裏世界の蕀姫

黒蝶

文字の大きさ
38 / 385
春人ルート

第24話

しおりを挟む
「その…雪乃が言っていた【便利屋】という言葉の意味について知りたいです。
修理だけならどうして修理屋さんって言わないのか、すごく気になってしまって…。
それに、病院のような場所にいるときに聞いた【カルテット】って何ですか?」
春人は訊かないでほしいと思っているかもしれない。
それでも私は、どうしても知りたいと思った。
夜遅くに出掛けていく理由も、きっとそこに隠されているだろうから。
彼はしばらく黙っていたけれど、やがて重く閉ざされていた口を開く。
「……【便利屋】というのは、【カルテット】のなかでの呼び名というか、勝手にそう呼ばれてるだけ。
俺は色々な道具を作るのも仕事なんだ。詳しくは話せないけど、君の能力について教えてもらったから俺のことも少しだけ話す」
「ごめんなさ、」
「別に謝らなくていい。知らないから怖いで終わらずに知ろうとしてくれることは、俺からすれば嬉しいことだから」
そう言って春人はただ笑った。
ぎこちない感じでもなく、無理をして話しているわけでもなさそうだ。
「俺が【便利屋】って呼ばれているのは、【カルテット】で雑用や小道具作りをしているから。
犯罪者をおびき寄せて捕まえる為に必要なものを作っているからだよ」
「犯罪者を、捕まえる?」
「そう。俺の仕事はそういう仕事。それ以外に修理もしているけど、主な収入は犯人を捕まえたときに出る特別手当。
そんなに多い訳じゃないけど…人と話すのが上手くない俺でも、これで人の役に立てているならそれでいいって思ってる」
仕事に誇りをもっているのだと、話を聞いているだけで伝わってくる。
それに、きっと私が想像している以上の覚悟もしていて…春人という人をまた少し知ることができたような気がした。
「それじゃあ、雪乃とはお仕事で知り合ったんですか?」
「犯罪者を捕まえる手助けをする以外に、事情があって逃げなくちゃいけない人たちを逃がすのも仕事だから。
…仕事には守秘義務があるから細かい内容は話せないけど、彼女を追っ手から護る依頼を受けてる」
「そう、なんですね…。ありがとうございました。色々話してもらえて、よかったです」
「…怖くないの?」
彼が何故そんなことを訊いてくるのか分からない。
ただ、私の答えは決まっている。
「怖くなんかありません。私が怖いのは、人を平気で傷つけられる人です。
春人は優しいから…だから、全然怖くありません」
「…ありがとう、月見」
お礼を告げた彼の瞳からは翳りのようなものが少し消えているような気がして、見ているだけで安心した。

──過去のことも、いつかは教えてもらえるといいな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...