。こんな表現をしたら変な奴だって思われそうだけど、俺はいつもそう思ってる。
勿論、単純に心が和むっていう理由もあるけどね」
彼が見つめる空からはきらきら光るものが沢山降っていて、その光景を見ているだけで心が温かくなっていく。
ただ、夜は少し寒い。
「…これ、羽織っておいて」
「え?」
後ろを向こうとした瞬間、勢いよく何かがかけられる。
それはとてももふもふしていて、なんだか肌触りが気持ちよかった。
「あの、これは…」
「ブランケット。いつも持ち歩いてるから、今日も持ってた」
「寒く、ないんですか?」
「寒いのは嫌いじゃないし、このくらいの気温なら慣れてる」
春人は私に近くのベンチで待っているように言って、そのままどこかへ行ってしまった。
独りで空を見るのは多分あの公園にいたときぶりだ。
たまたま見つけてもらえて、たまたま助けてもらえて…その縁が今でも繋がっているのは奇跡だと思う。
私は迷惑をかけてばかりなのに、家事をするだけで褒めてくれた。
この場所に存在してもいいんだと思うと、少し嬉しくなる。
ただ、それと同時に春人が抱えていることが解消されるように手伝いたい。
何ができるか具体的に分かっているわけではないけれど、ずっと事件を追っているならなんとか解決できるように私なりにできることもあるはずだ。
「お待たせ。こういう飲み物、嫌いじゃなかった?」
「はい。ありがとうございます」
缶を傾けると、甘いココアが口の中いっぱいに広がる。
「星、こんなに沢山見られたのは初めてかもしれません」
「…そう」
「あの…少しだけでもいいので、私に春人がやっていることを手伝わせてもらえませんか?」
「修理のこと?それならもう充分、」
「いいえ。別のお仕事のことです。全部とは言いません。
…だけど、大切な人の事件を調べるなら手伝わせてもらえませんか?」
春人は驚いたような表情をすると、ふっと息を吐いた。
「危険なんだ。君だって無事ではすまされないかもしれない」
「それでもいいんです。私はあの日、死ぬはずだったところを助けてもらって…まだ、恩を返し足りません」
「あいつらにヘタに近づいたら、殺されてしまうかもしれない」
そんなことは分かっているつもりだ。
それでも、ここで引き下がるわけにはいかない。
「沢山護ってもらって…それが嫌なんです。ただ迷惑になるのは、嫌なんです。
本当は、【便利屋】さんは危険なお仕事なんでしょう?」
そう告げると、彼はまた驚いていた。
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