裏世界の蕀姫

黒蝶

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夏彦ルート

第14話

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花菜に預かってほしいと言われて数日、ソルトがいる生活になかなかなれない。
「そ、ソルト…」
にゃん、と得意げに鳴いているのは一体どういう意味だろう。
言葉が分からないぶん、どんなことをすればいいのか余計に分からなくて混乱する。
「ご、ご飯、一緒に食べませんか?」
「ソルト、食べないと体壊すかもしれないよ…って、なんでそんな狭いところに入りこんでいっちゃったの!?」
ソルトはソファーの下が落ち着くのか、うとうとしているのが見える。
「前に飼ったことがある猫は、もうちょっと人懐っこかったんだけど…色々事情を抱えてるのかもしれないね」
「そう、かもしれません」
もし捨てられたなら、ソルトの心にだって何かしらの傷を負っているはずだ。
花菜にもう少し詳しい話を聞いておけばよかったと少し後悔した。
「…ソルト、一緒に遊びませんか?」
余った布切れをまとめて、見よう見まねの猫じゃらしを作ってみた。
ソルトの顔の前でそっとふってみると、追いかけるようにして走り回る。
気に入ってくれたのか、夢中になって追いかけていた。
…どうなるか分からなかったけれど、上手くいったみたいだ。
「月見ちゃん、すごいね!俺じゃ思いつかなかったよ」
「これならあまり危険もないかなって思ったんです。
…私には、こんなことしかできませんから」
「少なくとも、俺やそいつにとってはこんなことなんかじゃないんだけどな…ね、ソルト」
夏彦に名前を呼ばれると、にゃんとひと鳴きしてまた遊びを再開する。
「…さて、申し訳ないんだけど今夜は出掛けなきゃいけないんだ。
帰りは遅くなると思うから、先に休んでて」
「分かり、ました」
それは寂しいことだけど、困らせるわけにはいかない。
俯きそうになる顔をあげて笑顔を作る。
すると、ソルトが夏彦にいきなり飛びかかっていった。
「痛い、ほんとに痛いから…ソルト、待ってって」
「駄目ですよ、夏彦の邪魔をしたら」
ソルトのことを呼ぶと、満足したのかこちらへやってくる。
「助かった…ありがとう。夕飯は俺が作るから、ソルトのことお願いするね」
「え、あ、はい…」
自信はないけれどそうも言っていられない。
「…ソルトも寂しかったの?ずっと独りだったのかな。…私とおんなじだね」
ゆっくり頭を撫でてみると、嬉しそうにすり寄ってきてくれる。…可愛い。
ソルトには癒されてばかりだ。
「こういうのも好き?」
実はもうひとつ、休憩時間に作ったぬいぐるみがあった。
それを見せてみると、目をきらきらとさせて遊びはじめる。
元気そうに遊んでいるのを見ると、少し安心した。
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