70 / 385
春人ルート
第54話
しおりを挟む
夏彦さんたちを見送った後、ぽんと肩に手をおかれる。
「ありがとう。さっきは助かった」
「いえ、私はただ水を持っていただけで…」
「君にとっての『だけ』が、俺にとってはすごくありがたかった」
春人にそう言ってもらえるのは嬉しい。
ただ、今はずっしりと罪悪感がのっている。
やっぱり、彼にだけでも話しておくべきだっただろうか。
「疲れたでしょ、休んでて」
「いえ、あの…冬真さんは大丈夫なんですか?」
「うん。さっき秋久が診た感じだと大丈夫そうだって言ってた。…冬真がお礼を伝えておいてくれって」
「そう、ですか…」
全員揃った後、どんな話をしたのか私は知らない。
ただ、怪我が思ったより酷くなさそうで少し安心した。
「…君は他の人のところに行った方がいいかもしれない」
「どういう、ことですか?」
それはあまりに突然告げられた言葉で、驚きのあまりそんな疑問しか口にできなかった。
「冬真が狙われたってことは、俺の1番近くにいる君が狙われるかもしれないってことだ。
俺はもう、自分のせいで誰かがいなくなるのは…」
「…春人は、何も悪いことをしてないじゃないですか。
私みたいなものにまで優しくしてくれたり、何度も助けてもらって…だから、今度は私が力になりたいんです」
「君に何ができるっていうの?」
「それは…」
そう言われても仕方ない。
いつも護ってもらってばかりで、頼ってばかりの私にできることなんて何もない…実は、今もそうやって折れてしまいそうになっている。
それでも、今回はここで引くわけにはいかない。
「分かったら荷物をまとめて、」
「嫌です!」
「……!」
「今度は、私が護るんです。その為に蕀さんたちに手伝ってもらうことにしたんですから」
「まさか君は…」
震える指先を春人に掴まれる。
手のひらからはぽたぽたと血が滴り落ちていた。
「どうしてこんな無茶を、」
「いつも無理をして、独りで頑張っているのはあなたの方です。
私なんて、こんなことくらいしかできないのに…」
何もかも独りで背負っている彼に、誰かの為に頑張る彼に、少しでも近づきたかった。
私なんかじゃ全然足元にも及ばないだろうけれど、それでもやってみないと分からない。
「…私は、簡単に死んだりしません。だって、あの人たちの暴力を受けても今こうして立っているんですから」
腕の感覚がなくなっていく。
もしかすると、思っていた以上に傷が深かったのかもしれない。
「君は本当に…」
そこまでは聞こえたけれど、だんだん耳鳴りが酷くなって何を話しているのか分からなくなってしまう。
泣かないでほしいのに、それを口にすることさえ難しい。
そんななか、激しい頭痛と共に危険な状態が流れこんできた。
「…お願、秋久さん、に…」
「月見?」
そこまで話したところで私の意識は暗闇に落ちてしまった。
「ありがとう。さっきは助かった」
「いえ、私はただ水を持っていただけで…」
「君にとっての『だけ』が、俺にとってはすごくありがたかった」
春人にそう言ってもらえるのは嬉しい。
ただ、今はずっしりと罪悪感がのっている。
やっぱり、彼にだけでも話しておくべきだっただろうか。
「疲れたでしょ、休んでて」
「いえ、あの…冬真さんは大丈夫なんですか?」
「うん。さっき秋久が診た感じだと大丈夫そうだって言ってた。…冬真がお礼を伝えておいてくれって」
「そう、ですか…」
全員揃った後、どんな話をしたのか私は知らない。
ただ、怪我が思ったより酷くなさそうで少し安心した。
「…君は他の人のところに行った方がいいかもしれない」
「どういう、ことですか?」
それはあまりに突然告げられた言葉で、驚きのあまりそんな疑問しか口にできなかった。
「冬真が狙われたってことは、俺の1番近くにいる君が狙われるかもしれないってことだ。
俺はもう、自分のせいで誰かがいなくなるのは…」
「…春人は、何も悪いことをしてないじゃないですか。
私みたいなものにまで優しくしてくれたり、何度も助けてもらって…だから、今度は私が力になりたいんです」
「君に何ができるっていうの?」
「それは…」
そう言われても仕方ない。
いつも護ってもらってばかりで、頼ってばかりの私にできることなんて何もない…実は、今もそうやって折れてしまいそうになっている。
それでも、今回はここで引くわけにはいかない。
「分かったら荷物をまとめて、」
「嫌です!」
「……!」
「今度は、私が護るんです。その為に蕀さんたちに手伝ってもらうことにしたんですから」
「まさか君は…」
震える指先を春人に掴まれる。
手のひらからはぽたぽたと血が滴り落ちていた。
「どうしてこんな無茶を、」
「いつも無理をして、独りで頑張っているのはあなたの方です。
私なんて、こんなことくらいしかできないのに…」
何もかも独りで背負っている彼に、誰かの為に頑張る彼に、少しでも近づきたかった。
私なんかじゃ全然足元にも及ばないだろうけれど、それでもやってみないと分からない。
「…私は、簡単に死んだりしません。だって、あの人たちの暴力を受けても今こうして立っているんですから」
腕の感覚がなくなっていく。
もしかすると、思っていた以上に傷が深かったのかもしれない。
「君は本当に…」
そこまでは聞こえたけれど、だんだん耳鳴りが酷くなって何を話しているのか分からなくなってしまう。
泣かないでほしいのに、それを口にすることさえ難しい。
そんななか、激しい頭痛と共に危険な状態が流れこんできた。
「…お願、秋久さん、に…」
「月見?」
そこまで話したところで私の意識は暗闇に落ちてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる