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夏彦ルート
第19話
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夜は相変わらず眠れなくて、つい夜更かししてしまう。
早く寝ないといけないと考えれば考えるほど眠れなくなっていって、どんどん目が冴えていく。
「…ソルト?」
にゃん、とひと鳴きしてやってきた白猫は私の膝におさまる。
夜になると眠れないのはソルトも同じなのか、最近は一緒に起きていることが多い。
「こうしていれば、少しは寂しくなくなるかもしれないね」
ソルトの頭を撫でながら、明日がくることへの疑問を思い浮かべる。
今までそんなことを考えたことはなかった。
早く終わってしまえと思っていたはずなのに、夏彦に置いてもらって以降はずっと楽しいことが続いている。
「…不思議」
相変わらず私にできることは少ないけれど、こうして彼の為に何かできるだけで充分だ。
「あれ、まだ起きてたの?」
「え、あ、ご、ごめんなさ、」
「いやいや、謝らなくていいんだよ。ただちょっと心配だっただけで…」
紙の束を持った夏彦を手伝おうと駆け寄ると、何故か慌てた様子で首を横にふられてしまう。
「これは大事なもので、あんまり人に見せちゃいけないから…。
ありがとう、気持ちだけ受け取っておくね」
それだけ話すと夏彦は足早にどこかへ行ってしまった。
彼について知っているようで知らないことは、まだまだあるようだ。
訊かれたくないのならとソルトの方に向き直ると、そこには1枚の紙が落ちていた。
夏彦が落としていったものだろうか。
拾いあげたとき、ちらっと中身を見てしまった。
「【秘密警察との連携により、違法ドラッグ売買の件は終息したと思われる】…」
見てはいけないものを読んでしまったのかもしれない。
今更ながら気づく違和感をかかえながら、夏彦のところへ向かう。
「…入ってもいいですか?」
「どうぞ!」
扉を開けると、そこには大量の資料が聳え立っていた。
話していいのかは分からないけれど、とにかく返さなければならない。
「あの、さっき部屋に落としていったみたいだったので…」
「ごめん!すごく大事なものだから、すごく助かったよ。ありがとう」
ほっとして部屋を出ようとすると、少し強めに腕を掴まれる。
「…それで、中を読んじゃったのかな?」
「ご、ごめんなさい。見えている部分だけ…」
「そっか、そうだよね。できれば知られたくなかったんだけど、俺のもうひとつの仕事について話そうかな。
ここじゃ狭いし、取り敢えずリビングで話そうか」
夏彦の知らなかった部分を知ることができる、そのことは嬉しいはずなのに…どうしてこんなに不安を感じるのだろう。
……見てしまったのは私なのだから、覚悟を決めるしかない。
早く寝ないといけないと考えれば考えるほど眠れなくなっていって、どんどん目が冴えていく。
「…ソルト?」
にゃん、とひと鳴きしてやってきた白猫は私の膝におさまる。
夜になると眠れないのはソルトも同じなのか、最近は一緒に起きていることが多い。
「こうしていれば、少しは寂しくなくなるかもしれないね」
ソルトの頭を撫でながら、明日がくることへの疑問を思い浮かべる。
今までそんなことを考えたことはなかった。
早く終わってしまえと思っていたはずなのに、夏彦に置いてもらって以降はずっと楽しいことが続いている。
「…不思議」
相変わらず私にできることは少ないけれど、こうして彼の為に何かできるだけで充分だ。
「あれ、まだ起きてたの?」
「え、あ、ご、ごめんなさ、」
「いやいや、謝らなくていいんだよ。ただちょっと心配だっただけで…」
紙の束を持った夏彦を手伝おうと駆け寄ると、何故か慌てた様子で首を横にふられてしまう。
「これは大事なもので、あんまり人に見せちゃいけないから…。
ありがとう、気持ちだけ受け取っておくね」
それだけ話すと夏彦は足早にどこかへ行ってしまった。
彼について知っているようで知らないことは、まだまだあるようだ。
訊かれたくないのならとソルトの方に向き直ると、そこには1枚の紙が落ちていた。
夏彦が落としていったものだろうか。
拾いあげたとき、ちらっと中身を見てしまった。
「【秘密警察との連携により、違法ドラッグ売買の件は終息したと思われる】…」
見てはいけないものを読んでしまったのかもしれない。
今更ながら気づく違和感をかかえながら、夏彦のところへ向かう。
「…入ってもいいですか?」
「どうぞ!」
扉を開けると、そこには大量の資料が聳え立っていた。
話していいのかは分からないけれど、とにかく返さなければならない。
「あの、さっき部屋に落としていったみたいだったので…」
「ごめん!すごく大事なものだから、すごく助かったよ。ありがとう」
ほっとして部屋を出ようとすると、少し強めに腕を掴まれる。
「…それで、中を読んじゃったのかな?」
「ご、ごめんなさい。見えている部分だけ…」
「そっか、そうだよね。できれば知られたくなかったんだけど、俺のもうひとつの仕事について話そうかな。
ここじゃ狭いし、取り敢えずリビングで話そうか」
夏彦の知らなかった部分を知ることができる、そのことは嬉しいはずなのに…どうしてこんなに不安を感じるのだろう。
……見てしまったのは私なのだから、覚悟を決めるしかない。
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