152 / 385
夏彦ルート
第27話
しおりを挟む
それはよく晴れた夏の日のことだった。
「なっちゃん、いる?」
「花菜…」
「やっぱりいた!お店が開いてないからここじゃないかと思ったんだ!」
朝早くから花菜がやってきて、とても楽しそうにしている。
邪魔にならないように部屋に籠り、膝の上にいるソルトを撫でた。
「お客さんが来ているから、ここで一緒に待っていようね」
ソルトはにゃんとひと鳴きして、しっぽをだらんとおろしてしまう。
夏彦に会いたいのか、扉にがりがりと爪をたてはじめた。
「駄目。ソルトが怪我をしたら、夏彦が悲しむ…」
まるで言葉が通じたように、ソルトは引っ掻くのをやめた。
あと少しで男性向けのコサージュが完成するから見てほしかったけれど、話がなかなか終わらないということはお仕事が忙しいのだろう。
「そっか。報告ありがとう」
「ついでだから気にしないで!仕事に行く前に飲み物が飲める場所でごちそうになりたかっただけだし…」
「それならいつものところでもよかったんじゃない?なんで家に直接来たの?」
「他にもうひとつ、報告しないといけないことがあって…」
もしかすると、私に関することだろうか。
固唾を飲みながら扉の向こうに意識を集中していると、突然ばたんと開かれる。
「え、月見!?」
「だから待ってって言ったのに…。ごめんね月見ちゃん。吃驚したでしょ?」
一瞬何がおこったのか分からなかったけれど、夏彦が丁寧に説明してくれた。
「花菜が誰かに盗聴されてるって言い出して、話す前に勢いよく開けちゃったんだ。
止められなくて本当にごめん…」
「いえ、私は大丈夫、です」
困ったような表情を浮かべる夏彦がそう話すと、花菜がソルトに目を向ける。
「あ、その子大切にしてくれてるんだね!名前とか決めた?」
「その前に月見ちゃんに、」
「…ソルト、です」
「へえ、いい名前もらったね!」
ソルトと戯れる姿を見て、夏彦は深いため息を吐く。
「ごめんね。花菜は昔からこうだから…」
「いいえ。私の方こそ、ごめんなさい」
「もしかして、新商品のサンプルがもうできたの?」
頷いてできあがったものを見せると、何故か彼は驚いたような表情をしている。
もしかすると、どこかあり得ないような間違い方をしていたのだろうか。
「本当に早くて丁寧で、プロの仕事よりすごい」
「そ、そんなことはない…と、思います」
「これ、早速明日からお店に並べさせてもらうね。
急な頼み事だったのに、作ってくれてありがとう」
その言葉が聞けて嬉しい。
じっと見られているような気がして視線をうつすと、花菜と目が合う。
「…?あの、」
「お願い、私にも服を作って!」
それは唐突なお願いだった。
「なっちゃん、いる?」
「花菜…」
「やっぱりいた!お店が開いてないからここじゃないかと思ったんだ!」
朝早くから花菜がやってきて、とても楽しそうにしている。
邪魔にならないように部屋に籠り、膝の上にいるソルトを撫でた。
「お客さんが来ているから、ここで一緒に待っていようね」
ソルトはにゃんとひと鳴きして、しっぽをだらんとおろしてしまう。
夏彦に会いたいのか、扉にがりがりと爪をたてはじめた。
「駄目。ソルトが怪我をしたら、夏彦が悲しむ…」
まるで言葉が通じたように、ソルトは引っ掻くのをやめた。
あと少しで男性向けのコサージュが完成するから見てほしかったけれど、話がなかなか終わらないということはお仕事が忙しいのだろう。
「そっか。報告ありがとう」
「ついでだから気にしないで!仕事に行く前に飲み物が飲める場所でごちそうになりたかっただけだし…」
「それならいつものところでもよかったんじゃない?なんで家に直接来たの?」
「他にもうひとつ、報告しないといけないことがあって…」
もしかすると、私に関することだろうか。
固唾を飲みながら扉の向こうに意識を集中していると、突然ばたんと開かれる。
「え、月見!?」
「だから待ってって言ったのに…。ごめんね月見ちゃん。吃驚したでしょ?」
一瞬何がおこったのか分からなかったけれど、夏彦が丁寧に説明してくれた。
「花菜が誰かに盗聴されてるって言い出して、話す前に勢いよく開けちゃったんだ。
止められなくて本当にごめん…」
「いえ、私は大丈夫、です」
困ったような表情を浮かべる夏彦がそう話すと、花菜がソルトに目を向ける。
「あ、その子大切にしてくれてるんだね!名前とか決めた?」
「その前に月見ちゃんに、」
「…ソルト、です」
「へえ、いい名前もらったね!」
ソルトと戯れる姿を見て、夏彦は深いため息を吐く。
「ごめんね。花菜は昔からこうだから…」
「いいえ。私の方こそ、ごめんなさい」
「もしかして、新商品のサンプルがもうできたの?」
頷いてできあがったものを見せると、何故か彼は驚いたような表情をしている。
もしかすると、どこかあり得ないような間違い方をしていたのだろうか。
「本当に早くて丁寧で、プロの仕事よりすごい」
「そ、そんなことはない…と、思います」
「これ、早速明日からお店に並べさせてもらうね。
急な頼み事だったのに、作ってくれてありがとう」
その言葉が聞けて嬉しい。
じっと見られているような気がして視線をうつすと、花菜と目が合う。
「…?あの、」
「お願い、私にも服を作って!」
それは唐突なお願いだった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
愛する婚約者は、今日も王女様の手にキスをする。
古堂すいう
恋愛
フルリス王国の公爵令嬢ロメリアは、幼馴染であり婚約者でもある騎士ガブリエルのことを深く愛していた。けれど、生来の我儘な性分もあって、真面目な彼とは喧嘩して、嫌われてしまうばかり。
「……今日から、王女殿下の騎士となる。しばらくは顔をあわせることもない」
彼から、そう告げられた途端、ロメリアは自らの前世を思い出す。
(なんてことなの……この世界は、前世で読んでいたお姫様と騎士の恋物語)
そして自分は、そんな2人の恋路を邪魔する悪役令嬢、ロメリア。
(……彼を愛しては駄目だったのに……もう、どうしようもないじゃないの)
悲嘆にくれ、屋敷に閉じこもるようになってしまったロメリア。そんなロメリアの元に、いつもは冷ややかな視線を向けるガブリエルが珍しく訪ねてきて──……!?
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる