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クロス×ストーリー(通常運転のイベントもの多め)
兄弟ティータイム-優翔×大翔-
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「兄貴、これ」
バレンタイン翌日、妙に豪華な包みが渡される。
「これ、久遠さんに渡す分と間違えてるんじゃ、」
「間違えてない。...それで合ってる」
大翔は軽く動揺しているように見える。
...僕の間違いでなければ、きっと今年も照れているのだろう。
お互いどんなに多忙になろうと、誕生日やクリスマス、年末年始...他にもイベントがある日だけは連絡を欠かさなかった。
それがこうして、お互いがお菓子を持ち寄り食べるというのが恒例になりつつある。
「お茶にするにはまだ早いし、少し勉強しようか」
「...なんで分かったんだ?」
「鞄の膨らみが、バイト先で必要なものを入れているようには見えなかったから」
それから色々な話を交えつつ、数式の解き方を説明していく。
はじめはよく分からないといった表情で首を傾げていた大翔も、だんだん理解できたらしく楽しそうにしていた。
「兄貴はなんで数学がこんなに分かるんだ?」
「それじゃあどうして大翔はそんなに国語がすらすらと解けるの?」
幼い頃から、この論争だけは変わらないような気がする。
理数系の僕と、がっつり文系の大翔。
僕がさっぱり分からなかった問題を、いつだって弟はすらすらと解いていた。
それが羨ましいと今でも思っているが、だからこそ数学や物理だけは負けたくないと思っている。
「お疲れ様。レポートもひと段落したみたいだし、お茶でも淹れるよ」
立ちあがろうとした瞬間、大翔に止められてしまう。
そしてそのまま炬燵に入っているように言われた。
「今日は兄貴がお客さんな」
「でもここ、僕の家で、」
「いつも勉強教えてもらったり、困ったときの相談したり...だから、こんなときくらいは俺がやりたい」
自分の夢を教えてくれた日のことを思い出しながら、僕はその場に大人しく座る。
大翔なら、きっといいカフェをオープンできるだろう。
その為にやることは沢山あれど、僕の弟は絶対に諦めない。
...本当に自慢の弟だ。
「お待たせ」
「ありが...え、ラテアート!?」
「鞄にたまたま道具を入れてたから作ってみた」
...たまたまなはずがない。
本格的なお菓子たちを前に倒れそうになっていると、にやりと笑って淹れたての紅茶をサーブしてくれた。
「それが飲みづらいならこっちの普通のを飲んだ方が、」
「そうじゃなくて、すごすぎて言葉が出てこなかったんだ。...どんな反応をするのが正解なんだろうって考えちゃって」
「それ、久遠にも試食してもらったんだ。...ただ、顔を崩すのが可哀想だって言ってたから、兄貴もそうなんだと思ってた」
「...これ、写真に撮ってもいい?」
「どうぞ」
大翔はくすくす笑いながら、他のものの準備もてきぱきとやってくれる。
勿論沢山用意してくれたのも嬉しかったけど、僕の地味なお菓子を大切そうに食べてくれたことが1番嬉しかった。
バレンタイン翌日、妙に豪華な包みが渡される。
「これ、久遠さんに渡す分と間違えてるんじゃ、」
「間違えてない。...それで合ってる」
大翔は軽く動揺しているように見える。
...僕の間違いでなければ、きっと今年も照れているのだろう。
お互いどんなに多忙になろうと、誕生日やクリスマス、年末年始...他にもイベントがある日だけは連絡を欠かさなかった。
それがこうして、お互いがお菓子を持ち寄り食べるというのが恒例になりつつある。
「お茶にするにはまだ早いし、少し勉強しようか」
「...なんで分かったんだ?」
「鞄の膨らみが、バイト先で必要なものを入れているようには見えなかったから」
それから色々な話を交えつつ、数式の解き方を説明していく。
はじめはよく分からないといった表情で首を傾げていた大翔も、だんだん理解できたらしく楽しそうにしていた。
「兄貴はなんで数学がこんなに分かるんだ?」
「それじゃあどうして大翔はそんなに国語がすらすらと解けるの?」
幼い頃から、この論争だけは変わらないような気がする。
理数系の僕と、がっつり文系の大翔。
僕がさっぱり分からなかった問題を、いつだって弟はすらすらと解いていた。
それが羨ましいと今でも思っているが、だからこそ数学や物理だけは負けたくないと思っている。
「お疲れ様。レポートもひと段落したみたいだし、お茶でも淹れるよ」
立ちあがろうとした瞬間、大翔に止められてしまう。
そしてそのまま炬燵に入っているように言われた。
「今日は兄貴がお客さんな」
「でもここ、僕の家で、」
「いつも勉強教えてもらったり、困ったときの相談したり...だから、こんなときくらいは俺がやりたい」
自分の夢を教えてくれた日のことを思い出しながら、僕はその場に大人しく座る。
大翔なら、きっといいカフェをオープンできるだろう。
その為にやることは沢山あれど、僕の弟は絶対に諦めない。
...本当に自慢の弟だ。
「お待たせ」
「ありが...え、ラテアート!?」
「鞄にたまたま道具を入れてたから作ってみた」
...たまたまなはずがない。
本格的なお菓子たちを前に倒れそうになっていると、にやりと笑って淹れたての紅茶をサーブしてくれた。
「それが飲みづらいならこっちの普通のを飲んだ方が、」
「そうじゃなくて、すごすぎて言葉が出てこなかったんだ。...どんな反応をするのが正解なんだろうって考えちゃって」
「それ、久遠にも試食してもらったんだ。...ただ、顔を崩すのが可哀想だって言ってたから、兄貴もそうなんだと思ってた」
「...これ、写真に撮ってもいい?」
「どうぞ」
大翔はくすくす笑いながら、他のものの準備もてきぱきとやってくれる。
勿論沢山用意してくれたのも嬉しかったけど、僕の地味なお菓子を大切そうに食べてくれたことが1番嬉しかった。
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